+トレイン2+
竜也痴漢にあうパート2。
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「やっべーっお前何で言わねーんだよ!!」「俺だって気付かなかったんだよ…大体お前が」
2人して駆け込んだ駅のプラットホームは人で一杯。
時刻は丁度ラッシュアワー。
「うわっ…」しかし迷ってる暇はなく、人波に飲まれながら車内へと押し込まれ、そのままずるずるとドア側まで押されて行きダンっとドアへと叩き付けられて止まる。
「っ…」
……。まあ、真ん中で潰されるよりはマシかと、既にはぐれ気味の三上の姿を探すと。
前のOLをかき分けて何とか竜也の前に亮が出て来た。
「ったく、すっげ〜オヤジにぶつかっちまってよー。」
きもかった。
と愚痴りながら位置を捕獲する。
「誰のせいだか…」
「あー?俺のせいかよ。」
「別に。」
せっかく今日は2人だけで遠出したと言うのに…、
今日に限って点呼の見回りが葉山コーチだった事をすっかり忘れてた三上のせいで、夕暮れの満員電車で潰れる羽目に・・・。
仕方ないと知りながら、暑苦しさも手伝ってイライラと不機嫌になる竜也。
…コーチに叱られるくらい何だよ。-とどっちが・・・。
不機嫌丸出で窓外を眺めたまま、こちらを見ようともしない竜也にムッとして三上もフンと視線をそらす。
向かい合ったままピリピリと無言の時が流れる。
そのまま窓の外に目を向けると流れて行く景色。
この季節独特の黒になり切らない深青の空に、ふと竜也は見覚えを覚える。
そう言えば前もこんな事あったな…。
そう言えばこの電車。そう言えば次の駅は…。
そこで思考をとぎる。あの忌々しい出来事は今思い出しても虫ズが走る。
それは竜也の中では、ある意味…人生最大の恥の1つ。とされている1年前の痴漢騒ぎの事だった。
嫌な事を思い出したと慌てて頭からたたき出して、再び過ぎて行くアコムやレイクの看板を…
そー言えば、この辺で…。
嫌な予感。
静まり返った箱詰めの車内にやっとクーラーが効き出した頃。ガタンっ!と音をたてて電車が急停車した。
どっと人の波が寄せて来て。
「っ……。」
あの日と同じ。
「……てっーな…」
苛立つ三上の小声が聞こえて、ふと前を見るとちゃんと竜也の前にいるのを確認する。
たまたま同じ様にこちらを見た三上と目があっって。
「・・・。」
人に押されて返って距離が縮まり、気まずい二人はそっぽと言う訳じゃ無く、無言のままそれとな〜く目をそらす。
嫌な感じ。
背中に張り付く人影にもぞっと背筋が寒くなってしまう。ばかな。
幾ら何でも自意識過剰だ。俺は男なんだから。
そんな自分に呆れながら気にしまいと…
だが、
数秒後。それが気のせいでも無かった事に、竜也は気付くのだった。
いつど−やって潜り込んだのか、タツヤにも判らなかった。
なっ−ー−−−!!!!
そもそも密着しているのは仕方が無かったから、いきなり走った鈍い痛みによって始めて。男の手が自分の下着の中にある事を知ったのだった。
「あっ…」声を飲み込む。
周囲に悟られる訳には行かない。
だから気付いた時には信じられない事が。
すでに起こっていた。
入り口に中指の先を挿し込んだ男は、竜也が騒がない事を確認してからじょじょに奥にすすんでくる。
「ー…・・…」
なんつう…気持ちの悪さに吐き気をこらえる。
じょ、冗談じゃ無い。
どうすれば。どうするか?ほとんどパニックになりながら痴漢、痴漢だと今さら自分に言い聞かせる。
どうしておれが!?
