胸裏
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「あ、ごめん功兄、起こしちゃった?」
「んーーー、何やってんだ?」
日曜の朝八時半から鳴り響く掃除機の音に耐え切れず、部屋の引き戸から顔を出すと。朝食もとらないウチから掃除に精を出す将の姿が会った。
「お前、テスト前なんだろ?んなことしなくて良いからゆっくりしてろよ。」
欠伸まじりにそう言いながら、結局寝巻きのまま居間へと出て来て、ソファーにどかっと沈んだ。
この音じゃ今さら寝直すのもなあ…
と止める様子のない将に溜め息を付くと、新聞に手を伸ばす。
「ここんトコかけて無かったから、今日人来るし。」学校の部活は休みでも、選抜の練習はそうは行かない。
中二と言う身分でありながらある意味自分より忙しい彼に「ご苦労様〜」と感嘆を漏らしながら
耳に入ったセリフにふと気付く。
「人?友達か?」
「うん。今日ウチで勉強会なんだ。ここ使っても良い?」
「おう、そりゃかまわねーけど…。どーせ今日は夜まで呼び出し無いし。」
一つ返事でそう返した功に、はたと掃除機を止めて将がこちらを向いた。
「じゃあ、功兄今日家庭教師してよ!」
「…っか、」思わず飲みかけて居た水にむせ返り。
「俺が?」と聞き返そうとそちらを見れば、
きらきらした目でこちらへ駆け寄って来る将が居たのだった。
あーやったやった。二次方程式な。
取りあえず取り出した眼鏡をかけると、教科書をパラパラとめくる。
うん。
椅子と机を離れて何年…だったか、自分でもあまり考えたく無いが、
取りあえず。
この位なら聞かれても大丈夫。と確認してほっと一息。
ここで恥をかいたら元優等生のメンツが…いや将だって嫌だろうし。
などと考えてる彼の横から
「功兄、はいコーヒー。」
やけに嬉しそうな将の声が響いて、笑顔で受け取りながら、内心苦笑。
「おーサンキュー。」
「で、今日何人くるんだ?」
「うん、午前中は水野君1人。家に工事が入るんだって。午後から高井君と…」
「シゲさんはわかんないし…最終的には4人位か…な?」「そうか…水野君ってあのお母さん美人な子だろ?。」
そう言いながら、あの茶色毛で切れ長のタレ目少年を思い浮かべる。それからあの若奥さんも…
「そう…って、」そうだよ、功兄…名詞渡したんだった。
と、とんだ記憶が甦って思わず下を向く将。水野君、忘れてくれてるといいんだけど…。
斜でコーヒーを飲みながら将の顔からそれを察した功も苦笑いしていた。
「おっし、一応完璧!」と功がパタンと数学の教科書を閉じたのと同時に鳴ったチャイムに、駆けて行く将。
「どうも、お邪魔します。」
暫くして入って来た、彼の少年を笑顔で迎える。
「おーいらっしゃい。」
「朝からすいません。」
「いや、理由は将から聞いてるよ。」どうぞ、と座ぶとんを進めると彼は「どうも」と言いながら功の斜横に座った。
「ごめん、テーブルまだ片してなくって。」
と後のキッチンから3人分のカップを並べる将の声。
いつも使ってるダイニングのテーブルは、昨日の皿や新聞、果ては畳んで無い洗濯物置き場とかしていて、「まあ、暫くは人少ないから」と居間に出した折り畳み式のテーブルに取りあえずスタンバる3人だった。
う〜〜ん。自分の時よりは幾らか進みの早い教科書を見ながら、くっと眼鏡を直した時に、偶然清楚な横顔が目の端に飛び込んで来た。
『この子、こんな…だっけ?』
水野…竜也君?だったっけな。
いつも見る試合の時はもっとこう、たくましいと言うか、鋭いと言うか、クールな男の子な印象が強かったのだが、
隣に座る彼は記憶よりずっとたおやかで、
『お母さん似だな』
と思いながらふと口元に笑みが漏れた。
ちょうどその時「あの…ここなんですけど」と言って顔を上げた竜也にちょっと焦ってから、
「おお、どれどれ」とシャーペンでさされた場所を覗き込むと…
彼からは何とも想像していなかった甘い香がして。
「・・・・。」この子…?
