月夜
-裏僕と一緒-
以前出して、消した三水をリサイクルしてしまいました;

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目を開けると

薄い視界に入って来たのは

肩を揺する誰かの影。

榛上の窓から照らす月明かりが

夜明け前である事を告げていた。

見覚はあるような

無いような、

はっきりはしない。

昼間疲労した身体はまだ重く

とても起き上がるには億劫で、その手に揺すられても

何とか逃れようと枕に寝返って、抵抗を見せていた。


「おー…」

ちっと…


囁かれた声は、

確かに知っていたけど…

一体…誰なのか…


「…たーつやくん?


朦朧とした意識のまま身体だけ起こすと

仕方なくふらふらと寝床を立つのだった。


その影に手を引かれながら、体育館一杯に引いた布団で雑魚寝している小あざらし達を踏まない様に

跨いで跨いで、濃紺の中に浮かび上がる月明かりの廊下を歩いて行く。



雲が途切れて挿した月明かりの中、見えたのは…

…自分を見下ろしながら、軽く笑った…その誰か

目を擦りながら、付いて歩いていた隣の身体が突然、

道を外れて、真っ暗な庭先へと…飛んだ

と思った瞬間、同じ様に自分の裸足の足も

冷たい草の上を踏んでいた。


「どこ行く…?」


繋いでいた手を一際強い力で引っ張られ

それに逆らう様に引き返しても

彼が竜也を振り向く事は無かった。


ただぎゅっとその手掴んだ拳の強い力。









「ん…」


「…も……疲れた…」

聞いているのか居ないのか

下から自分を腰ごと突き上げて来る彼が

止める気配は無い。

ただ、半分泣きそうになって頼む自分の顔を

見上げては、汗の浮ぶ顔で意地悪くにっと笑ったきりだった。

「…せんせぃ…・・れ」

「何?…」


眼鏡の奥で笑うのは

新任コーチの・…か…み先生…

どこか自信気に皮肉るその姿は

タレ目につり眉と言う特徴のせいなのか

ほんの少し

父に似ていた。



「…もお…やだ」

「やだ?」

「そう…じゃあもう」

しかし言うより早く軽々と持ち上げられた身体が

再び彼のモノの上へと落とされて

自分の足首より太い彼の杭を深く

飲み込んだ。

「あぁっ!…あ…ぁっ」

「んっ…」

ズンっと言う衝撃と共に伝わる、痛みと…背中が痺れるような快楽

「やめようか?」

「…ぁっ…っぁ…っ…」

言いながら、手にあまる程の尻を両手で掴んで

これでもかと言う位激しく揺さぶれば

途端、上がりだす絶叫。

「…っ…ぁ…あ…・・だ…」

まるで狂った様に喉元を仰け反らせ

空へ嗚咽を漏らしていた。

恍惚となりながら自分の上で吐息を切らす

小さな彼を面白そうに眺めながら

「いいの?」と

声もでない程追い詰めて、薄く笑う。

まだ、自らのそれさえ厚い皮に覆われたままの

子供相手に…

止められない自分をずっと何処かで感じながら…

熱の下の幼い身体を骨が折れそうな程抱き締めた。













産休教員の穴埋から、運良く都内の有名私立小学校に赴任が決まってから2年。

どこからどうばれたのか、

学制時代系列校のサッカー部だったと言う理由だけで

学園主催のインパルスのコーチの1人を任されたのは

今年の春の事だった。



実習生時代から何となく、廊下ですれ違う度

生意気そうだな…

とは思って居たツラの2年生

時々見かけるクラス担任の苦笑を見る度「やっぱり」

と思いながら「ご苦労様…」と心の中で呟いて居たと言うのに。



「センセイ」

赴任初日、早速自分の前に立ちはだかったのがその、

桐原竜也だったのだ…

時々こけそうな滑舌の割に良く通る声。


もしかしたらと言う予感は会ったけど…

まさか本当に…


どこかできちんと訓練されて来た身のこなし、

大体ここは初心者やクラブ活動前までの子供達を集めた、

オリエンテーション的な物。だと思っていた中

1人、目の前を走る彼だけが、周囲と何かを違えていたのだった。


そしてそれは確かに、

自分の良く知ったのもと、見間違えは無かった。



「センセイ、パス練してください」

「組む人いないの?」

そう言ってその目線に下がっても

しっかりと自分を見据える瞳はまるで対当と言わんばかりで

口元も堅く結んだままだった。

「…いるけど…」

あんなの相手にならない

言いたげな瞳におされて、

「…判った、じゃあボールかして…」と、

だったらと…

昔あの人に習った、性格無比なループパス

同じ様に足元に返せば

一瞬だけ驚いた顔がこちらに向いて…

そして、負けずと同じ軌跡を描かせながら自分へと返して来たのだった…

おぼつきながら

