単発バト1他の話とは関係のない、単独の話です。
いきなり始まって、いきなり終わります。
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「何でも先輩が首輪を外せるかも知れないって、」

誠二を助けたのは偶然だった。


偶然銃を向けあっていた鳴海と藤代の間の茂みに竜也が身を潜めて居て。

背中には藤代。前には鳴海が居ただけだった。

確かに自分が狙われているわけじゃ無いのは分かっていたが、低く構えられた鳴海の弾道が自分をかすめる危険が有ったから。

竜也が引き金を引いた理由はただそれだけだった。

もし立ち位置が逆だったら…。

まあ、鳴海はどのみち殺さざる得なかっただろうが、先に死んでいたのは誠二だったのだ。


「水野ーー!!うわびびったー。」マジで気付かなかったからさー。

そんな事も知らず。

鳴海を撃った後、藤代があっけに取られて引き金を引き淀んだのを狙って、草むらからすくっと立上がった竜也に、彼は何の躊躇も無く近付くと嬉しそうに肩を組んで来た。

すぐ前には鳴海の死体が転がっていて、薬莢と流れ出る血液の匂いが立ち込めていると言うのに。

まあ、そんな物。確かにもうここではなんて事ない物だけど。

「サンキューな、」

ばんばんと背中を叩かれる。

「いや、」

竜也と言えば、ぼーぜんと鳴海の死体を見ながら立ち尽くしていると言った様子。

苦い顔をしながら、愛想でさえ笑えないでいる竜也に気付くと、今度は真面目な顔で

「助かった。」

と礼を言われる。

それから視線をそらしたままの竜也の顔をじっ見て、何を読み取ったのか。

「なーー、お前も一緒にくる?」

と言ったのだった。

「え?」

「佐藤…さっき呼ばれてたから。」すまなそうな低い声で…。

「ああ…。」

自分に顔を隠す様に俯こうとした竜也に、今度は

「夜の一人歩きは危険だしさー。」

とちょっとちゃかして、「キャプテンとかも一緒に居るし、どう?」と…

振り向いた竜也は今一、と言う顔だったがゆっくりと頷いた。

まさか、自分が藤代を殺していたかもしれないなんて、もう言えずに。

きっと言ったところで「お互い様じゃん。」とこいつは軽く流すのだろうが。







「水野じゃないか!」

家の奥から明るい顔を覗かせたのはお玉を持った渋沢克朗。

「どうも、」とこちらもつられて幾分笑顔を見せる。

この人特有の安堵はここへ来ても健在だった。

山小屋、と言った感じのここは。戸を開けるとすぐに小さな簡易用キッチンと水場があって、

その奥には20m程の奥行きを持つ住居兼、物置き兼の何かの工場…おそらく木材加工の小さなプレハブ工場になっていた。

克朗に簡単に説明をすましてから、そうじゃ無くても殆ど了解と言う態度の彼だったが。

「ただいまー。」と奥へ向かった誠二が皆まで言う前に、

「ああん?」
「ざけんなっ!」

と言う声がして、嫌な意味で見知った顔が現れた。

「テメー何しに来てんだよ。」

水場に居た竜也へと早速出迎えたのは、三上亮。

一瞬驚いて、それからムッと顔を曇らす竜也。

「三上…」

「うっさい、黙ってろ!」

とあの克朗にさえ激を飛ばすと早速竜也にマシンガンを構えた。

「頭の上に手を組んでそこに立て、テメーの武器は何だ?」

あーあと言う顔の誠二に。苦い顔の克朗。だが焦ってる様子は少しも無かったのを見て、竜也も黙って指示に従った。

でて来たのは、

さっき鳴海を撃ったマグナムと。

幾らかの弾丸。

それから防空頭巾。

マグナムはシゲの遺品だった。

「つー事は?・・・・。」

亮が竜也を見る、それから…思った通りの大爆笑。防空頭巾をかぽっと竜也にかぶせ…、

