無題
えー、deyssと共に記憶に留めないで下さると嬉しいです(死
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「あれ、君風君の友達だよねえ?」
後ろから掛かった聞きなれない声に振り向くと。廊下の薄明かりを逆光に受けた見なれない人影。
だがそのおっとりとした口調には竜也にも聞き覚えがあった。
優に15B以上は自分の上にある顔を見上げる。
やっぱりでかい。
こいつ…関東のボランチじゃないか。確か…。
「須釜?」
知らず知らずとも、一際目立つその存在に自然と頭の片隅に入っていた名前。
疑問符を浮かべながらジッと見てくる水野にも、彼はお構い無しに笑顔を向ける。
3月下旬、昼は東京より幾らか暖かく感じる福島も、吹き抜ける夜の風は肌を刺す冷たさを残して居た。
廊下の曲り角、丁度遠くのスタジアムに向かって突き出した小さなテラスに居た水野の横に。彼は何と無しに並んだ。
「こんな所で何してるの?」
「冷えない?」と
「別に。そっちこそ。」
何の用だろうか…。
「ん?ああ僕は今ちょっとそこ通りかかったから。」
その体格には似つかわしく無い…いや彼だから返って似つかわしく見えた、緩和な性格がにじみでる彼独特な口調。
「君とはやらなかったね。」
「そうですね。」
「やってみたかったけど。」
それまで無表情に横を向いたまま遠くを眺めて居た竜也が、須釜へと顔を向けた。
「風祭が公園で会ったって言うの。貴方でしたっけ?」
「そうだよ。君は水野君だっけ?」
何で?と言いかけて。ああ。
「…風祭?」
「いや、圭介君の方。」
ケースケ?
「?…ああ。あのジュビロユースの。」
噂の東海ね。
それを聞いた須釜がふっと笑う。
「へー知ってた。流石だね。」
なっ!・・・とっさに照れから反論しようと口を開きかけたが、それを見た彼が悪気も無く微笑んだので、ぐっと竜也もそこで押し黙った。
こいつ…何かやりにくい…。
「いいじゃない。ケースケ君もちゃんと君にチェック入れてたんだから。」まあ、それはそう言う事なんだろうけど。名前まで覚えられるかは判らない。
一呼吸おいてから気を取り直して。今度は自分から話題を振る。
「そっちも・・・部屋割りはずれた口?」
「うん?そ−言う訳じゃ無いけど。君は外れたんだ?」
「ー−−−−…。」
ん?どうかした?と
判ってはいたが、嫌味では無いのを思わず確認してしまった。
天然か…。
横を見るが悪気無くこちらを見るその顔に。もう溜め息しか出ない竜也だった。
気付けば竜也とあろう者が初対面だと言うのに、不思議と馴染んでいた。突然現れて、しかも初対面の人間にいとも簡単に話し掛けて来て。
なのにその人柄のせいか、しゃんと伸びた背筋のせいか。なれなれしいと言う印象は不思議と無かった。
「へーそれじゃあチビ君とは学校も一緒なんだ。」
気づけば、何話してんだ!?俺。
はっと我に返って再び押し黙る。
?
急に黙った竜也を須釜が覗き込む。
「やっぱり寒いんじゃ無い?」
そういいながら極自然に手すりの上にあった竜也の手の上に彼の手が重なった。
「ほら冷たいじゃない。」
暖かい感触に思わず引っ込めるのも忘れて、須釜の顔を見るが、
驚いた顔の竜也にもおくびも引かず、ニッコリ笑うと「行こうよ。」と肩を引かれる。
「あれ、スガ?」「ケースケ君。」
一歩廊下に入ったところで噂の彼に遭遇。
「よお。何してんだー?」
「うん、ちょっと話し。」
「あれ…えっと。」
「水野君。」
「そうそう、お前の…あ痛っ」
スガ?
引っ掛かるモノを感じたのか水野も山口と共に須釜を見るが。「ケースケ君も良いけど。君も中々良いよね。」
と彼は笑顔で。
笑顔で言った。
そして「じゃあまたね。」と右手を差し伸べると訝しい顔になりながらも、やっぱりつい手の出てしまう竜也と握手をかわし。
「行こうか。」
と山口に向き直る。
須釜を見て。竜也を見て。
「ああ…おお。じゃな。」
と竜也に向かって声をかけた山口が、
去り際に一歩戻って来て、
「危なかったな…。」
としみじみと言うと、背中をポンと叩いて行った。
「・・・・・??」
「ヒドイなケースケ君。僕が悪者みたいに。」「お前本当、その癖どーにかしろよな。」
「もしかして妬いてるの?」
「…なわけねーだろ。」
それは残念。と言いながら
固まったまま二人の後ろ姿を見送る竜也を背に。
「あーあ。やってみたかったのに。」
と呟く彼に。山口はもう無言だった。
お前本当それさえなけりゃな・・・・。
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お終い。
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