まるで挑むかの様に食らい付いて来るその姿に

思わず強くなっていたパス…


隣のコートで集合の合図がなって始めて

静まり返っていた周囲に、気付いた程だった。




「先生…、もうちょっとやろう…」

帰りがけ後ろからかかった声に振り向けば

やはり彼。

今さっきまで、堅く自分を見上げていた顔とは打って変わった面持ちに

思わず笑いたくなる気分。

少し照れながら自分に押し付ける様にボールを差し出すその姿は

彼なりの甘え方なのか…


思わず「いいけど」と言いかけながら

「あ…、悪りぃ先生これから会議あっから」

またな…

とその頭を撫でると

少し伏せた睫毛が「判った」と一言頷いていた…


「じゃあ、又明日…」

明日?明日は何も…思いながらも

「ああ、またな明日な…」と、中履きを履きながら立ち上がっていた。






「明日お父さんに見せるんだ…」

「今日出来る様にならなきゃ、」

それからどの位、立った頃だったか

空いてる放課後の殆どを彼に付き合わされた

それが「お父さん」の為だと知ったのは…


「もしかして…君のお父さんて…桐原監督?」

「…そうだよ」


言った瞬間俺を見上げた顔は、ちょっと自慢気で…

ちょっと生意気…

驚いたなんて顔は一つもしなかった。

…自信が有るのか…否、信頼か…

何せ彼の父親は元日本リーグの名MF…


苦笑の下に少しの意地悪を混ぜながら

「先生、実は昔桐原監督に習ってたんだ…中学時代にね」と…

「先生の監督?…お父さんが?」

「そう」

予想には反したけど、何故か一瞬寄せられた眉は

嫉妬か…

困惑か…


暫くなんとも言えない顔で自分を眺めていた彼だったが

やがて

「続きやろうよ…」と、そのボールを再び自分へと突き出したのだった。








それは、雨の降る金曜日…

外は土砂降りで、まだ4時だと言うのにカーテンを閉めたような部屋の暗さ


あの桐原竜也は

4年になっていた

当然ながら素人相手の地域サッカー等さっさと辞めて

クラブサッカーに転向して、姑くが立っていた。

過ぎて行く子供達のサイクルはあっと言う間で、会わなくなってもうどの位経つのかも

忘れかけた頃…

再び彼は姿を現わしたのだった。

「先生…」

いつかと同じ様に後ろからかかった…、けど、

あの頃より幾分低いその声に、振り返る…

余りの雨に窓の鍵を締めて回っている内に

何時の間にか、4年生の教室の延長に有る廊下へと差し掛かっていたのだった。


「よお…」

「こんにちは…」


昔から、堅苦しい所のアル奴だったけど

伸びた背が余計にコ憎たらしさを増していた。


「調子はどーよ?」

「…ええ、まあ…」


近付いて来る足音に、がたんと最後の戸を閉めて振り向いたそこで

思わず声を失う…


明らかに右の頬を覆う大きな青痣


もう半分の顔はあの頃よりもずっと鮮明になってはいたけど

相変わらずの美少年振りを伺わせていた。

決して少女臭くはないのに、何故かたおやかな…、


「何だそれ…(ケンカ)負けたのか?」

「…いえ…父です。」

「!…マジで?…」

その言葉が、教師にどれだけの意味を持つのか、その時の彼が判っていたのか…

いや、恐らく相手が自分であったからだとは、判っていたが

彼は何も臆する事無くただ無感味に、自分を見てそう言ったのだ

…それから、側まで来ると

持っていたボールをすっと自分へと差し出して

「練習…付き合ってくれませんか?」と…


だが次の瞬間、

言いながら腕からこぼれ落ちるボールも構わずに

自分の腕の中へと納まっていたのだった。


「ーーーー!」




幾らすました口を利いた所で目の前に映る顔は

確かに幼いままなのに

反を返す身体は既に熟れていると認めざるをえなかった。


それが自分のせいなのか…

それともあれは只のきっかけに過ぎなかったのか…

あるいは、とっくの昔に彼は他の誰かの物だったのか

今となってはもう判らなかったが…



それから1年も経たない内に、

両親の離婚によって

桐原竜也は水野竜也と名をかえて、転校して行った。



あれから何年たったかなんて

指折り数えた訳じゃないから知りもしなかったが

来年決まった系列中学への赴任に、何となく

あの面影を重ねた自分に

ふと自嘲が漏れた…







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2月に出した月夜の原盤です…あまりにパラレルで余りに趣向が歪んでいたので迷いましたが…(--;)
中途半端なショタ…。


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