色々と気分が悪かった。部屋にかえっても寝つけず天上を眺めて居た。
「終わった・・・。」

2年半の片思いは終わった。ゲームも明日で終わる。
恐ろしくうざいけど抱くには困らない相手。それが笠井だった。
時々気分で可愛がったり。馴れ合ったり。
突き放したり。いじめたり。
けだるく無駄に意味も無く過ごした時間。
けどそれはいつしか、麻薬のように俺のなかにすっかり染み通って来ていて。今さら手放そうと考えるには・・・

すでに手後れだった。



俺はあいつを多分。
ん?
ふと暗闇の中に浮ぶ言葉。
失恋したのは渋沢なのに、目を閉じると浮ぶのは何故か笠井の事ばかりだった。

冗談じゃねー。
しかし。

ばかばかしいと。
認めまいとしていた心の枷が外れると、溢れて来るのは思いばかり。

気付けばこの数カ月いつも一番側にいたのは誰だった?
・・・・・。
どうする?

お前はまたそうやって面倒にこじつじつけてあいつから逃げるのか?
自身が問う。

手放す事などできないのだと。
何時しか心が言う。

めんどくせー。あーめんどくせーもん………。
だが、それが欲しかった。さっきまでの死にそうな憂鬱が吹っ飛ぶ程のショックだった。
自分は何つ−……馬鹿げた人間だったのかと言う事に今気付く。
だがそれが嬉しかった。

もう何も偽る事のないそれが嬉しかった。
明日笠井にあったら間違い無く言える。あのセリフを。




部屋に帰っても寝つけなかった。
さっき握った手の温もりを努めて忘れないようにする事が、眠りをさまたげている事も判っていたが。


とうとう…嫌われたかな。
貴方の事だから、きっと知っているんだろうね。
いつだって俺のやる事なんて全てお見通しって顏して。


「三上先輩。」


誠二が寝てるのを良い事に、小さく声に出して呟いてみる。
それは呪文の様に何度も何度も繰り替えした。勇気の名前。


こんな風に手に入れたって。失う時が来る事位、もうわかっていた。
それでも良かった。
それでも良かったんだ。ほんの半年でも3日でも1日でもいい。
あなたが隣に居てさえくれれば。後の事なんてしったこっちゃなかった。
どんな結果が待っていようとそれを承知で選んだのは自分なのだから。


なのに。
涙が止まらない。


あなたを失う事が何より恐ろしい。


もしもそんな日が来ても。
生きていられるだろうか?
これからずっと僕は一人で・・・・。


思ったより枕は濡れていて、手探りで引っ張りだしたタオルでまいてから頭をのせた。
ひとしきり泣いてから、誠二の存在を思い出して、実は狸寝入りなんてしてないだろうな。なんて思ったが、そんな心配は無さそうだった。
いつまでも目を開けてると、また込み上げて来るものを感じてこれ以上、悲観的になる前に堅く目をつぶる。
泣いたせいで強烈な睡魔に襲われて、そのまま意識を失った。


目が覚めると、


一番初めに枕に敷いてあったタオルのがらに驚いた。
これ……。
それは前に三上先輩が忘れていった物で。


こんな所まで…俺は先輩が良いのか。なんて。
本当ににバカだなと苦笑いが漏れた。


切ない。




食堂へは行かなかった。9時をまわっていた事もあって。荷作りにかこつけて誠二を追っ払い…というより自分からキャプテンの部屋に飛んで行った様にも見えたが。
一人で、遅い朝…いや早い昼食を取る。


