that gone away
日の名残のボツった方。どれだけ意味不明な物になってるか…(ーー;全く責任が取れないです…スイマセン;
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「あーちっと監督見えないんスけど。」


6年もこう親より長く同じ顔を合わせていると

こんな事も、稀には起きてしまう。事もアル…


言ってからはっとなるものの、忌々しげな背中がちらっとこちらを振り向くと、

それでも黙って、ほんの数センチ位置を替えていた。

「お父さん、それじゃ見えないわよ。」

通りすがりの真理子に苦笑されて、ご機嫌メーターは更に低下位一杯一杯。

結局、さり気なくを装っては居たが、TVまでの視路は完璧に塞がれてしまったのだった。




だから、ちょっとでいいからあそこに居てくれって頼んだのに…



「あら、ちゃんといましたよ、竜っちゃんが帰って来るまでわね」
「だってクッキーこげちゃうから…」

キッチンの蛇口を締めながら不服そうな顔をする竜也の横で、何食わぬ顔でオーブンを開ける真理子。

嫌な予感を感じながら、コンビニへ走ったほんの数分後、帰って来たらこの有様だ。

オープン台の向こうの居間では、今まさにTVのリモコンをめぐって無言の婿姑(?)戦争が繰り広げられて居る最中で。

今さらどの面下げて出て行けと言うのか…


「あの二人、何か似てなあい?」

と耳元で笑う真理子に眉をしかめる。

「母さん、」

全く、だから見ててといったのに…言いたいのをぐっと堪えていれば、

「そう思わない?」と竜也の眉間の皺を指で直してみたり…

「似てる分けないだろう!」

とちょっとムキになってその手を軽く払い除けようとする彼に、含み笑いをもらしていた。

それから、はいコレv

と、皿に盛られた焼き立ての菓子を手渡され、

結局渋々居間へと出て行く竜也。




「ああ、ただいま…」

「よー、遅かったじゃん」

取りあえず、自分の客の三上へと挨拶をして、ソファーの横に並ぶと、

テーブルの上に置いた菓子をすすめる。

「どーも、お構いなく。」と嘘ぶいた口に一つ突っ込むと自分も一つ頬張り、

視線を合わせてクスリと笑みを浮かべた顔と…どちらともなく近付いたそれが重なる前に…、

はっと、再びTVの前の誰かさんへと2人して逆戻り。


確かに背を向けている桐原。

だが、

感じた気配は気のせいだろうか…


しかしなんだって、休みの日までこんなぶっちょうヅラと…。


『明日、母さんの誕生日なんだけど、お前にも来て欲しいって。』


一瞬でも、お宅訪問か?まで思い付いたのなら、

もう一人の親の存在を

どーしてあの時。気付いておかなかったのか…

くそ。


その糸の張った様な沈黙を中、鳴り響く電話の音。

まさかとは思っていたけど

こちらを向いて「上へ行こう…」と言いかけた竜也が、呼ばれたのだった。


高校3年の冬。

多分俺達は、ずっと順調だった。

卒業した後の事をちらほら考えながらも、

今の生活がそう変わるとは思えずに。

1年、2年…3年…

その先へ続く生活を顕著に思い浮かべて弱気になる程、年も食っていなかったし、

ただ何となく、この先もずっと隣に居るのだろうと、信じていた。



それは、真理子が玄関のチャイムに、場を開けた時の事。

電話を取りに行ったあいつは、まだ帰って来ずに。

居間にはまたじじいと俺の2人きりだった。


「三上。」


背中を向けたままの声。

「はい、」

・・・・・。

「竜也とは随分…親しいそうだな?」

「はい…」

暗くなったTVの画面に映った彼の顔が、一瞬引きつりそうになってるのを見て、

「付き合ってるのか?」等とは口が裂けても言えなかったのであろう、そのらしさに。

気まずいながら、含み笑いを堪えていた。

…が、


「なら、…あいつの将来の事も聞いているのか?」

「…将来?…ええ、まあ…」

「じゃあ、考えて、付き合っているんだな?」

その口調は重かった。厳しいと言うより。俺を伺うような…

考えて?

「…まあ、お前達はまだ若い。色々な経験をするのも悪いとは言わん。」


「だが覚悟は…いつでもしておいた方が良い。」

なんて事ない言葉の様に聞こえた、その言葉の意味が判らずに、

テーブルの端を見つめていた視線をゆっくりとその背中へと移していた。

同性愛が、世界を舞台にする者に取って、致命的なスキャンダルな事は誰でも知っている。

もっと辛辣な言葉が来るかと思いきや、彼らしくも無い意外に…だが、

…?

