相思想思--水野編--

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自信家でワガママで口が悪くて、その癖傷付き易くて。

一見余裕で、意地悪で通しながら、意外に面倒見は良くて。

そ−言う事に無頓着に見えながら、裏ではちゃんと自分の居場所や環境を上手く心地良いようにコントロールしてる。

激しいエリート意識の持ち主かと思えば、返って目立つ事は好まなかったり。

自分の利になる人間とは、心の中で見下しながらもちゃんと付き合っていられるし。

いつも人の一歩後に下がって全体図を眺めながらニヒルに構えているような。

あれもある意味絵に描いたような数学人間。(不破は化学的)

悪く言えば…典型的。なのに何が凄いかと言えば。

それをすべて極自然に空気の流れの様に事を運ぶ事。

誰も気付かない内にきちんとあいつの都合の良い流れになっている。

…まれに暴走してそれが表面化すると(桐原事件)いかに普段水面下で怖い事をやっているかが良く解る・・・。

感情に飲まれさえしなければ、計算し尽くされたあいつの行動や計画は常に完璧。


本当に、嫌な奴。


弱味を見せるのも。

甘えて来るのも。

人間くささも

もしかしたら全部計算…。

そんな事まであいつに出来るわけないだろ…と思いながら。

なんて思わせる程。一度親しくなると簡単に両手を広げて、肩を抱いてくるのに。自分の肩には決して触らせない。

馴れ馴れしさは人と一線を隔して付き合っている裏返しの証拠。

例えればそんな感じ。

口も性格も悪いけど。実はナイーブでかなりの努力家。つーか実はいー奴。

だと周りが思い込んでいる事をあいつは多分知っているのだ。

曝け出してる様に見せて、実はシゲとは全く別の意味での不正秘密主義。

人の何倍もナイーブだって事以外。2年付き合っててもまだあいつが何を考えているのか解らなくなる事が有る。



信じられなくなるとはこういう事なのだろうか…。

それでも側にいる時はこんな不安になる事は無かった気がする。

初めの頃は良い人だった。って言うまさにあの内弁慶どうりの奴で。

嫌味言ってるようで他人にはまだ(あれでも)ホントの所にはけして触れない様に気づかっているのに。

…それが面倒で、近しくはならないのかもしれないが。

親密になればなる程、竜也には辛辣な態度も見せる様になって居たのだった。

それでも引き寄せるその腕の暖かさが、逆にそれを否定している様に思えて。

余計に……惹かれて行った。


だけど。

それもこう離れていては確かめる術も無い。

手紙を出せば、その日の内に返って来るメールが。短くてもあいつがまだ自分に冷めていない事を告げていたが。



・・・こんな所で悩んでいたって、何の答えも出るはずが無いのは分かって居た。


ただ…会いたかった。

本当は、ただそれだけだった。

こんな事で煩わされてる場合じゃ無いのに。と少しの苛立ちと…けれどそれ以上は

思うと辛くなりそうで、今日も又ただ黙って目を閉じるのだった。




「!!・・・・・。」

夜中にぱちっと目が冷めて、つい身を起こしかけたが。目覚まし時計を確認すると、まだ残っている感触を失わない内にもう一度布団へ潜ると枕に顔を埋めた。

リアルだった唇の感触を賢明に思い出そうと目を閉じる。

久しぶりに三上の出て来る夢を見て。

惜しい所で目が覚めた。

あいつの、驚いた顔。

現実じゃリードされるのはいつも自分の方だから中々見れないし。

あんな顔。

思わず思い出し過ぎて笑いがもれた。

最近気づくと日記の様に手紙にペンを走らせている。

出せば必ず着いたその日に帰って来るメールを思うと、いけないと思って留まりながらも結局出してしまう。

あいつに会えないのが寂しいなんて…感じる様になるなんて。

寝ぼけていたからだろうか、今は思い出しても辛くはなかった。

・・・・。

寂しい?

口にしまいとして来た単語が、ついにぽろっと口をついて出てしまった事に、今自分でも驚いて居た。

そして笑ってしまう。結局、深層には逆らえないって事か。

寂しいか・・・。




「ミズノ、電話が入ってるぞ。」

夕食の後、食堂で寮生に呼び止められて足をとめる。

「俺に?」

たまたまケータイを部屋において来ていたのだが…そんなに急用なのか?

