相思想思---三上編---
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初めて会った時から気に食わない奴だった。キャプはキャプでも所詮無名八流校。
の癖に、何故かツンとすましたその態度。
整った顔立が黙っているだけで生意気に見えた。
『なんだこいつ?』何を勘違いしてるのかと思いきや、
実は後から森を蹴ってただの
監督の秘蔵っ子だの……。
出るわ出るわ。
マンガか?テメーは。実は影の実力者でー。そら辺の名の通った奴より強いポっとでのスーパーヒーローですってか?
ざけんな。コチとら正々堂々看板背おって恥も曝して勝ち残ってきてんだよ。
転入って何だおい。俺らが今まで払って来た寄付金とか言う無駄金どーしてくれんだ?
1年半の学費と入学金で森ナンバーと俺の人生無駄にするとは良い度胸(三上、そうじゃないだろ。)
(あ、うっさい親父顔。)(おやっ!!・・・・・)
本当にムカツクヤローだった。そう思っていた。
それだけだったハズが。
何でこうなっちまうのか、正直自分にももうわからない。
ただ判るのは水野竜也とは。人が見る外観とは全く別のもう1人の人間だと言う事。お堅そうに見えて、実は結構面白い(つつくと)。
生意気は頑固で強がりの裏返し。
クールぶってるけど実は激情型でデリケート。しかも陰性の自意識過剰と人見知り。(ボンボンだからな)
協調性はあるようで無くて、人の上に立つのは得意でも大勢の中じゃ中々馴染もうとしないし。甘えられるキャラじゃ無いから、可愛がられる訳でも無く。おまけに要領無しで気づくと輪から取り残されてるタイプ。
要するに人付き合いがなってねーのな。
選抜ん時だってパッと見じゃあ、かろうじて郭とか言うママさんがダチ(真田)のついでに面倒見てくれてますっつー感じじゃねえ?
(三上それはちょっと偏見し過ぎじゃ…)(ああ?うっさい。親父が…)
(ああ!キャプテン押さえてっ!!)
なのにどこか憎めないこの柔和さは。
そっくりだと思っていた父親よりは、多分母親ゆづりなんだと思う。
実際幾らタレ目のつり眉だって、あの顔があの親父になるとは到底思えない。
そうあの親父……。
全く似て無いとは・・・や、似てっけど?・・・。
偉そうにしてると思えば結構ぬけてたりする所とかは。けどまさかアレが若い頃は…何て話し。
それは
それだけは考えたくも無い。
「何だ三上?」やべっ。
またま見回した先でバチッと目があう。
「いえ、」
「終わったらさっさと次の動作に移れ!お前が動かなきゃ下も動かんぞっ。」
っかってんだよ。くそ。
あの引っ越しのキスシーン以来(supringfool参照)もしかしなくても風当たりはかなり強くなっていた。
ったくよー。テメーの息子は女じゃねーだろっつーの。
ある意味それも問題だったが。
いい加減子離れしろっつーの。
「ああもうこんな小姑と一生付き合うなんて俺はぜってーごめんだからな!」
「えっ?」と言う顔で隣に居た竜也がこちらを振り向いた。ああ?・・・・・。
俺は今グランドに居なかったか?何でこいつがここに…
と見回せば、そこは水野の家の側。真正面に続く道の向こうに夕焼けが沈む所で。全てがオレンジ色に染まっていく。
大きな目が黙って不思議そうに三上を見つめていた。
ヤバい。
どっから聞かれた!?どこまで聞かれた?
弁解出来ない程好き勝手言っていた手前。そんな事がとっさに脳裏に走るが。
「どうかしたのか?」
と焦って言葉に詰まる俺に普通に話し掛けて来た。
怒っている様子は無い。
「ああ、何でもねー」
目をそらしながらそう言った俺にフッと笑う。
「突然。何言ってるんだ?」
「あーなんでもねー。」
「…一生なんだって?」
そういってムッとする俺の顔を苦笑まじりに見ていた。
「何でもねーつってんだろ。」
うぜーなとネ目付け返すが、後ろに迫る夜の青白さと前から照りつける夕日を受けた横顔に一瞬だけ。
ほんの一瞬だけだが息が詰まった。
最近こいつは心無し…。
たった二年だと言うのに成長期の変わり様は凄いと思う。
それは自分だって同じであったが。
背丈や骨格は男へと成長してるのに何故か返って、出会った頃より綺麗に…なって行く。
なんて自分の口から言うのはおぞましけど。
男の癖に不思議と。それ以外の言葉が見つからない。
幾ら伸びても従順とでも言う様に変わらない身長差の比率。
ちょっとからかえばすぐに真に受けて、怒ったり、焦ったり。面白かったのに。
最近じゃあ三上の嫌味も余裕で受け流し、時には1歩先さえ読んでお返しまでついてくる。
優美に落ち着いて行く物腰。
かわいくねーの何って。あのぼちゃんぼっちゃんはどこへ行った事やら…。
昔はもうちっと可愛げもあったのによ。
…可愛げなんてあったか?まあ、更に小憎たらしくなったと言う方が正しいか。
なのに。
思いながら。少し前を歩く隣の後ろ姿を見て。
後ろから肩に腕を回して引き寄せると、ヒクっとしながらも素直に腕の中に納まるひと回り小さな身体。
これがいい。
