晴天なり
久しぶりの鳴設ナリv
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随分前に終わったらしい隣のクラスの前で、通りすがった知り合いに呼び止められた。「はあ?倒れた?だっせーー。」
「うんそう。文化祭の練習ん時な。角材で頭うったん。」
まだ鞄あるから保健室にいると思うよ。行って見たら?
「何で俺が。」
・・・・・。
ああ?とここには居ない設楽に悪態を付く鳴海の顔を。
ショートボブの朗らかな笑顔が眺めて居た。手にはトランペットの楽器ケース。
「そんな事よりゆう子ちゃんさ〜あ。」
「あ、時間やわ。ほなウチ部活いかな。じゃね」
呼び止める間も無く、後ろで自分を呼ぶ声にセーラーのエリを翻して駆けて行く。
文化祭前はどこもコトに文化部は忙しいものだ。
「試合、見に行くからーー。練習頑張ってな!」
と振り向き様に向こうで手を振る姿が
『眩しい』
「はあ〜〜〜い。」
と返しながら、鳴海の機嫌はどんどん低下する。
「・・・・・。」
ちっ。
「おーーい鳴海ーー。」
「今日練習ー・・・」
ちょうどその時、後ろから来たチームメートが振り向いた鳴海の不機嫌面にぎょっとする。
うわ。
「何だよ。」
「何キレてんだよ?それよかさー。今日練習無くなったってよ。」
「マジかよ!!?」
一変して明るくなった鳴海の態度に少々引きながらも「けどそのかわし、明日の朝練…」と続けるが…
「はいはい。どーもごくろうさーん。」
とすでに後ろ手で手を振りながら去って行く鳴海の後ろ姿だった。
招待試合もあるし、そうで無くても休みのないサッカー部。
練習前にも後にもつきまとう文化祭準備。
とか言う細かい作業は偉いストレスで、ここの所飽き飽きしていたのだった。
今日はやっと日の落ちないウチに帰れるとあって。
気分よく廊下を歩きながらケータイのアドレスをチェック。
「さーて、今日は誰にしよーかね〜〜」ストックの女の名前を順に辿りながら、
昇降口のすぐ手前で足が止まる。
飛び込んで来たのは『保健室』の文字。
「・・・・・。」
つーかだから何だよなあと。
通り過ぎる。振りをして…後ろのドアからガチャッと。
鳴海の意志に反して。何故か。何故か、手がノブを回してしまうのだった。
しんとした部屋の中。保健室独特の冷たいシーツの匂いと日の匂いが混ざって流れて来る。薄い水色のカーテンの向こうに、誰かが居た。
あいつか?いや。
取りあえず中へ入ると音を立てない様に(やっぱり何故か)戸を閉める。
今度ははっきりとした話声が聞こえた。
「荷物、ここ置いておくぞ。」
「ああ、わりィな。」
「お前最近顔色悪かったしな。」
「そお?」
「どっか悪いんじゃねーか?」
設楽としらねー奴の声。
どうやら保健のセンセは留守らしかった。
「設楽さー」
「んー?」
「・・・・鳴海なんてよくねーよ。あいつが、いつも違う女連れてんのお前も知ってんだろ…。」
話し掛けてる方の足が見えるが設楽の姿はまだ見えない。
ただ彼にはめずらしく沈黙していた。
「…つーか。別に付き合ってねーし。」
関係ねーよ。
「設楽。俺、お前のコト…「俺の女がなんだってえ〜〜??」
どっかの学園ドラマみたいに、双方ちょっと俯き加減で視線をそらしながら良い感じの告白劇の真っ最中。に鳴海の粗暴な声が割り込んだ。
はっ。冗談じゃねんだよ。
「鳴海っ!!」
はっとして顔をあげる二人に「よお。」と悪魔の笑みを浮かべる。
何時の間にかカーテンの隙間から顔を出したその巨体に、唖然とする男子生徒の顔をバカにした様に眺めると。さっきから何も言わない設楽の方をちらっと見……。
「なっ・・・。」
固まる鳴海。まばたきも無くその姿に釘ずけになった。
「お前…何その格好…」
そこにはまぎれも無く。セーラー服を着た設楽が…ベットの上に身を起こして居た。
目を見張る。と言うか、もうがんがんに釘付けになっている鳴海の目に。
その視線に本気で嫌そうな顔で顔をそらす設楽。
「ちっと、見んじゃねーよ。」
そんな言葉が自然と口を付いて出てしまう程。
「ただの衣装だよ…」唇が引きつる。
自分のカッコを弁解するより先に…否、そんな必要は無い程。
もう見んな。つーか見んな!マジ怖いこいつ。超セクハラなんだけど。
いつもだったら不適な笑みを抱えて喜んでカマッテきそうな鳴海が、無言のまま設楽を見ている。
かと思いきや2人が見守る中、ふいに伸びた手がセーラーの胸ぐらを摘み、中を覗き込んだのだ。
「てめっっ ! !!」
声よりも早く、ベシっと音を立てて頬を張られ鳴海が後ろへ吹っ飛びかけた。音も無くごく普通に目の前で起こったその出来事に唖然の付き添い人。