「誰からだ?」

呼びに来たクラスメートと共に公衆電話へと向かう。切迫した感じの竜也とは裏腹に彼の呑気な態度から、急ぎの用では無いのを知る。

「えーっと、フジなんとか。とにかく酷いアメリカ英語だったからな。お前の日本の知り合いじゃ無いか?」

「…そうか。」

フジムラ?

フジシロ?

軽くお礼を行って彼から受話器を受け取る。

「もしもし。---!?藤代?」

向こうからは元気な声。

「そーー!俺俺、久しぶり−−!!今ケータイつながんなくてさー。ごめんなー。」

「ああ、…それで。」

今!!?…ああ。

判っ…た。じゃあ北口の所で待っててくれ。北?ああアイスクリーム屋が有る方。

無い?

お前今何処に……。ああ、そうか、じゃあ…。


電話を切ってすぐに受け付けに駆け込む。

使った事のない単語をつなぎ合わせて、何とか寮長に外出許可をもらうと制服のまま門を飛び出した。



「おーーい。水野ーーーー!!!!」

こっちが探すより早く向こうに見つけられる。

懐かしい3人の顔ぶれ。…懐かしいと言ってもホームメートでも無いのに。

それでも懐かしかった。

手を振る藤代と、その付き添いの渋沢と。その横で今にも藤代を蹴り殺しそうな三上の姿。

「すまないな水野。」

近付くと挨拶より先にそう口を開いたのは渋沢。もう苦笑いしか出て来ない。

「いえ。お久しぶりです。」

「ああ、久しぶり。」

「元気そうじゃん!」ともっと元気そうなフジシロにポンポンと腕を叩かれ。

そして、

二人の一番奥で腕を組んでた奴と目が会った。

「よお。」

「ああ。」と言って軽く微笑む。

「お久しぶり」

「そうだな。」

近くに来て竜也の隣に並ぶと、渋沢達の方へと振り返る。

「んじゃ荷物よろしく。」

「ええ−ー−−!!!!もうすか?ずるいっすよ三上セ・・・」

「ああ。じゃ先に行ってるから。2,3日いるつもりなんだ。水野、またな。」

と言って、後ろからパコーんと三上に殴られ文句を垂れそうな藤代を静止ながら、

渋沢が説明する。

「あ…はい。」

急にどうしたんですか?とかそんな会話をする暇も無く。ごく簡潔な再会を済ませて、去って行く2人を竜也は唖然と見送って居た。

振り向いて手を振る藤代にかろうじて返す。

「・・・・・。」




あ、今空港にいんだけど迎えに来てくんねーかな?

と電話を受けてからわずか1時間。


横を向けば。三上亮。

変わって無いのに。変わった。背も伸びてるし。大人びたし。

いつもの様な意地悪な微笑は無かった。

真面目な顔でこちらを見ている視線に。顔を見ながら中々声が出ない。

「・・・どうしたんだ?」

「は?遊び来たんだけど?」

そんな愚問を今さらするなと頭の中が言うのに、上手く会話にならない。

ぎこちない空気が流れる。

会いに来てくれた。

こいつが俺に。

「ありがとう。」と言わなければ、そして…

けれど身体が動かない。どうしていいのか判らないのは向こうも同じ様だった。

「三上…。」

暫く言い淀んでから、決したように竜也が顔を上げた時。

何時の間にか背中に回って居た腕に引き寄せられて。

気付くと見覚えのある腕の中。そのまま抱き締められた。

ここは空港。しかも夜中の。

行き交うビジネスマンがちらちらと2人を見て行くが。

ここはフランス。

そう。

どうせフランス。

驚きながらも迷わず竜也もその背に腕を回す。

髪を撫でる手に目を閉じた。

変わらない。懐かしい匂いと温度は何も。

「?」

首筋に顔を埋めていた三上に何か囁かれる。

その顔を見ようととっさに横を向いたが、きつく抱き込まれてそれは許されなかった。

ただ。

「・・・俺もだよ。」

と彼の肩口に頬を寄せながらそう呟いた。



ずっと。会いたかったと。






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(イーヤー−)なんて事に。なんてベッタベタに。自分で書いててどうしようかと思いました。
手、抜きすぎ…ああ(ーー;)










































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