+無題+
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「なータツボン。」


「二兎追う者は一兎もえない言うの知っとるやろ?」

「…からなんだよ。」

「別に…それでもあんた、俺とやりたいんや思うてな。」

今度は薄い侮蔑を混ぜながら。

さっき使った笑みでもう一度微笑んでも、

階段の脇へと組敷く自分を黙って見上げて来る竜也の無表情。否、怒った顔。

凍てつくコンクリの冷たさが背中からじわじわと這い上がり、身震いがでそうな寒さだった。

「別に。ただの性処理。」

無味乾燥にそう言い放った竜也の態度にプッとシゲが吹き出して。

フンと小馬鹿にしながらそれを嘲笑した。

「何やそれ?あのまゆ毛の真似か〜?似合わんわ。」

「何とでも言え。」

一瞬かっとなりかけた竜也が、しかしすぐにそれを曝すまいと冷静な顔を繕う。

予想通りの反応を返すその様が何より面白くて…何よりそそる。

時折、白い息の混ざる夜の気温にそろそろ耐え切れず、

「ホンマに強情なやっちゃなあ…」

吐息混じりの苦笑いを返すと、睨み付けて来る視線をかまいもせず一気に口付けた。

突然の事に飛び跳ねた竜也の肩にもお構い無し。両の手首をしっかり上から押さえ付ける。

歯列を割ってずっと奥迄舌を忍ばせると、嫌がって頭を振るがそれを許さず。息を付く暇も与えず舌を吸う。

何度も、何度も。

後ろに回った竜也の腕がシゲの金髪を掴み引っ張り上げてもまだ、許さない。

「っ…!」

知り尽くした竜也の口膣をなぞり通してから、最後にもう一度ゆっくり舌を吸う。

やっと許された頃には髪を付かんだ手は力を失い、昂揚した頬で大きく息を付いていた。

身を起こすと、少し上からその様子を見守る藤村。

飲み切れずに竜也の頬を伝う唾液を手の甲で拭ってやる。


「こんな所であいつ裏切って本当にええん?」

「裏切って無い。」

「裏切っとるで…」

「このくらい…」

「俺にも出来るって?」

それを受けてくっくとシゲが笑い出す。

「何やあいつに浮気でもされたんか?」

「別に。」


「やめやタツボン。あんた見たいなボンに、俺は荷が重すぎるわ。」

笑っていた顔がフと真面目になって、そう竜也に告げる。

かっと顔へと血が登るのが判った、憤りに顔が歪む。

お前じゃダメだと言う拒絶。それは今の竜也に取って殆ど侮辱に近かった。だが…

「いい加減、そーやって何でも手に入れたがる癖何とかせんとな。」

溜め息まじりに語尾をやわらげたのは後に繋がる言葉を告げない為に。

「ちっとは我慢ってもんを覚えんと、」

子供をたしなめるみたいに言っても、その下から睨み付けて来る眼光は鋭さを増しただけだった。

…あかん、ほんまに刺し殺されそうや。

けどその傲慢ささえ自分は…本当に好きだったのだと思う、

ほんま…残酷なやっちゃで、アンタ。


いつまで経っても無い物ねだりのねんねちゃん。

判っている。なのに。




下から押し退ける腕に気付いて、立上がると、無言で竜也も身を起こした。

シゲと視線は合わせないまま。

気まずい空気の中、

「…悪かったな。」と一言ぽつり。

苦虫を噛み殺す、バツの悪そうな顔がいかにそのプライドを傷付けたかを物語っていた。

「忘れてくれ、」

すっくり立上がると、一度もシゲの顔は見ないまま、身を翻そうとするその手を掴んだ。

「何やて。」

今までずっと優位に立っていた自分の中に入り込む微かな苛立ち。

「あんたが誘ったんやで?」

「判ってる、だから悪かったって…シゲ?」

一瞬。振り返った竜也が彼の余りに険しい表情に言葉を止め…

無言で自分を・・いや、焦点を合わした訳では無い瞳が自分の胸元をじっと睨み付けたまま動を止めた彼に驚くが。

「手、放せよ。」竜也がそのセリフを言う前にはっと我に返ったシゲがぱっと手を離していた。

「あーすまへん。…なんやちょい人とダブってもうてな。」

「…お前が止めろって行った癖に」

照れくさいのか、シゲを攻める様にそう言うと握られた手首をもう片方で軽く持ちながら。そっぽを向いた。

「から違うゆーてるやろ。」

はす笑いの空気はすぐに渇いて。

やがて沈黙。


「シ…「タツボン。」

「何?」

「ほなお休みさん。」

「…ああ。」

まだ何か言いたそうにした竜也の横をすっと通り過ぎて行く。

あかん。

俺はあんたに負ける訳にはいかんのや。

腹が立つのはこの残酷な子供になのか、それとも、それでもあの肌に食い付きたいと思った自分になのか。

腹に据える気持ちさえ、憎しみなのか愛情なのか。もはや判らなくなっっていた。

それでも。


もう俺はあんたのものには返らへん。

けど、諦めたるつもりも無い。


ただ一つ。それだけが確かな事。


決した様に視線を上げれば、振り返る事のない背中が遠ざかっていた。

見届けてから再び自分も歩き出す、

ついさっきまで自らの頬をかすめた、茶い髪の柔らかな感触が脳裏をよぎる。

なつかしい…あの匂い。あの温もり。

向けられたあの激情も。

自分の物に違いなかった。



けどまあ、失った物ばかりに捕われんのは、あんたの悪い癖やで。ボン。

だから俺見たいのに付け込まれるんや。


漏れる笑みをぐっと沈めた。その時。



「藤村!!」

威勢の良いかけ声にはっと顔を上げれば、

「ノリック、んなとこで何してんねん!?」

「それはこっちのセリフや!窓から見えたから呼びに来たんやで!」

「マジで!?」あっちゃ〜〜と頭を抱えるシゲの隣にひょこひょことよって来ると隣にくっ付ついた。

「何やノリっク!きしょいわ。」

「こんなん冷えて風ひくで。何しとったん?」まあいいけど。
「今賭けやっとんやけど、頭数足りんのや。僕と組まへん?」

「ええけど、負けさせた方のおごりやで。」

「わかっとるわ。」

言いながら、もう誰も居なくなったグランドにちらっと視線を走らすと、

『君はもうくたばっとき…』

誰とも無しに向けて心の中で呟いた。






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何が書きたかったのか意味不明になってしまいました;。出そうかどうか迷ったけど、出してしまいます。
怖いくらい原作とは真逆の話ですが、ま、読みながしてちょ…(−−;)スンマソン。
























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