「よし、んじゃおメーはコレかぶってろ。かぶったら中いれてやってもい〜ぜ〜?」

腹を抱えて笑う三上を射抜きそうな視線で見る竜也。

「三上。」

見兼ねた克朗が、火を消して鍋を持ち上げながら振り向いた。

「もう良いだろ。向こうにコレ持って行ってくれ。」

「ああー?へいへい。」

と言いながら、最後に竜也を見てニヤっと笑うとすかさず銃だけを抜き取り、渋沢から鍋をかっさらっていった。

「すまないな…。」

「いえ。それより本当なんですか?」

首輪の事。

「ああ、その方向で今頑張っているよ。」

と奥を指す。

そこに居たのは、三上に辰巳、そして伊賀と桜庭と木田だった。

作業用の台を食卓代わりにして、丸太に座る者。古いソファーに寝転ぶ者。

そして鍋の横の方で、ドライバー片手に頑張って居たのは伊賀だった。

「よー水野。」

「よー。」

他のメンツとはさして親しく無い水野に、挨拶したのは彼位で。

あからさまにげっと顔に出したのは桜庭。

ここに留まるのは竜也に取って微妙だったが。野犬や、野犬以上に危険な奴らがうろつく山の中で夜を越すより幾らかましだった。



「当番とか決まっててさー。ま、短い間だけど。」

と藤代が竜也の横に来てスープのはいった皿を差し出す。

「ありがと…。」

「薪は幾らでも有るし、水はそこに井戸が有るけど。食いもんは取って来ないとなくてさ。」

「そうだな、」

といいながらスプーンですくった肉ともキノコとも付かないコーヒー色の物体を、疑いながら口に運んだ竜也を誠二が伺う。

取りあえず不味くも無いが、食べた事の無い味。木の根とも思ったが植物というより貝に近い。

ちょっと苦いか。

「コレなんだ?」

にっと笑って「俺が取って来たカタツムリv」

「カタ…」まあ、思ったより普通か・・・。

「へえ…初めて食べた。」

「結構いけるだろ?」

「まあ、そーだな。」

ねずみよりはましか…何て、本当はそんな贅沢言ってられる場合じゃ無いんだろうが。

「大丈夫だぜ、ちゃんと食用の種類選んで採って来たんだから。」

「詳しいな、」

理屈では分かっていながらどことなくスプーンはそれを避けてしまう竜也だった。

「明日、一緒に行こーぜ。教えてやっからさv」

「え?」

「実は、俺食材係り。一番最後に入ったからさ。だから次は」

がーん。

いっしし…と笑う藤代に引きつった笑みを浮かべたまま肩を落とす竜也だった。


何だ、その為か…。

正直親切すぎた藤代を疑ったりもしたんだが…。まあそれだけじゃ無いだろうけど。





夜。


こんなに平穏で良い物なんだろうか…。

もうすぐ死ぬって言う時に。

実際、シゲも鳴海も自分の目の前で死んだのだ。

自分に宛てがわれたスペースでティバックを枕にしながら横になるとつらつらとそんな考えが浮ぶ。


その時、肩を揺すられて目をあけるが、暗闇で何も見えない。

だが、竜也にはそれが誰だか分かっていた。



上から降りて来る気配。

小さく口付けると離れて、無言のまま竜也の腕を引っ張った。

身を起すと物音を立てない様に2人して出口へと向かう。


外は月明かり。

こんな月夜じゃ、外はおちおち歩けない。

ここへ来れたのは本当に色んな意味でラッキーだったと思う。


誘われるまま井戸の納屋の中に入ると、そこでもう一度唇を重ねる。

「…っん・・」

竜也の腕が相手の首へと回ると相手も強く背中を抱き返して来る。

「もう会えないままかと思ってた。」

呟く声。

それが本音だった。

正直言えばここに来るほんの少し前に付き合った相手が、果たしてどう出るか、自分の味方になるのか…

竜也にも判らなかった。

味方になるだろうと六半信じて、けれどいつまでも姿を見せない彼を半分は疑い始めていた。