「じゃあ、後でもどっから。ありがとな。」
「あ、ああ」
すぐ横で後ろを向きながらしゃがみ込む鳴海をちらっと見ながら、今何も無かったかの様な顔の設楽へと荷物を渡す。
「おう。じゃ、明日な。」
と言いつつやはり足下の鳴海を物凄く気にしていたが…設楽の無言の威圧に押されて渋々保健室を後にする。
彼は心配そうな、もどかしいような顔で設楽を一啓して、
もう一度「じゃな」と呟くと、部屋を後にしていった。
「へ〜〜。付き合ってねーかよ。」左の顳かみを押さえながら何とか復活してきた鳴海は、今付き添いの奴が出て行った方を傍目で睨む。
「ったく。テメ−耳鳴りしたじゃねーかよ!」
フンと言う顔で、うんともすんともない設楽がそれを見て居た。
「・・・・・。」
しばし向き合う二人。
そしてどちらとも無くふと一瞬視線を外した次の瞬間。
「やめろっ!テメっ・・・ちょっ!!」自分の上には馬乗りになった鳴海がいた。再び上半身がベットへと押し倒される。
上から押さえ込まれる両腕。まだ布団の中の下半身じゃあらがうにも反撃出来なかった。
・・・・。まじで。
犯られる!。
「ふ〜〜ん。てめ。似合ってんじゃん。」
上から見下ろす、何時になく不適な笑みの鳴海にぞっとする。
冗談。こんなやつに。俺がこんなやつにこまされてたまるか!!(しかし付き合っているが。)
衣装一つのせいでこうも変わるものか。
いつもにまして、華奢に見える四枝や気の強い視線。
乱れた猫っ毛の奥で息を殺しながら睨み上げて来る表情が、さらに鳴海をそそった。
本当の女見て−。並べてみればきっと作りは全然違うが。
二人きりしかいないこのシーツの上ではもう何でも有りだった。
その顔を見ながら、肘で布団を落とすと。
そこに現れたのは。
誰に借りたのか、プリーツ…にルーズまではいた。完全装備。
あっけに取られる鳴海と。「あーもう終わったよ。」と顔をそらす設楽。
諦めてしまったのか、掴んで居た手首の力が抜けるのを感じて鳴海が設楽に視線を戻す。
何か。何でも有りになって来たな。何でそう思ったのかは判らない。
今までそんな事を設楽に望んだ事は無かった。
だが。どうしてかその時はあり得ない期待をしても平気な気がして居たのだ。
マグロを決め込んだのか、目をつぶって横を向いたままの設楽を見ながら。
そっと身を進めると、ズボンの布が股の内側の肌を擦っただけでビクりと反応を返してくる身体に。
自然にごくりと喉がなる。
せせら笑う余裕等無かった。気づけば鳴海は真剣そのものになって。
あり得ないと判りながらも、さっき見えた様な。見えなかった様なアレを確かめようと。
そっとその白いセーラーを鎖骨までたくし上げた…そこには。
白い。
息を飲む。
見間違いだろうと瞬きをした瞬間。
「み…」
「なーるーみ!」
一瞬暗闇に戻った視界の中から引き戻される。
・・・・・。まさか。
また夢かよ!!!
「おお、大丈夫か?」「あーー?何かあったのか?」
「や、何かつーか…。お前が角材で頭打って倒れただけだけど。」
見回せば、体育館の天上に、自分を覗き込む幾人かのクラスメート。
そして後頭部に出来た派手なたんこぶ。
「大丈夫そうだな。」
角材?ってんなもんどこに…と見回したちょうどその時。
「あれ?」
「そう。」
自分の身体の2,5倍は有る角材を肩に担いだ設楽が、たった今も通りすがりにゴっと音を立てて、
若い新人担任の顎を(無意識に)ぶっ飛ばした所だった。
「あ、すいませーん。」
「や、うん。・・・うん。」
「・・・ヤローがな。」「まあ、事故だから。」
「あ、っおい鳴海ーー!保健室……」
「ちびテっメ−ーー!!!!」と元気よく駆け出したは良いが。
「?んだよ。」
と振り向いた設楽の角材が再び。ゴっ。
しかし今度はめげずに鳴海も。ボコ。
「いてーな!」
ゴ
ボコ
ガッ
ゴっボコ
ゴガっ
「あーあ。始まったよ」と
焦る新担の周りで、皆はまた準備に取りかかるのだった。
放課後
「あ、そこのツートップ」「何すか?キャプテン。」
「今日はもう帰っていいぞ。」
仲良く並んだ。こぶだらけのツートップが同時にこちらを振り向いたせいで、
笑いを堪えるのにキャプテンも必死だったと言う。
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題は藍◯さとるのマンガから。女の子が関西弁だったので…。
鳴海の夢妄想2(−▽−;)
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