そんじゃあ、そろそろ昼にしようか。
始めにそう根を上げたのは功だった。それを声に、ふっと柔らかくなる部屋の空気。
「よかった…」
と言って机にうっぷした将に皆から笑いが漏れる。
「何が良い?」
もう、言わずと今日は作る気力などないと言いたげに、電話の横から功がメニューを持って来る。
「俺は、ここの中華が食いたいね。」
「功兄そこ配達やって無いよ。テイクアウトだって。」
その声にちらっと将を見る兄貴。
「…お、俺ははピザがいいな〜〜。」とゆっくりそっぽ向きながら「水野君は?」
と振る。
チラシをじっと見て居た竜也が、何とも気まずそうに顔を上げ、
「俺もここのチャーハンが…」と・・・。
5分後。2対1、て言うか…何でピザ食べたい僕が…と思いつつ。
功にお決まりのお願いをされて、マンションのエレベーターに乗り込む将だった。
「すいません、急に押し掛けたのにお昼まで。」「いいっていいって。」
まさか、功が家に居ると思わなかった竜也は正直苦笑い。
「んじゃ、俺は午後のタメのプリントでも作っておきますか。」
と再び眼鏡をかけた功に、竜也がちょっと反応した。
いい兄貴だな…。
と思う。
他がどうかは判らないが、この兄弟は一人っ子の竜也から見ても特別仲が良い内に入ると思った。
「…あいつ普段どう?君の事よく話すんだ。いつも…悪いね。」と笑いながらペンを走らす。
「俺の事?…そうですね。まあ、いつも通りですよ。」
少し考えていたが、その内クスっと笑ってそう言った竜也に功がちらっと視線をくれた。
「・・いつも通り!?…ね。」
笑う二人。
最も『あいつはそんなにどこでもドン臭いのか?』内心思ったりしたが。
『しかしいいなあ、この空気』などと思いながら、横でひと休みをとる整った顔を目にする。
元美少年と美少年。まあイケメン同士と言うのか、同じ世界に住む者同士のこのなんとも言えない判りあった空気が良い。
将とはまたちょっと違う気のあい方。
何と言うか…子供を相手にしてる時の気疲れが無い様な。楽な相手。
大人っぽいのかなあ…
何て考えながらつい見ていると、両手を後ろに付いて窓の外の景色をぼんやり眺めて居た竜也が、視線に気付いてこちらを向いた。
はた…と目が会うが、
特に慌てる事も無く、笑みを返すと向こうもちょっとはにかんだ。
あ…子供だ。
「水野君って、やっぱり彼女とかいるんだろ?」
「え?」
「その香水、ペアだろ。実は俺も同じの持ってるんだよ。貰い物だけどね。」
竜也はきょんとして、それからさも困ったと言う顔で微笑んだ。
「そんなんじゃないですよ。」
落ち着いた感じで、堂々と言葉を噤むが。
「そうかい?」
心の中では、なんだそーかと思いながらも。さっきの顔が脳裏に焼き付いてもう少し…
話してみたかった。
「本当?」
「本当ですよ。」
悪戯っぽく顔を覗き込む功にも負けない余裕。
「お母さんに似て美人だね。」
何でその時水商の端くれである自分がそんな事口走ったのか、いや、だからつい口ばしったのか。それを聞いた竜也の顔が一瞬強張るのが判った。
「ど…どうも。」
なんてごまかそうか考えるより先に出たのは、営業スマイル。
「それに、その香り、メンズじゃ無い方だろ?」
追い討ちをかける愚言を言いながらニコリと笑った彼に、対処の仕方が判らず、明らかに戸惑う竜也。
そこら変に凄むがさつな大人とはひと味違う功には、風祭の身内と言うもの意外にも、好感触を抱いて居た竜也は戸惑う。いつもは一サジだって違わず紳士な態度を崩さない彼だと言うのに…。
怪訝な顔をしながら、なんとか会話を続けようとした竜也に、何かが重なった。
何故?考えれば、考えても答えは出ずに。
誤算だったのは彼が逆らわなかった事か。
それとも将を使いに出してしまった事か。
「水野君、ちゃんと濡れんだね。経験あるの?」彼は答えないが強い抵抗もしない。
壁を背に体育座りから足を開かせ、自分はその前に膝立ちになり開かせた足の間に腕を入れる格好。