「別に別れるって決まってる訳じゃないすから…」

むっとしながら言い返した。せめてもの反抗のつもりで。だが


「それは裏切られなければの話しだ、三上…」


そう言ってその時肩ごしに振り向いた顔。

「私は一応、これでもあいつの親であるからな。」

それは静かな警告だった。

『お前と一緒にするな。』心の中で言い返す言葉が震えていた。

怒りではない。それは何だったのか…。


俺は今でも忘れない。その時肩ごしに振り向いた…奴を。

憎まれている…

初めてそれを知った。












「先生。」

それは夕暮れだったか、日暮れだったか、

教室の机に肘をつきながら、時間が立つのも忘れてつい見入っていたプリント原稿から、自分を呼んだ声にふと顔を上げる。

「これ、お願いします。」

と自分の横から日記を差し出したのは、自分が受け持つこのクラスの生徒で。

真面目で…真面目だけどちょっと目立つ。

水野、…水野タツヤ。

「おお…」

この春から自分がコーチをまかされているサッカー部の部員だった。

受け取った日誌にざっと目を通すと、簡単なサインをして彼へと渡す。

夕焼けが真正面のビルに隠れると、辺りはあっと言う間に暗くなった。

「電気、付けましょうか?」

「や、いい。つーか、コレも一緒に俺の机、置いといて、」とついでの用事を頼むと、日記と重ねて手渡した。


が、


「・・・・。」

自分の横に立ったままその影は動かない。

机と日記を往復しただけで、一度も自分に顔を上げなかった教師を静かに見つめていた。

「先生、」

「ん?」

だが返事だけで教師は顔を上げようとはしない。

それでも彼が次の言葉を紡ぐ気配は無かった。

ただ黙ってそこに居る。…沈黙が

不自然になりそうなのを感じて、ペンを止める。

そして、暫しの後、自分の横へと立ち尽くすその姿へと振り向いた。

「どーした?」

見上げたそこには。

栗色の地髪、そして大きな下り目と細いつり眉が真面目…否睨み…とも付かない顔で。

じっと自分を凝視していた。


生意気な面だな。

初めてみた時から、そう思っていた。

昔、誰かにそう思って居たのと同じ様に…




結局何が原因で別れたのか、今となってはもう、虚ろだったけど。

あいつが結婚すると言い出した日だけは、今も脳裏に焼き付いて、離れなかった。

「へー…おめでとう。」

「ありがとう」

そう言ったあいつの顔は寂しそうで、

こんと額を小突いた俺の拳を掴んで、笑って居た。

それが最後だった。


あいつの子供が生き残って居たのを知ったのは

葬式から、5年も立ってからだった。

嫁方の親戚を回されながら、母親の再婚を期に別居を決めて。

今の水野に落ち着いたのはやっと2年前の話だったらしい。


何故、あの時…もうそんな事は、ずっと考えない様にして来た。

今さら何を言っても、

…俺はきっと…あの日の呪いに負けたのだと。

それだけがはっきりしていた。



ここへ赴任して来て二ヶ月。

母校…武蔵森学園。

桐原監督の他界を期に、別の有名私立の教員職に納まっていた自分へと舞い込んで来た、急な話。

もう2度と戻る事は無いだろうと思っていたこの教室に、

何故自分が座っているのか、二ヶ月立った今も、考えれば考える程解釈等付かない。

引いて言うなら、その名の引力とも言うべきか…



「住所変わったんで、その届けです。」

「おう、御苦労さん。」

と彼が差し出したのは…古い、一枚の封筒だった。

思わずその顔を見上げれば

何とも言えない複雑な顔が、自分を見ていた。

『…父親そっくりだぜ、…おい。』

あえて言わずに来たそれを、だが言ってしまうとすんなり胸に染み込んだその語録に、低く笑った。

まるで生き写しの様なその瞳は、

あの頃の彼がそのまま時を止めた様にも思えた。



「処理しとくから、もう行っていいぜ。」

見ていられなくなって、早々と視線を下した机の上にすっと伸びた指。

「!?」

驚く自分をよそに、ゆっくりとその封筒を俺の前へと差し出した。

「三上先生」

「何だ?」

「…俺は約束、守りますから…」

「は!?」

そう言って困りながらも、軽く微笑むと、彼はその封に静かに開け。文書を俺にと差し出した。


それは、いつか自分があいつに手渡した。

クリスマスカードと指輪…。

ではなく、

まったく同じ様式であしらった。

あいつから俺へのメッセージだった。

古くなって黄ばんだ、けれど四つ角のきちんとしたその様は、何より筆跡が

あいつが残した物に間違い無いと、告げていたのだ。

よくあるカードのコピーを真似た数行の簡単な英文字。暗号なのか、言葉なのか

TO AKIRA

FORYOU TATUYA …

全部読まないウチに、唇へと落ちた温もり。

驚いて顔をあげれば、

気まずそうに口元を抑えて赤くなるその姿。

呆然と驚きを隠せないまま、名を呼べば…

しっくりと首に抱き着いて来る身体を、抱き返していた。

見た目より遥かに細い身立てに驚きながら…

と…一瞬感じた柔らかな感触。

三度の驚きにその肩を掴んで引き離せば…

照れたような困ったような顔が自分を見ていた。

「・・・・ちっと良い?」

恐る恐る胸に当てた手には、やや手にあまる…膨らみ?が、



「じゃ、まず転校から初めっか?」

「いえ、引っ越しからで結構です。」


「・・・・。」


可愛く、ねぇ…


思いながらも、あいつのようであいつでは無いその身体を

もう一度強く抱き締めた。







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駄作続きで申し訳ないです…次はきっと…(涙









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