+トレイン+
シゲと竜也は付き合っていると言う設定で…。
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都選抜に呼ばれてから久々に、遠出して見た映画の帰り。

出入り口の手すりにもたれていた竜也達の間に

どっと乗り込んで来たラッシュアワーの人込みが割り込む。

おっ・・・と

人垣の向こうに一人離れた竜也を、隙間から顔を覗かせた風祭が確認する。

その時、風祭の視線がフと水野の後方へと飛んだ。

「水野君」

と小声で目配せされて、振り返ると。

幾つもの頭の向こうに一際目立つ背丈の茶色い猫っ毛が見えた。

「渋沢先輩だ。」

「ああ。」

隣に見える黒いのは、多分藤代だろう。

「何や、何時かのダンナやないか。」

またでっかくなったんとちゃうか〜?

と不服そうに言うシゲにフッと竜也が笑う。

「何や?」

「別に…。」

ムッとしたシゲが竜也を見ている。

「何だよ。」

「・・・・・。」

数秒おいて、

突然竜也のすっとん狂な声が上がった。

「うあっっあ。」

つい大き目に出てしまった声に周囲の視線が竜也を振り返る。

「あははは。」

シゲの笑い声。

いきなり自分の腰を掴んだ手が離れて行く。

竜也がシゲに気を取られてるウチに前の人と人の間からその手をそっと忍ばせて、

その腰をガしっと掴んだ瞬間。ビクッと竜也の身体が脈打った。

「おい、やめろよ!」

と小声でにらみ返すが。

「ビビった?」

とシゲは、肩を震わせながら笑いを堪えている。

「タツボン。おモロかったでー。今の。」

お返しに小突き返そうと、竜也が手を伸ばした時。

ガタンっっ

と電車が大きく揺れて、握っていた手すりから手が離れると、

何が起こったか判らないウチにドンっと身体が入り口のガラスへと叩き付けられていた。

「っ・・・・。」

「お客様に申し……只今前駅におきまして車両事故が……御迷惑を……お待ち下さい」

すかさず入ったアナウンスにザワっとどよめく車内。

「何や、乱暴な運転やな。」

今ので随分離れたらしい、人込みの中から微かにシゲの声が聞こえた。

「あ、いたいた。」

と言う風祭の声のする方に目を向けると、ちらっと見えた金パに位置を確認する。

−−−−−−−10分以上はたっただろうか。

運悪く渋谷を目前に止まった電車の混み様は半端じゃない。

自分の鞄を持ち上げる事もできないし、それどころか身じろぎ一つできないこの状態…。

肩でガラスを押さえて無ければ胸が潰されていただろう。

・・・・・。

所で。さっきから、ふいに気になっていたのだが。

後ろから自分の足の間に入り込む様になっていた。誰かの足の角度が…深くなった気がする。

まあ、混んでるから押されて、…と考えても正直やっぱり気持ちが悪い。

見まわす限り、自分の周りはサラリーマンか、学生風の普段着か…男ばかりだし。

何と言うか、膝裏に当たるそいつの足の骨格から男だと想像付いた。

まあ、こんなの女でも。嫌だけどな。

視線を感じて、頭をあげるとシゲと目が会った。もはや風祭は頭も見えず。

顔だけで。「よお。」と言われ。こちらも「まいったな」と苦笑を返す。

ゾッと。

背筋に寒気が走った。

今、何が起こったのか知るのに数秒かかった。

首筋に誰かの息が掛る。

やっぱり…!!。

徐々に深く密着して来る、気色の悪い気配に竜也の顔がどんどん険しくなって行く。

男。それもかなりガタイのいい。

オーデコロンの匂いで、そこら辺のリ−マンでは無い事がわかる。

竜也が気付いて焦ってるのを見て、さらに迫って来る様子があった。

ふつふつと湧いて来る怒りと嫌悪感が竜也を支配する。

振り向くスペースがないので、シゲを見ると。

シゲも怪訝な顔になってこちらを見ていた。


『何や?』

何かあったんか?

