世田谷物語3-1
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「夕飯、冷蔵庫に入れとくんで、もし間に合わなかったら食べて下さい。」

それはいつもの朝の食卓。

「ああ、判った。」

「お義母さんまた病院?」

そう言った竹巳をちらっと見てから竜也が愛想で頷いた。

「まあね。」

「よくもまあ公然と浮気してくれるよなぁ。恐れ入るぜ。」

「亮っ!」

いつもの様に入る克朗の声にも、ふんと悪態を付くと重なって居たハムをニ枚ゴト口に突っ込む。

それを見て克朗は溜め息。竜也は苦笑いだった。

「つーか、何であんたが別れたダンナの看病に毎日毎日行ってんの?」
「向うの妻とかどーなってんの?未練たらたらじゃん」

真顔でつらつらと並べる亮は、嫌味と言うより明らかに腹を立てていて。

本人に気付てる様子は無かったが、それを「心配してる」って言うんだよ。と怒るに怒れない両親がそれぞれ俯くのだった。

「それがさぁ、向こうの奥さんも入院してんだよ。だからしょうがないって、」

横から割って入ったのは今コーヒーを飲み終えた誠二。

「はあ?」

「あの後、隣のおばさんと言い争いになってさ、刺し違えたらしいって。」

「ああ?」「・・・・。」

バカにしようにも、隣の翼と徳光の攻防の凄まじさを知ってる近所は…バカだと思いつつ。

むしろもう恐かった。

「違うよ誠二。道の真ん中で言い争ってる所を須釜さんに轢かれたの。」

「えーーだって俺の聞いた話しじゃ…!?」


「違う違う。」


「!?」

どこかから聞こえて来た声に、家族全員が後ろの窓を降り向けば、

隣の窓から、ブローしながら顔を出す。鳴海さん家の雄一郎君。

「ダンナが片っ端から病院の看護婦妊娠させない様に、泊まり込んで見張ってるんだってよ。」

「最も、もう何人かは手後れって噂だ…」言い終わらない内にゴっと彼の頭の上に落ちた肘鉄。

「ああ、どーも。」

相変わらず涼しげな無表情は隣の奥の兵助さん。こちらに軽く会釈しながら。「いってぇーー」とつむじを押さえ込む雄一郎の首根っこを掴み、ぴしゃっと窓を締めて行った。



あっけの渋沢家。

「…じゃあ、そろそろ行くよ。」

「そうですね。」

再び切り替わる空気。克朗を送りに行く竜也の後ろを、誠二と亮が競って洗面所へ駆け込んで居た。

「気を付けて。」と送りだして、ふと後ろの気配に気付いた竜也が振り向くと。


「将?」が立って居た。


「今日、お父さんの所行くの?」

「そう、そっちにも寄るけど、本当はお母さんの用事で行くだけだから。」

きちんと折られて居たシャツの襟に手を伸ばすと、もう一度整えてやり、「遅れるぞ。」と声を掛ける。

「僕も行っていい?」

「…いいけど、学校はさぼるなよ。」

「判ってるよ。面会9時まででしょ?」

頷く竜也。

「お母さん何時まで居るの?」

「多分6時。」

「わかったー。じゃね、」

そう言い残して元気に外へ出て行った将を竜也は暫く無言で見送って居た。


「・・・・。」

妙な所で勘がいいかならな…。気を付け無いとあいつだけは。

口元に浮ぶ嘲笑は自分へ向けての物。


「んじゃいってきまーす、」元気な声に振り向けば。横を通り過ぎて行く誠二に竹巳。

そして、

「ま、せーぜー嫌われない様に頑張んだね。」

ぱったんとドアが閉じると同時に、最後の住人が洗面所から顔を出した。

後ろを向いたままの竜也に近付いて、ポンとその腰を軽く叩くと。

肩ごしに少しだけ振り向いた竜也に口付ける。

もうそれは殆ど決められた毎日の日課。

ちゅっと小さく音を立てて離れた吐息が、もう一度、今度は深く絡んだ。

「…んっ…・」

離れて、そして夕べ克朗が付けた首筋の赤い跡の上を軽くなぞる。


「兄貴、遅れるよ。」

軽く開けた扉の隙間から竹巳の声。

それだけ言うと堅い表情で二人を見据え、そのままふいっと視線をそらす。


「行ってらっしゃい。」

「おー。」

竜也の声を後ろで聞きながら、視線は会わせぬまますっと通り過ぎて行った。








「い…っ・・…あ・」

自分の上に馬乗りにさせて深く沈めた腰を更に引き寄せると、嗚咽の合間に小さく別の声が漏れた。

更に深い場所に堅い異物を感じて、竜也が身をよじると連動する様に内腑がシゲを吸い上げる。

「…たつボン今、ええやろ…・」

「ぁっ・・・・ぅ…」

閉め切ったカーテンの向こうが気になるのかしきりに声を押さえる竜也。

それを見ながら、やっと今繋がったばかりの腰を軽く揺する。

途端、繋がった箇所からクチュクチュと漏れた音にさえ反応した竜也に薄く笑うと、

更に最奥へとそれを打ち込み、それ以上は何もしてやらない。

