こんなの九州弁じゃない!とかは勘弁して下さい。(苦笑)

「なあ、所であいつなんつーんだ?」

「あいつって?」

すっかり食べ終ったラーメンのカップを重ね、ひと息ついた昭栄が言い出した。

「ほら、さっきお前と一緒に歩いとったあの茶パツ。」

「茶パツ〜?」

そんなこと言われても、茶パツなんて東選には腐る程いるしなあ…とどもる風祭。

「さっきも夕飯一緒やった奴。」

「あー鳴海?」

「そーそーあの美人なんてゆーと?」

「びっ……」

思わず鳥肌の立つ風祭。

いや、鳴海じゃ無いとすると…。

「水野君かな?」

まず思い付く順から美人を上げてみる。

「んなこと聞かれても、聞いてんとは俺かてってば。」

ご、ごめーん。苦汗たらたら。

ほれ、真ん中で分けとる。タレ目のにーちゃん。

「ああ、やっぱり水野君だよ!」

「ふ〜ん。水野ね。」

下は?

「水野君がどーかした?」

「いや、ちっと。どうって事ねけど。」

「偵察?」

「う〜〜ん。」と笑顔。

まあ、そげんとこかね。

さあ、始めっぞ、

ざっと昭栄が立ち上がる。

「え?」

「まあ、ちーとばっかいした礼や、お前の練習に付き合ってやっから。」

「−−−!!うん。ありがとう。」

「その変わり、後でもうちーとばっかいあいつの事教えてな」

あ、う…。「わかった…。」

苦笑の裏であっさり水野を売った風祭。これは絶対に秘密にしてねと。昭栄に念を押す。

「わかっとるって!お前は心友だけんな。」




「よー。」

「あ、カズさん。」

ロビーでたまたま落合う。

「お前今、東京のチビといたな」

うっと、ひるむ昭栄。さすがに目ざといな−この人。敵にまわすとバリやっかいやわ。

ぎゅう〜〜と下から肩にまわされた腕で締め付けて来る。


「余計な事いってねじゃろな」
「そりゃねっすよ」
「聞いた事全部話しな。」

「あー、慌てねっせえもわかってるって! 」


「で、あいつ……」

口を開きかけたカズの視線が右から左へ…昭栄の後ろを通った何かを追っていた。

ちらっと後ろを煽るとその後ろ姿を見る。

お。

すっと通り過ぎて行ったのは水野だった。そそくさと携帯を持ちながら、電波の届く窓際へ歩いて行った。

「あいつ…名前は?」
「水野ってさ。」
「ふ〜ん」

「つーか。何で、お前がしってんばんた。」
「・・・・・。」笑ってごまかす。


「で、どがん奴や」
「さあ、そこまでは、」

「ふ〜ん。」

「カズさんのタイプやったりして」

「うおっ。」ぼすっと昭栄のみぞおちに拳を食らわすと、顔をガンガンにみながら口の端しを上げる。
「ぬかせっ。 ま−まーだけど、俺の趣味じゃね。」

「そオすか〜〜?」
フンと鼻を鳴らすと。 「アホか。ゆーてろ。」と部屋の方に…は戻らずにロビーの方向へ、

カズと昭栄は一緒に足を踏み出した。


「何してんじゃお前?」
「自販行こう思って」
「あっそ?」
「カズさんこそどけ行くんすか?」
「俺は便所」

そりゃ真逆だっつーの。

しらっとしながら、廊下をぬけ、受付の前を通り、自販と公衆電話の並ぶロビーへと出る。たまにぶつかる肘で、どことなく牽制しあってるようにも、見えなくも無い。

「おい。お前、どこまでついてくるんじゃ?」
「カズさんこそ」

とか言いながら、ふいに功刀の足が止まる。一息置くと見つけた、とばかりにくっと唇で笑む。
つられて昭栄も振り返った。


「よお、にーちゃん。」


二人同時に声が揃った。
ぎっと一瞬にらみ合い、またぱっと向こうに顔を向けた。


視線の先には、出窓の所で、今ケータイを切ったばかりの水野が唖然として固まっていた。
こいつ確かさっき風祭といた……九州選抜。
「何か、用ですか?」
ちょっと顔が険しくなる。