トランクスは脱がせないまま、隙間から差し入れた手をゆっくり肉の割れ目に挿入すると、俯いて居た頭を仰け反らせ、小さく声を上げた。
「いつもこんなに綺麗にしてるの?ここ。それとも今日は先約があった?」
ここまでする(洗う)のは大人だって結構大変なのに、こんな少年が…まして自分の弟と同い年の彼が、既に知っているとは。
それも、この子はマトモな…優等生だ。
幾らあんな仕事の自分と言え驚かない方が無理だった。
ゆっくりと内を広げて行く、中指、人指し指、薬指、狭く熱い彼の管は気持ちが良い。
「…っく…」
奥迄探りながら内壁を摩ると、嫌だと言う様に身体を揺らす。
苦痛を感じている様子は無かった。
本来の場所では無いのに、奥から沸いて来る体液がそれを物語って居たのだ。
関節の付け根迄差し込むと、暫くじっとしている。
今まで知った事のない関節の強張った指の感触が微妙だった。何も知らなくても、自然と竜也の性感を探り当てるのは、経験の巧みとしか言い様が無い。
「そろそろ平気?」口調はあくまで紳士。
返事は無いが、俯いた頭の下で微妙に呼吸が変わったのに気付くと、
一度3本指を先迄引き抜き、次の瞬間再び最奥まで打ち込んだ。
強い動作で幾度も繰り返す。
「ぃ……あ、っぁああ…あ…」
途端上がった声と同時に揺さぶられる体が逃れようと左右へと逃げ出す。
仰け反った拍子に幾度も壁に肩や頭をぶつけて…それでも逃げられないと判ると、自分を出入りする男の腕を両手で掴みにかかり爪を立てた。
「う・・っ……っく・・あ・ぁ」
「あーぁ…っ…ん・・くっん…う…」
必死で抗う。
その様が、もう随分長い事ただ無造作にその夜の女と体を重ねて来た自分に、何かを呼び起こさせる様だった。
はっとすると、手首に食い込む爪の跡に気付いて、仕方なく彼をせき止めて居た左手を外すと、
「ごめん、ごめん。これは商売道具だからさ。」
と、暴れる両手を掴み上げる。
「ん…あっぁ…あ・あーーあ」
「あーあ!…ぁっ・・ぅあ・・ああ・」
時折際立って高くなる声の抑揚が有った場所は一際強く突き上げる。
限界が近いのか、吐息が掠れて、嗚咽に言葉のような音が混ざる。
無意識なのか、自分の胸へと崩れ落ちて来た体がふさぎ込みながら、それでもまだ自分の与える刺激に耐えて居た。
苦しそうにもがく身体。
抵抗の止んだ手を放すと、自ら自分を探りに行こうとする。
その様子を苦笑いで見て居た功が、その手がそれを掴む前に前に握りしめた。
「うああ…あぁぁ!」
大きく斜に伏せいって、上半身がこてんとだるまの様に横へと沈む。
はあはあと荒い息の音。
引き抜いた自分の手には若い精気で濡れていて、何だかそれがとても可笑しく思えた。
「ほら、イッタ顔みせて。」
その声にぐったりとして居た頭が、ゆっくりと上がると同時に。
「功兄。こーにい!」
「兄貴っ!?」
ん?「ああ、…将?」
がばっと起きると、
目の前には、中華と、将と…あ、水野君。にどきっとしながら…それから…
二人の後ろから自分を覗く増えた来客の面々。
寝ぼけた頭をこんこんと叩きながら現状を思い出す。
「功兄、無理言ってごめんね。」
小声で将が話す。
そうか、考えれば今日は2時間しか寝てなかった事に思い付く。
「後、自分達でやるから」申し訳なさそうな顔でそう言われる。
「ああ、悪い、俺寝てたのか…」
髪を直しつつちょっとテレながら、再び襲って来る睡魔にまけて
「んじゃあ…お言葉に甘えて…」
と席を立つと、腕の下には作り掛けの数学プリント。
う〜〜ン。俺って。疑問は多々残ったが。
顔を上げた時、自分に軽く会釈した水野を見て。もう一度、アレが夢であった事を確認しながら、寝室へと歩き出したのだった。
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終。一度書いてみたかったのだ…。
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