彼は温度を分け合う以外何も言わない、ただそう言った竜也に吐息で笑っただけだった。

ちゅっと音を立てながら離れて、

首の付け根や鎖骨の下へ後を残して降りて行く。

壁に竜也を押し付けると、シャツをぬがしにかかった。

「・・・つっ・・・ぅ」

時折歯を立てながら胸吸い付くと、時々声が漏れる。

「ん・・まっ…っっ・・」

「三上?」


呼ばれた声に顔を上げた彼が竜也を見て薄く笑う。

「何ビビってんの?」

「…違う。」

自分の頬を両手で包むと上から不安げに見下ろして来る竜也に気付き、

もう一度同じ視線に立ち上がるとその顔を覗き込んだ。

「・・・・、」

だが何も言わぬまま、ただ真直ぐ見交わしあうと。

強く抱いて。

そのまま今度こそ本当に三上は身を進めて行った。





次の日は、とうとう3日目の朝だった。

だと言うのに部屋の中は不思議と安穏とした空気。打算のせいと言うより、逆に覚悟に馴れてしまっているだけにも見えた。



「でさ、…あ、水野、」

「何だ?」

ふいに隣で山芋のつるを伝っていた藤代に呼ばれて振り向けば。

自分の首をトントンと指しながら、「跡、付いてる」と苦笑される。

「…虫だよ。」

と照れて向き直る竜也に後ろで笑っていた。

「誰と付き合ってんの?」

「・・・・。虫だって。」

情報は命取りになる。結局自分は誰も信用しているわけじゃ無いのだ。

きっとそれは最後の瞬間まで変わらないんだろうな…と思っていた。

それは日常、時々感じていた自分自身の弱さの一つだったが。

それがここで吉と出るか凶とでるか…。良いか悪いかなんてもうその程度の判別にしか過ぎなくなっていた。




「誠二、水野。」

「あ、キャプテン。」

見張りに来ていた渋沢と合流して、小屋へと帰る。

あと24時間と言う緊迫が嘘のような静けさ。




戸を開けた時、最初に中の異変に気付いたのは竜也だった。

奥の方が騒がしい。

それを後ろに居た渋沢に伝えようと振り向くが、運悪く丁度その時遠くで揺れた人影に藤代が気付いて、二人で出かけ直してしまった後だった。

「何か食えるもんあった?」

後ろを向いていた竜也が何時の間にか台所へ出迎えていた三上の声に振り返る。

「…ああ、大したもんじゃないけど。」

肩には猟銃。

「・・・それ、何かあったのか?」

「ん?いや、そこで見つけやつ。」

「鳴海の?」

「さあ…俺が拾って来たわけじゃねーから。」

そう言いながら水場に立つ竜也の後ろの椅子に腰掛ける。

まるで見張りの様に…。

「奥、騒がしいけど?」

「大詰めだかんな。」

そーだろうか?

だが三上が邪魔して奥は見えない。

手を洗い終わったのを見兼ねると「何か作ってよ。」とタタミ掛けられて。

「・・・・いいけど…。」

見えないバリアが張っている様だった。とても昨日身体を重ねた相手だとは思えない三上の様子。

それともこれもフェイクだと言うのか…。

最も信頼したい者への不信感が竜也を苛立たせる。

信じるか?信じまいか?

仮に信じないとして俺に何ができる?

あいつを殺せるとでも言うのか…。

葛藤する竜也の背中を三上はただじっと見ていた。

途中奥に呼ばれた三上が戻って来たのと、竜也が鍋の火を消したのは殆ど同時だった。

気付けば、すぐ横に奴の気配。

「三上?」

「出来た?」

「ああ、」

「実はさー。」

と言いながら、自分の額に当たる銃口。


う…そ…だろ?

「首輪外すのダメになったって。桜庭の試してる最中にドッカンして、2人供も。」

「2人?」

「そ、伊賀と。」

鍋の取っ手を持ったまま固まる竜也の顔を優々と眺めて来る三上。

「まーーちょっと惜しい気もすっけど。ゲームだから、恨むなよ。」

冗談…!!!

