ボーイミーツガール
(いつもだけど)いつもにまして奇怪な♀水野なってしまいました。
許せなくなった時はすぐにブラウザバックをお願いします;

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午後10時。

忘れ物を取りに戻った部室の電気は真っ暗で。


そおっと引いた扉に鍵がかかっていなかったのは

幸運だった…

『タツボン、鍵忘れたんかな?…』

珍しい事もある物だと忍び込んだ暗闇の中


突然目の前に浮かび上がったのは、真っ白い…

ーー!!

思わず息を飲んで…一瞬止まりかけた心臓。

だが、よく見れば、それは良く見知ったTシャツの、背中だったのだ。


「な、なんや!?」

「タツボン?…」

電気も付けず佇む不審な様子に、恐る恐る声をかけるが

返事は無い。



暗〜い部屋の中

こちらに背を向けたまま

微動だにしないその姿は本当に…


「…たつぼん?」


後ろからそっと近付いてその肩にポンと両手を触れた途端、

びくりっと跳ねた肩に、思わずシゲも驚いて両手を万歳…

だが、恐る恐る自分を振り向いた顔は

蒼白で、更に2倍

驚きをざるを得なかった…



「…・・シゲっ…」

自分の顏見るなり、大きく開かれた瞳…

だがすぐに色を取り戻してはいたけど、

何も言わない唇が微かに震えて居た。


それにしたって、悪い顔色…

「たつぼん…どないしたん!?」

嫌な予感を胸に抱きながら

「電気も付けんと、」とスイッチへ手を伸ばしたその瞬間

物凄い力で袖を掴まれた…一寸前に

ぱちん…と音を立てた蛍光灯が点灯したのだった。


あっけに取られるシゲのすぐ頭一個下には、凄い形相のまま

腕のシャツを鷲掴む竜也の横顔。


明るくなってしまった部屋の電気に動揺を隠せず、

掴んだ指をほどいて行くのにとても時間がかかって、居た…

滑り落ちた指と一緒に、そのまま背を返すと

こちらさえ向かず部室の奥へと行こうとする手をぐんと掴む。


「タツボン!どないしたん?」

「何でも…ない。」
「その…悪かったな」


早口であやまると

俯いたまま

とにかく早く自分の前からすり抜けたいと言わんばかりの

その態度に、

腕を掴む手に力を込める。

正直言えば、勿体ぶってる

いつもの坊ちゃん癖に見えなくもなかったけど…

しかし今日に限ってそうであれば楽だったと思える程

本当に、悪い顔色だったのだ。


「ホンマ…いい加減…」

所がその時

ぽつりと一つ足元の砂に垂れて来たそれに、

シゲはやっと、気付いたのだった。


それは、竜也の内股を通って

ハーパンの中へと続く

一筋の赤い…

否、一筋では無かった

良く見れば幾重にも伝った跡が肌に名残を残して


「・・・・」

驚きよりも先に目に飛び込んで来たのは


タツボンて…

こんな細かったか?


驚くシゲの横で、俯いたままの顔は堅く唇を噛んで居た。

「な…タツ…」

そう、半分言いかけた時、掴む腕の全ての静止を振り切る様にして

突然竜也が椅子へと崩れ落ちたのだ。

「タツボン!?」

腹をかかえて、うずくまる

目の前で丸まった背中。


「何処が痛いんっ!!?」




慌てて背を抱き起こそうとする奴にも

答える余裕等無かった

襲って来る波に幾度も眉を寄せて耐える…


それでも、きっとトイレの水に錆でも出たんだと

自分に言い聞かせながら

早く帰ってクスリでも飲めば

何事も無かった様に治まるのだと信じたかった。





何で

俺が

こんな事…



嫌だ、絶対に…




思いながら

失って行く意識の端で

目の前を真っ赤に染めたさっきの光景が

今でも目の前にちらついて居た。










その日、朝から

何となく気だるさを感じて居たのは

確かだったけど、熱も無く、食欲も別段

普段と変わった様子は無かった。

いつもの様に部活を終えて…

鍵を返しに職員室へ行った帰りに、

それは襲って来たのだった。


それはまるで腸がじわじわと溶けて行くような

かつて無い、痛み…

堪え切れず、廊下の柱の下にしゃがみ込んだ程…


盲腸?


だが、どうもそうとは思えないのは

手を当てると、恐ろしく熱を持った肋の下の臓器から

痛みが来てるのが明らかだったから


胃?

胃潰瘍?