あいたくないな。
三上先輩に。
昨日、渋沢先輩が何を話したかは知らないけど。
見当の付く所だって、ろくな話じゃないのは確かだ。


昨日と同じようにあえるだろうか。


部屋の真ん中で、取りあえずまとめた2年生分の荷物にコテンと頭を乗せる。
…それとも夕べ自分がさんざん浸って泣いた…結末が待っているだろうか。


はあ・・・。重いため息。
夜は良い。泣いて眠れば忘れるから。
でも朝は。何もかもが現実。自分をかわいそがっては生きられない。
逃げ場なんてない。


・・・・重い目蓋が落ちて来る。どう考えたって目は腫れていた。




「おいっ」
「っ??」
揺さぶられて目を開けた。
あれ・・・俺、寝てた?
マットレスだけになった俺のべットに腰掛けて、煙草を吹かす三上先輩。
「あ…どうしたんです?」
寝ぼけながら言葉をつぐむ。
「バカップルに追い出されたんだよ。」
「え?ああ、・・はあ?」
びしっとデコピンが返って来る。そういえばと時計を見ると、12時前だ。
「何だ俺に合いに来てくれたんじゃないんですか?」
痛いな。といつもの調子でちゃらけ返した。
「それにカップルて誰の?渋沢先輩に彼・・」
「・・・・・。お前マジでしらねーんだな。」
低い声が肩でククッと笑う。
「!?、・・・何時から!!?」
「お前がフツーに話し掛けてくっから、変だと思ってけどよ」
「お前が渋沢と寝た日。」
3日も前?
手の震えに気付いたけど止められなかった。
「誠二は何も・・・」
「ばれてんだろ。あいつ犬ッコロだぜ?」
鼻がいい。
「何で・・教えてくれなかったんです?」
「ショック?。」
「三上先輩は平気なんですか?」
「俺は藤代何かとヤッってねーもん。」
そりゃね。先輩はいつも命令してばっかで、働いてたのは俺だけど。
「そーじゃなくてっ。」



全然ヘ−キ。
それ所かな、
「つーか俺さア。」



こんな茶番はとっくに終わってたんだ。と自嘲して。


「負けマシタ。」しかもダブルで。
と両手を上げて降参のポーズを取ってみせる。


自分がどんな顔してるかなんて気付かなかった。
「おい、なんつー面だそれは!失礼だぞ。」
泣く程嫌かよ。
「ちっとは年上に気を使え!」
人の気も知らないでっ何言って・・。
「・…う・・つ・っ・・・」
声を出してるつもりは無かったのに。
気付けば、かなり困った。という感じの先輩の顔が近くにあって。
ポンと頭を叩かれる。
自分から抱き着いてしまった。
きつく回る腕が嬉しくて、さらに強く抱き返す。
涙と一緒に言葉が溢れた。
「三上先輩、・・・1年の頃から・・好きでした。」っていっ・・
一世一代の告白の最中に鼻をかまされる。痛いな!!
と言ーか。驚いてよ!!
あ。何?そこにいたのは悪魔の微笑み(デビルスマイル)をかます。
いつもの三上亮。
「っ・・・」
満足そうに人の鼻の頭を拭ってから、視線を絡まして
どちらともなく口付けた。
息が上がる程くっつきあって、ようやっと離れる。
「っ・・・」
じゅ液が透明な糸を引いた。 
 
目の前の真直ぐに見据える彼の視線に自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
「あの…」
優しい笑みだった。
頭を引き寄せられて、その片に軽く顏を埋める。


「じゃー、お前の負けじゃん。」
せっかくと言う時に声がする。
はっとして顔をあげると復活した三上亮がいたが。
「じゃー罰ゲームだね。」
と言う口調は穏やかだった。


もう一度重なる唇。今度は放さずに、二人してそのまま三上の腰かけていた
ベットに転がった。






小一時間後
「な〜たっくみ〜」
と上機嫌で戸を開けた藤代が、何も言わずにパタンと扉を閉めると。
「俺だって!」
と呟いて、三上の部屋に逆戻りして行ったと言う。


「ああ、悪い藤代。今日布団干してしまったから。」
「キャプテン!いいっスよ床だって。俺女の子じゃな……」
ムキになって言い返した藤代に、
笑顔の渋沢。
「飯。食いにいこうか。」
「は〜〜い」


あ〜ずるいな竹巳の奴。と
膨れながら、先をいく渋沢に一歩追い付いて並んで歩いた。




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