みるみるうちに変わって行く竜也の顔に事の起こりを察知するが・・・。

「ん?」

「お・・・んん!?」

「・・・・・。」


また突然ガタンと揺れて、電車がやっと動き出す。

とたんパッと離れた気配に竜也が振り向くと

あいつだ!!!と思うスーツ姿の男の影が人込みの中に逃げる様に消えて行く。

テんメ−・・・と声を上げそうになったその時、

再び電車に急ブレーキが掛かり、止まったかと思うとドアが開いた。

ホームへと流れる人ごみの中、走ろうとしたが逆行する人波に、それははかなわなかった。

「くそっっ!!」

ホームの壁によって混雑を避けながら、男の行ったであろう出口を睨んでいた。

「水野君!」

凄い人ごみだったね。

と駆け寄って来た風祭が、

「水野君?」

明後日の方を凄い形相で睨み付ける竜也にちょっと引いた。

「何や偉い目にあってもーたわ。隣におるのが綺麗なねーちゃんやったらまーだましやったのに」

とポチの後からやってきたシゲの声にばっと竜也がこちらに振り向く。

「シゲ!!!!っっ」

びくっとして。思わず両手の平で降参するシゲ。

「す、すまんタツボン!!」

ホンマ…

けどじゃーないやん。俺かて男なんやから。

「しかも。悔しいんは俺かて同じやん。」

しかし竜也の怒りは納まらなかった。


???

半分以上、推測不明の単語が飛び交う中。

二人の間で右往左往の風祭。

あ、っそうか。さっきの。水野君まだシゲさんの事怒ってたのか……な?

どうも違うなあ……。と思うものの。

まさか。

痴漢にあって赤くなってる竜也に、シゲが欲情してたから。

何て思いも付くわけもないポチだった。

「……それはそうと今日ウチよってかへん?」

「行かない。」

「タツボンっ。やつあたんなや。俺のせいや無いやろが!」

「さわるなっ!」

「なっ。人が心配したってるのに何やその態度は!?」

「心配?」

人が・・・人が…き、傷付いてるって言う時に、ウチきてやらへんか?がだと!!?

はっ…聞いて呆れるね。

怒って先を歩いていた竜也が立ち止まると、振り向いてぐんっとシゲに一歩乗り出した。

「何や!?」

「お前のは心配じゃ無くて。セクハラだろ。」

「・・・・・。なんやと?このクソガキ。男の癖に痴漢になんぞあって、感じてたのはどこのどいつや?ああ!!?」

「かん……誰がっ!?……」


カザ。真っ青。

ち、ちかん?

え?

何?

え?

「二人とも。まあ落ち着きなよ…」なんて出ようとした瞬間に。

とんだ事態の発覚に凍り付く風祭。


とその時、


「水野。それから佐藤。」

後ろから響いた声にピタっと竜也が止まった。

「渋沢先輩!!」

そう言えば、さっきの電車が同じであった事を思い出す。

「やあ、風祭。」と視線を落とすと

「…取りあえずここじゃ人目もあるし、外に出てからのがいいんじゃないか?」

と二人に戻る。

水野は無言。

「……言われんでもわかっとるわ。」

と不服そうにシゲが一言呟いてから。

竜也の方をちらっと見るとそっぽを向きながら、二人は渋々歩き出そうとする。

・・・さすがキャプテン。

と心の中で、鮮やかに場を一瞬で納めた渋沢に。ポチがすっかり感嘆していたその時。

よおっと横に飛び出して来た藤代が目に入って。

そして。

その斜後ろには。よりによって

デビルスマイルの三上先輩。

渋沢がちょっとすまなそうな顔になる。彼も気を使ったのだろうが、放っておくには騒ぎがデカ過ぎたのだ。

カザとシゲと…思わず(知ってる奴は皆)竜也の顔を見ずには居られなかった。

それから数時間後の桜上水。

顔を腕の中に埋めてうずくまる竜也の横で。


ホンマにすいませんでした。

あかん?マジで堪忍や!

タツボン!!!


過去にも先にもあれほど人に謝ったシゲの姿をみたのは、これきりだったと言う。




完。

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自分で書いといてなんですが

泣きたいぐらいのへタレ様だと思います。

シゲは好きなのですよ。これでも。(涙)































 
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