「どうも、こんばんわ〜。」
「何じゃ?おかんと電話か?。」
「あんた風君の友達やろ?」
「あんた東京選抜やろ?渋沢おったな」


ふたり、交互に喋る。しかもばらばら。

「あの。」

「何じゃ?」

やっぱり重なる。

突然現れた威勢のいい2人組。…しかも突然の不躾な質問攻めに、気分を害しかけた水野が、さらに細い眉をしかめる。

『ほ〜お。怒った顔も中々……』
睨んでるって言うのに、またもやくわっと食い入るように顔を覗いてくる二人に、完全に押され気味の水野。

「だから、何だよ。」

「別に。な」「あんた美人だな〜。」
言いかけた功刀のセリフを昭栄の声がさえぎった。


と思ったら、とたん。昭栄が腹を抱えて後ろへよろめく。素早く体の脇で行なわれた一瞬の出来事だったが、功刀の肘鉄が昭栄にめり込んだのが水野にもわかった。

何なんだこいつらは・・・・。

やっと、自分の土台を取り戻したぜ…。と言う感じの功刀が
気を取り戻し不審顔の水野にフフんと笑ってみせる。

「別に用はね。」
「渋沢に会ったら伝えとけ。功刀一がよろしゅうち言ってたってな。」

そう言いながら、水野へと伸びた手ががしっとその顎を掴む。

な、ちょっ……。

嫌〜な予感をしてそうな水野の焦った顔を見て余計に、面白いと言いたげな顔をして来る。

こいつ…マジで何なんだ!!…。自分より目線一つ小さい体の癖に
凄い握力。それにこの威圧感。飲まれないように自分の瞳にも力を入れる。

「明日。楽しみにしててやるけん。」

角度を変えて、隅からすみまでその顔を眺めると。
振り払おうとした水野の腕が届く前に、忍び笑いを残しぱっと離れて行く。

くるっと後ろを向いて歩き出した功刀と、それを睨んでいた水野の視界の間にぱっと昭栄が割り込んだ。今とは視線の高さが優に20センチは違いそうな大男。一瞬身構えた水野に淀む事無くづかづか距離を縮めて来て、

「そんじゃ、お休みさ〜ん」

とポンポンと頭を撫でてから、あきらかにあっけ。
になっている水野の顏を見てにひっと笑うと、こちらの様子をちらっと睨んでいる功刀の後を追って行った。


・・・・・。

ひとりロビーに残された水野は、

あいつら……。
わなわなと、腹ほ底から怒りが湧いて。持っていたケータイを強く握りしめた時。

着信音が鳴り響いた。

「おい、テメ−なにやってんだよ。全然繋がらねーじゃねーか。お前からかけるっつっときながらよ〜」
「今、それ所じゃなかったんだよ。」
電話の相手はやっぱりと言うか…三上氏だった。

「何〜何かあったのか〜?」

その、ちっとも心配のかけらも見えない御気楽な声に肩の力が抜ける。

「なんでもない。もうすんだから。」
「あっそう。な〜お前、いま福岡だろ。あれ、なんつった?……おい近藤〜〜〜」
「何?」
「お〜あれあれ、土産にウイロウ買ってきてくんね〜。つーか買って来い。」
「…………。」
「おい、聞いてんのか?」
「ウイローは名古屋だけど」

「は?東京駅で買ってくりゃいんだよ。」

迷わず。終了ボタンを押していた。

なんで俺はあんなのと付き合ってるんだ………。

くっと頭をもたげる。

響くメ〜ルの着信音。渋々チェックを入れれば、

『テメ−ふざけんな!(゚Д゚)−:早く帰って来い!!』

の文字。

ふっと笑いがもれる。今日久々に笑った気がした。
そーえばあいつ。甘いものダメなんじゃ無いのか?

ちょっと考えてから、今度は自分から通話を押した。






「カズさん。あげなことして、結構気〜あるんやねすか?」
「逝きたいか?」
「すなおじゃねなあ……」
 苦笑い。
「アホかお前。顔が良けたらえぇって言ぅもんじゃねえ」
「そりゃよかった。じゃ、俺がもらっときますたい。よかですやね?」

「・・・・。」


エレベーターの戸が開く。
「あーー俺のコンタクト!!カズさん、そりゃひじじゃねすか!!」




 

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