+inside+ 録
おまけ
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ノブを握れば、

行に掛けた鍵は今もしっかり掛かったままだった。

音を押さえる様にゆっくりと回したカギは、がっちゃんと反って廊下に響いたが、かまってる暇は無かった。

朝、とっくにあいつが帰ったと思ってる渋沢が戻って来る前に事をすませないと、少々厄介になりかねない。

全くあいつもとんでもない奴相談役にしやがって。

ここ数カ月、どーも自分に対する渋沢の言葉に棘が出て来た訳が、夕べやっと解ったのだった。


それにしたって。

アレからゆうに8時間は経過してると言うのに、

あいつはまだ寝ているのか?

部屋のカギは外からの侵入を阻む為の物で、当然内側から出ようと思えばいつだって出られる。

起きてたってトイレくらい行くだろうし。

もう…帰ったかも知れないとも思っていた。

思いながらも、号令と供に誰よりも早く帰って来てしまった訳だが…。


戸をあけると、

しっかりとクーラーの掛かった部屋の中。

布団の端から覗くあの…栗毛色。

無意識にほっとする、小さな安緒。

なるべく音を立てない様に近付いて、キシッとベットの端に腰かければ、

もそもそと中で寝返りを打ってるであろう仕草。

暫くしてひょいと三上の前出たにその顔は…

「よう…」

「…はよ…」

「いつまで寝てんだよ。」

口とは裏腹にニヤ付いた笑みでその前髪を掻き上げれば

「今まで…」と寝起きの顔でふふと笑う。


「・・・・。」


これがあのつんと張り詰めた『水野竜也』と同じ人物だろうかと、一瞬見間違える程。

それから

「ああ…俺は?」

と今朝からの記憶を手繰る様に亮の胸で視線を止めて、考え出す。

「…誰もこなかった?」

「多分ね。カギかけてったし…」

「そうか…どうも。・・渋沢さんは?」

「も、まだ来てねー。」

「そうか・・」

良く考えれば、昨日一晩の無断外泊に加えて、今日一日帰って無い事になる。

考えなくても真理子の心配は目に浮ぶし。

桐原に知れたら…

まさか自分んとこの灯台元で教え子とこんな事になってるなんて思いも寄らないだろうと…

いつまでも自分を子供扱いする両親の慌てぶりを考えて、

思わず、クすっと笑みを漏らすと。

髪を撫でていた三上の手がふと止まる。

「何だよ。」

「いや、」
「そろそろ帰らないと…」

「おー。」

だが布団の上から退こうとしない三上。

見上げて見れば、ニヤ付いた顔じゃ無くて、いつになく真面目な顔。

「三上?…。」

名をよぶ声は、夕べのなごりか掠れ気味だった。


−−−…昨日まで、冷たい嫌味しか言わなかったその男の顔をまじまじと眺めてみる。

それに気付いた三上が、一瞬ニっと笑うと、ぼすっと覆いかぶさってきた。

「!?」

「何?したくなった?」

「ちがっ・・。」

すぐ側に顔を寄せられて、少し冷たい指先で唇をなぞられるとドクんっと心臓が跳ね上がり、

そんな竜也を見ながら人の悪い笑みを浮かべて観察している三上に耐え切れず。

「やめろよ。」

とそっぽを向くが、

赤くなった頬では何の説得力も無かった。

ククッと聞こえる笑い声を布団事押し退けて、「もう帰るから」とベットの上に起き上がるが…

「・・・・。」

今始めて気付いた新たな問題に、竜也絶句。

「…にしてんの?」

動きを止めた竜也の隣に座り直しながら、様子を伺うと、

「いや…・。」

と明らかに青い顔が亮を振り向いて。

「立てねーの?」

「・・・・。」

聞けば、ぶすっとした顔。

それからやや困惑した顔でちょっと嬉しそうにそう言った三上を睨みながら…切り出す。

「昨日…」

覚えて無いなんて朝は言えず、

実は今の今まで取りあえず付き合ってる振りをしていた竜也。

…それがまかり通る事をいい事に…

三上がどう言うつもりか、まだちゃんと聞いた訳では無かったのだ。



真面目な顔になったまま自分の顔を見て来る竜也に気付いて、

何となく不安を覚える。

まさか。全部無かった事にしろ。なんて言うんじゃねーだろな。なんて思いながら…

見れば。


何か言いかけようとしながら、みるみる気まずい顔になって行って、しまいには口を閉じるとそっぽを向いた。

おい。

照れてる横顔が、恐ろしくそそる。

「また、電話する。」

「はあ?テメ−俺の番号しってんのかよ。」つーかなにそれ。

上手くすり抜けようとした手を掴み、ちゃんと言えよと険しい視線で促せば。

「昨日。悪かったな。」渋々言葉を選ぶ。

そーじゃねーだろが。

「それから?」

「…別に。」

「ふ〜〜ん。」と竜也の横髪を耳に掛けながら顔を覗く三上から視線をそらしつつ。


『言えるかっ。』心の叫び。

だが横を向けば、許さねぇ。と言わんばかりの三上のデビルスマイル。

「俺は別にあんたの事。嫌いじゃないから…」

「それだけ?」

しつこくくい下がる…もちろん今はそれが必要だって事は分かっていたが、

三上に非難めいた顔でゆっくり振り向けば、

思ったより至近距離に居た彼にどきっとしながら、有無を言わさず自ら口付けた。

離れようとする前にもっと引き寄せられて、二人してベットに逆戻り。





「…かみっ、」

「っみかみ先輩!」

揺り起こされた時は時計の針は12時を少し過ぎて居た。

「んだよ」と目をあければ、

渋沢と…慌てる藤代の姿。

起き上がろうとして、隣で寝ている竜也に気付き、はっとする。

「水野ん家から電話あって…すいません仕方なかったんで」

「ああ?ああ…。」寝ぼけた頭で頑張って思い出せば。

仕方ない。つまりコレでこいつは2晩連続帰って無い事になるのだから…

くそ、すっかり忘れてた。と後悔しながら。

「で、どうなった?捜索願い?家出人?」

「いえ、そーじゃ無いんすけど…」

「三上、桐原監督が外でまってるんだ。」

渋沢が言い終らない内に再び布団の中へ潜る三上を、半分心配しながら、

半分面…がりながら藤代が引っ張りだしに掛かるのだった。





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気付いたら竜也、一日ご飯食べて無かった…。でもタンパク質は…いやなんでも。

























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