「っ!…・・」
相手は相当なれているのか、きちんと竜也が反能する場所を探り当てて、そこを味わう様に指の腹で強く撫でて来る。
少々前屈みになりながら左の片をドアに押し付け身体を支える。
目の前の三上は窓の外を向いて気付いていない。
他人の事なら迷う事は無かったが、自分の事となると。何をどうすればいいのか…大体自分が痴漢にあってるなんて周囲にばらすようなまね…
冗談じゃ無い。
だが、同じ失敗を2度もくり返す訳には行かない。
意を決してこの停滞する満員電車の中竜也は叫んだ。
「テメ−!何してんだよっ!!」
騒然となった車内で人々が振り返る。
「ああん!!?」がその声に反応したのは目の前に居た。三上。
顔をあげれば片まゆを顰めた三上が目を丸くして竜也を見ていた。
!!・・・・。
最悪だ。『なんだ。』ガキのけんかか。という微かな落胆の色を込めて人々の視線が引いて行くのが判る。
しかも、中に入り込んだ指は抜けるどころかそんな竜也を嘲笑う様にますます奥深くに入り込んで来ると、その内壁にカリっと爪を立てたのだ。
「〜-〜〜〜!!」
瞬間ぎゅっと目をつぶって堪える。身体の震えを堪えるだけで精一杯だった。
熱さとは違う汗が頬を伝って行く。
嫌悪と憎悪と…認めたくは無い恐怖に全身がかられていた。
絶望感に目の前が歪む…と思ったら涙だった。
とその時、ぐいっと誰かの胸に引き寄せられたと同時に「てめーー何してんだっ!!コラぁっ!!!」
頭上で声が聞こえた。
再び車内がざわめく。
隣との間に挟まった自分の手を引き抜くだけで精一杯のこの状況で、
周りの人の頭に肘をぶつけながら竜也の後ろに居る何かに三上が掴み上げていた。
「…っ」
途端、竜也の中からズっと指が抜けて行く。その時、殆ど同時にガタンと再び電車が走り出した。
揺れたすきに三上の手を振り切ったらしく、クソっと小さな舌打ちが聞こえる。
周囲は騒然となっていたが、犯人の顔を見ようとするも被害者の女が見当たらないので、今一何が起きたか人々は分かっていない。
それをいい事に人垣へ消えようとした奴へ向かって。隣の車両にまで聞こえそうな大声で三上は叫んだのだ。
「この変態ヤロー−−!!!テメぇ−にがさねーぞ!!」
「痴漢!?」「マジ、どこ?」どっからか声が上がる。
到着体制に入った電車の揺れの中で、竜也からは見えなかったがあっちでこっちで揉まれながら、
「おい、てめーだろ…。なにばっくれてんだよ!」
運よく女高生の声があがると、本来の被害者は忘れ去られ皆の注目が一気に向こうへと移る。
運が良かった。
音をたててドアが開いた瞬間、亮に強く腕を引っ張られてプラットホームの人ごみの中へと紛れる。遠くの方でさっきの女子高生が犯人に怒鳴り付ける声が聞こえ、車掌が竜也の横を飛んで行った。
息が切れてる訳じゃ無かったが、その場にじゃがみ込む竜也の横に三上も黙って腰を降ろす。
喧噪も騒ぎもすでに人手に渡っていた。
やがて人垣が薄れると何事も無かった様に、電車が再び走り出す。
「…時間ヤバイんだろ?」顔はあげないままそう言った。
「まーね。あんた立てる?」
「・・・・。」
腕を引こうとしたが、竜也が嫌だと言う様にその場を離れない。
プライドはづたづたで。恥ずかしさより情けなさで顔が上げられなかった。黙って背中を撫でる三上の手にさえ。縋りたい気分とバカにするな!と言う苛立ちが入り交じっていた。
おかど違いだとわかっていても。
「先帰っててくんない。」
「やだ。…つーかお前ん家泊めて……。」
時計を見ながら諦め顔の三上を腕のすきまから伺う。
「無理。」
「じゃ、ここですんの?」
は?と顔をあげる竜也。
「何?ちげーの。」
怒りとも差恥とも付かない怒りが腹のそこから込み上げてばっと三上の顔を仰ぎ見ると…。
お怒っていた。顔が。
誰に対しての苛立ちか…痴漢か。それともぐずってる竜也か。過ぎてしまった門限にか。
「とにかく出よーぜ。」
有無を言わせぬ静かな口調に、それにはただ無言で竜也も従うのだった。
駅前から線路沿いにしばらく歩くと、住宅街の中の公園へと落ち着く。「んっ…」
竜也をベンチへ座らせると同時に上から三上が覆いかぶさって来て。何も言わず舌を絡ます。
『まさか…ここで?』
「ちょっ…やめろよ。」
そういって引き離すと手の甲で口を拭う。
「よかったの?」
「え?」
「そんなに気持ちよかったのかって聞ーてんの。」
「ふざけんなっ!俺が…」どんな気分で。
「じゃ何で声出さなかったの?」
「…はずいだろ。」
「今どき関係ねーじゃん。痴女とかお前どーすんの?やられてんのかよ。」
真正面から睨まれて、説教される。こんな事で。こいつに。
「誰が一番傷付いてると思ってんだよ!」
…前にも言ったなこんなセリフ・・・。どーしてこう俺の付き合う奴はこうなんだと軽い頭通がする。
「じゃ、誰が一番頭来てっと思ってんの?」
「俺。」「俺だから。」
声が重なった。一歩も引かず睨み合う二人。
そこに1年前、同じ様にホームで憤慨していた自分をニヤニヤと眺めていた(嘲笑っていた)三上の顔を思い出した。そしてあの時シゲの言った事も思い出す。
ひょっとして。
こいつが頭に来てるのは…。
「お前は何とも無かったのかよ。」
三上の顔を見ながら言うと。
珍しくも。プイっと横を向く。素直な反応。
そして溜め息と一緒に竜也をぐいっと抱き締めると…
「もおいい?」
耳もとでそうつぶやいた。
何で俺ばっかり…だと思う?終わった後、あっちこちカに刺されてむすっとしながら着替えてた竜也が訪ねる。
「…同じ奴じゃねーの?」
「判らない。」
「じゃ、たまたまじゃねーの。」2丁目の出勤時間
「だよな。」
そりゃ。おめーだからな。心の中でそう思ったが口にはせずに。
また落ち込もうとする頭を抱き寄せた。
あいつがそ−言う風にお前を育てたからだよ。
おそらく自分の為に。けれどそれはもっと別のお話。
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1はシゲタツです。今回はちょっと暗めでしたね。
落ちはファザ−ファッカーと絡んでしまいました。
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