「三上?」
名を呼ばれる。
驚いた顔がこちらを見ていたが、それを黙って見返していると。
こちらの主旨をそう解釈したらしく黙って目を閉じた。
こいつにこんな事までさせられるのは少なくても、今の所俺1人なんだろーな。
そう思うと笑いが込み上げて来るのを押さえられなかった。
頬がうっすら赤いのは照れてるからで。
どんなに大人ぶっても結局本当の所は昔とちっとも変わっていない。
そんな竜也を垣間見てると久しぶりに意地悪の虫が騒ぎだした。
口付けてはやらずに黙ってその顔を眺める。
何時まで立っても何も無い三上に竜也が目をあけるのをじっと待っていた。
長い睫毛。
大人びて心無し優しくなった顔立。
分け目、毎日微妙にかえてるの知ってるぜ。
何て、込み上げる笑いを堪えながら目尻から頬を下へと指でなぞる。
暫くして、ゆっくり開いた目蓋が、
思った通りの非難めいた瞳で三上を見上げた。
それを三上があの偽善ぶった特有の笑みで
「どうかした?」と嘘ぶいた顔で見下げてやろうとしたその時。
唇に触れた柔らかな感触が離れて行く。
やられた。・・・まさか。
こいつが?自分から!?・・・・。
あり得ねーんだけど。おい。
唖然とする三上からクスッと忍び笑いを残した竜也が離れて行く。
「おい。」
その右手を捕まえた。
ぐいっと引っ張って表を向かせると不機嫌な三上の顔を見てしてやったりと笑っていた。
引き寄せて、今度は自分から重ねようとした時。
消えた。
「大丈夫っすか?三上先輩!?。…うわ痛そうっすねー。」は?あ?
気づけば目の前にホントに痛そうな藤代の顔。
起き上がると頭の芯がズキリと痛んだ。
ああー?何だ?
「三上、頭打ってたから。動けるなら向こうで冷やした方がいい。」
何だ?渋沢?
暫くぼおっとしながら辺りを見回すと…グランドに。ボールに。
記憶が甦る。
ああ、俺は何でこけたんだっけ?
っつっ・・。
頭の後ろに手を回すとでかいたんこぶが・・・。最悪。
「まーた水野の事でも考えてたんすか?」ベンチ横のコンクリに横たわる俺に、タオルを絞りながら藤代が潜めた声で聞いて来る。
人が動けないのを良い事に、看病するふりしてこのワン子め…。
「昨日エアメール届いてましたもんね♪」
そう。あのヤローは今俺をおいて留学中だった。なんつー夢見たんだか…。
だから美人に見えたのか…。
あぶねーあぶねー。「なんて書いてあったんスか?あいつ元気にしてるって?」
「まーな。」
いつも通りだったけど。
「写真とか有りました?」
「まーな。」
あやっべ。目−輝きやがった。けど今。そんな事気にしてる余裕は無かった。
あったま痛ってーーー。
「これ水野っスかー?」「他にどれだっつーんだよ。」
「いや…綺麗っすねー…。へーーー良いなーあいつ。受けっぽくて」
「・・・・。大して変わってねーだろ。」
「そうすか?そりゃ顔はねー。」
「にしても」
誰がとった写真なんスかね。良く撮れてるな−。この角度いいっすもんねー。
耳を塞ごうかと思った。
ギロッと睨んだ俺を見て藤代が「あっ…」と言う顔になる。おっせーんだよ(怒)
「…大丈夫っスよ。水野浮気とかできるタイプじゃねーし。」
・・・と言いながら俺を見て黙る。
「・・・・。」
はいそーです。俺と付き合いだした時はキンパとまだ別れてませんでした。
「大丈夫っスよ。」
自暴の薄ら笑いになった俺に、苦笑いになりながらも藤代が自信満々に言う。
フン。
っかってんだよ。
意固地で。不器用で。強がりで。けどだからあいつは俺を裏切ったりはできねーだろーなと…自分に言い聞かせていた。けどいつまでもそんな子供でいる訳も無くて。
一通。また一通手紙が届く度にどんどん変わって行くあいつを見る度。
正直ずっと不安だった。
名実共に育って行く力。誰もが認めるプライドの訳。そう成れば傲慢も気高さに打って変わる。人の評判なんてそんな物。
きっといつか糸の切れた凧の様に。…このまま終わるんじゃ無いかと。
ガラでもねーのによと笑ってしまいながら。
本当は辛かった。
「会いたいんじゃないすかねー?」「は?」
「手紙…短いのに。間隔狭くなってるじゃ無いですか。」
消印を見ながらふと藤代が口にした。
------!?
言われてみれば。
「先輩…返事ちゃんと返してます?自筆で。」
「は?メールで十分だろーがよ。」
「…うわ。何かつめてー」
ああん?
「・・・・どーせ来週から休みに入んだろ。」
「それもそうっすねー!!!」
おい。会うのは俺なのになんでお前が喜ぶんだ?
「早く会いたいな〜〜vv]ああ、おい。誰か渋沢を呼べ。
そう心の中で悪態をつきながらもその笑顔を傍目に見届け。
さっき飲んだ鎮静剤のせいで眠りに落ちて行く。
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ファンブックの巻頭ポスターを見て書いてみたくなった話。どうか笑わないで(^^;)
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