「あ…っは…・・ぁ…」

熱だけでそこが犯されていく感覚。

灼熱の棒が硬度を増しながら自分の肉を裂いて行くのがはっきりと判る。

腰の芯から這い上がる甘い爛れに耐え切れず、目の前の頭を縋る様に抱き寄せていた。

ぎゅうっと自分の頭を抱く腕に力が入って胸へと押し付けられると。

懐かしい匂いがする。

「あんたも、悪い母親やなあ…」

その背に腕を回すと密着する胸の服の上から、甘える様に軽く唇を這わした。

そのまま、下の方へ伸ばして居た手を股の上でくしゃくしゃになって居るスカートの中へと忍ばせると…

勃起したそれを強く握る。

声にならない悲鳴を上げて、ぐっと仰け反った躯。

「どないした?・・」わざと言って、意地悪くククっと笑う。

突き出された胸の上着をたくし上げると、薄く肋骨の浮き出るなだらかな肌質が現れた。

既に色付いて堅く立上がって居た突起をクチに含む。

舌で転がしながら時折歯を立てると、甘い声が漏れた。

「あ…・・っ・・あぁ・・」

漏れて来る液でぐちゃぐちゃになった右手を優しく上下させ、竜也をなぞって行くと、ますますそれは堅く育って、張り詰めて行った。

「ん…・も・シゲ…・・・」

上から降る声。

「何や?」

「きょ…・将が・・あっ・・・ぅ…」

突然強く先端を梳かれて、眉を寄せる。

「…あいつが何やて?・・」こんな時にやめや。のニュアンスを含みながら。

「も・・・来る…・」

「来る?」

時計の針は4時をさして居た。

2時間前に来た時は、まさかシゲが出来心で献血に行ってるなんて思わず…。

予定がずれ込んだ。


あいつが来る?

それだけで、何故か焦る心。

同時に競り上がって来る背徳の悦楽。


突然強く動だしたシゲに竜也が思わず声を荒げた。

「ああっ、つぅ…あ・・ぁ・・…ぁあ」

「やだ…ぁ……も…・・く・・く」

訴える竜也の根元をぎゅっとにぎり絞めれば、先端に余った液がまたドロリと流れて茎を伝って来る。

その度に自分をあます事なく吸い上げようとする竜也の脈動に耐えかねて、強く引き寄せた腰を夢中で突き上げた。

「たつや…ちょい我慢な・・」

「っあぁぁ・・・あっ・・あ」

諤々と揺れる度に甘く響く悲鳴。

「もう・・と…に…・・く・・」

「ああ、…ええ・で・・。」

そう言いながら、一際大きく仰け反った背中を支えると同時に、掴んで居た根元とから上へと絞る様に拳を移動させると、

再びきつく拳を握った。

瞬間指を噛んで声を抑えたタツヤ。

ビクンと揺れた竜也の躯がシゲの肩口へと沈んだ。同時に竜也の中には自らの精を注いだ。

荒い息をつきながら、肩口につかまって震える竜也の様子を伺う。

すると視線に気付いた竜也の大きな双蓋がゆっくりと開き、非難めいた瞳をシゲに向けるが、

目のフチまで朱色に染め、時折眉を顰めながら涙をたたえる顔を至近距離で見せられれば、またドクンと竜也の中で鎌をもたげる自分を押さえる事は、もはや不可能だった。

「たつや…」

「ぅ…っ・・…」

呼ぶ声と供に、再び顔を歪ませる。まだ許されない自身の身体が小刻みに震えて居た。





まさか…お母さんが…。


ずっと危惧して来た事の決定打。

文字通りその右手で顔を覆いながら部屋の前の壁にぺたんと張り付いたまま、呆然自失する彼の姿。

十数年、共に暮らして来て始めて見た、あの人のあんな姿。

不倫…

でもそれだけじゃない憤りが胸の中を渦巻いて、

ぐらぐらと煮詰まって行く意識に胃がひっくり返りそうだった。

まだ頬が赤い。頬どころか、きっと耳まで赤い事だろうと思う。

あんな場面を見たと言うのに、心の何処かで「ああ、やっぱりお母さんは綺麗な人だ。」と思ってしまった自分…。

顳かみを汗が伝って行った。

今、誰にも会わない事を祈ったその時。


「何してんの?」


「あ、…ああ、亮君。」

息が詰まりそうになって、やっと前へと吐き出したと言う感じ。

見れば、将のはす前の扉は非常階段で、突如現れたよく見知ったその姿に息さえ止まったが、

「その…ちょっと気分悪くて、」

「・・ふ〜ん。見てもらえば?」病院だし。

「保健証持って無いから、て言うか、もう大丈夫だし。」

「あっそ」

「そう、ありがと。」

完結に済ませると、

「ったく今何時だと思ってやがんだ〜?」

とぼやきながら、シゲと竜也の居る病室に何と無しに入って行ったのだった。

「ーーー!!」





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復活 。なるか最終章?
















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