打ちのめされた顔の竜也だったが、亮の指が引き金を沈め始めた瞬間。

煮立った鍋の中身を彼へとぶちまけ、幸い真後ろにあった入り口から夢中で外へと駆け出した。


後ろで三上のわめき声が聞こえる。


山道をめちゃくちゃにかけて数百メートル。辿り着いた岩場に背をもたれ息を整えてる…30秒も立たない内にすぐ横に弾があたって弾け飛ぶ。

見れば、ぶち切れた亮が4,50メートル向こうに迫っていて。

再び走り出そうとした瞬間、不覚に岩の間からせり出した気の根に足を捕られ激しく前へとふっ飛んだ。

「い……っ」

痛みを堪えながら四つ足になって起き上がったその時、

首筋に金属の感触。それはシゲのマグナム。

頭の上からゼーはーと息を付く音が聞こえる。

アレだけの湯をかぶってよくもここまで来れたもの。とっさに水をかぶったお陰か…、証拠に髪が濡れていた。


「っく…・・。」

目をつぶる。もう、終だ。

でも

「何で?」

「・・・。先に裏切ったのはテメーだかんな。」

声がする。

「俺が!?」いつ?

「あの金パと……何してたんだよ?」

そう言った亮に驚いた顔で竜也が振り返る。

「お前の事さがしてたんだろ!」

「パチこいてんじゃねーよ!!」

「なっ、」

額に押し付けられる銃口をモノともせず今度は竜也が亮を睨み付けた。

「ちゃんと見た奴がいんだよ。」

「誰?」

なーんでテメーにんな事教えなきゃなんねーの?と言う態度の裏側で、懺悔するこいつの顔が見たい気持ちが膨らむ。『俺を裏切った事を後悔させてやる。』

「お前をここへ連れて来た奴。」

ー−−−−−藤代!!?

ショックに歪んだ竜也の顔を三上は違う意味で受け取る。

込み上げて来る怒りで手が震えていた。


後悔は一つ。俺の勘は正しかったのだ。あの時、あいつを撃っていれば…。


藤代を信用しなかったのは、きっと何処かで気付いていたからに違い無い、

普段から渋沢と親しくする自分を、あいつが疎ましく思ってるんじゃ無いかと言う事に。


「三上、」

「さわんじゃねえ!!!」

「ー−ー−!!」

彼の…頬を伝うものに…、竜也が言葉を失う。

ゆっくり身体を仰向けに起すと、銃口にかまわず彼へと手を伸ばした。自分の胸へと引き寄せる。

「みかみ…」

銃を握りしめたままの彼を抱き寄せて。

「俺は…お前の事好きだよ。本当に。」

亮は暫くその胸に顔を埋めていたがやがて低い声で呟いた。

「2度と浮気しねーって誓える?」

そんな事して無いのにと苦笑しながら。

「ああ、」

「じゃあ、次のは作くんねーで待っててやるよ…。」

「……!?」

その時、やっと気付く。

三上の背中のTシャツは染み出て来る血で赤かった。

良く見れば胸も。

騒然となる竜也。

これだけの激痛を押さえながら全力疾走する自分を追って来たと言うのか、

「何つー顔してんだよ。」

と声が掛かるが彼は顔を上げなかった。

理由は分かっていた。

火傷でケロイドになった首筋の皮がぽろぽろと剥がれて竜也の手にもくっ付いていたから。

いまさら何もかも…言える言葉等無くて。

「…三上」

それ以上何も言えないまま、弱まっていく彼の心臓の音を、絶えて行く息の根を全身で感じていた。


愛してる。


言えないまま。どーしようもない思いだけが溢れて頬を伝って行く。

彼の顳かみにその頬をよせながら、やがて彼の手が握ってた銃を手放すまで。


かちんと自分のすぐ横へ落ちた銃を拾う。


後悔や恨み事なんてそこには無かった。

ただ、底の無い悲しみ。

真っ暗な。



きっと、あの時誠二を助けたのが運の尽きだったのだ…。なのに今、口元には笑みさえ浮ぶ。

だって本当に欲しかったものはもう、ここにいるのだから。




数秒おいて、森の中に鈍い銃声が響き渡った。












その頃、反対側の海に面した崖っぷちでは、肩から腹にかけてばっさりきられた誠二の横で、

日本刀の功刀と渋沢が向き合っていた。







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基本的にウチのはエセバトです。ですっていうかしようと思ってやってる訳じゃ無いんだけど…(泣;)
最近読みかえして無いから乱文が凄そうです…。

裏っぽく無いのにバトを裏においてしまったので裏になっています。すいません(−−;)

























































猜疑心があったのは、自分が藤代を実は殺して居たかも知れなかった

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