まさか…


しかし、何の人通りも無いここで

いつまでもこうしてる訳にも行かず、かと言ってそう大声を出せるような痛みでも無く

ただ誰かに発見される事を祈るしか…


そう思いながら

どのくらいそうして居たのか…

ふと頭をあげると

さっきの痛みは何もかも嘘だった様に引いていたのだった。

ただ頬にも鎖骨にもびっしり掻いた汗が

嘘では無い事を物語っていた…

そしてかすかに下腹に残る名残のような疲れた痛み。


今のうちに…


思い立って部室に向かう途中、

遅れて襲って来たのは

今度はもっと別の痛み

慌てて駆け込んだ更衣室のトイレで

…竜也は

それを目にしたのだった。



幾ら経っても治まる事の無い流血

時間が経てば経つ程ポタポタと

水を赤く染めて行き

そしてその一連の全てが自分の身体の中からどろりと

抜け出て行く感触を、はっきりと感じていたのだった。


「…・・・・。」


誰かに…

断片に浮ぶ言葉…だが

ケータイは部室の机の上


意を決して、重く痛む腰をあげると、

身ぶりも構わず個室を飛び出し

2つ先のプレハブへ駆け込んだ途端


目に飛び込んで来たのは

充電切れの…



気の抜けた痛みに

ぺたんとそこに腕を付く

もはやこの痛みが引くまで何処へも行く気が起きなかった。

朝まで体力が持てば良いとか…

そんな事さえ頭をよぎって

とうとう下着から漏れて両足の間を生暖かく伝って来た物に

それ以上逆らう術も無く

瞳を閉じていた。



それからシゲが偶然ここへ戻って来たのは

1時間が過ぎた頃だった。









もしここで死んだら

俺はどうなるのか?


こんな事なら武蔵森にでも入って

さっさと「10番」とでも呼ばれておくべきだったかも知れない


まだ何も…してないのに


消化器系疾患はやはり遺伝するのか?

胃潰瘍?…

いやあんなに出血したんだから

癌…かも知れない…



混沌する意識の中で

自分を呼ぶ声や

荷台の音が、聞こえて居た。












目が覚めたのは

次の日の昼近くになってからだった。





窓から差し込む昼の光が

白い天上をクリーム色に染めていて

胸の上には木綿のシーツ。

微睡みの中、ふと頭を反らすと

飛び込んで来た白いカーテンに

ここが病院で有る事を知る。



「…たっちゃん?」

降って来た声に顔を向けるとそこには

「母さん…」

そして隣にはなんとも言えない顔のシゲ…

途端、夕べの記憶の全てが甦って来て

起き上がろうとした上半身を真理子の手の平で押し返された。

「俺は…?」

一体何に…

だが、何やらこ難しい顔で自分をじっと凝視するシゲに、

困った顔をしながら幾度も頬に手を当てる真理子…

どちらにしろ2人の顔に悲愴感はちっとも浮んでおらず


怪訝な顔をする竜也に

どちらが口を開こうか、目配せまでしていた。


「母さん、俺は…?」

「たっちゃん」


泣きそうとも取れる眉を寄せた顔に

ふっと何故かその時、苦笑い。

「大丈夫よ、命に別状は無いわ…」

しかし、言葉と一緒に心無し顔をそむけたシゲに、不安を露にする竜也の髪を

すっと優しい手が掻き揚げて

そして言葉を辿った。


「お母さんが、悪かったのよ…ごめんなさいね、竜也」

「?」

「何となくそうかな…とは思っていたんだけど。まさか本当にそうだとは思わなくって…」

「だから…何が!」

「たっちゃんの昨日の病気はね…」


「あれは初潮だったの…」


アレは初潮…





耳の奥で響いていた。

いっそこのまま死んだ方がましだったとさえ思った。

その瞬間、堪え切れずに笑い出したシゲの顔は多分一生忘れない…









受精時の性分化に疾患が有り、

しかも性別決定が生まれた時の外性器だけで判断された場合

ホルモンバランスの分泌が悪い子だと、

第二時成長期まで本人さえ気付かず育ってしまう例も、あるんです…


あるんです。


性の決定の一つは脳で行なわれますから

本人の思い込みや周りの環境と言うのも大きく関わって来ます

当然、仕方の無い事なんですが…


説明に来た医者は

自分を睨み付ける竜也の形相にひたすら耐えながら

用意されていたロジックを使って小一時間程喋って行った。




(ねーよ…)

あり得ない…







「あーもっとタツボンの着替え見とくんだったな…」

あれからの数日と言うもの

黙りこくったままガクランで登校する竜也の横で、

お構い無しにちゃかすシゲの姿。


それをもう睨む気すら失せていた。

このまま絶対に誰にも会わない場所へ行くしか無い

一体コレからどうやって生きて行けと言うのか…


死にたい…口には出さずも

眉間に浮ぶその影に

シゲはただ眉を寄せるだけ…

『まあ、嫌って程男らしく育てられてもーたみたいやし…』

判らない気がしないでも無いが

どうも…そこで終らそうとする彼の気は知れない。


「別にどっちでもいいんとちゃう?」

「なっ…」

「だから…タツボンのなりたい方になったらええんとちゃうの?…」


分かって無い。

激昂と言うより、呆れの方が強かったかも知れない。

月経の開始、それが何を意味してるのか。身体の変化は否応無しに現れて

今までの様にはもういかない…


「…だからな…女かて、男になる奴もおるし…」

あまりの他人事、だが、こいつは、そんなものかもしれないと…判っていながら

視線に侮蔑がこもるのを押さえ切れなかった。


だが、それを見返すシゲの視線も負けては居なかった。

「どっちだって、ええやん。」

「あまったら俺がもらったるて」


勢い任せに言われたセリフに、

一瞬呆然とした竜也の横をくっと嫌そうな顔を作ったシゲが通り過ぎて行く



決まったかな…

と思った瞬間



「…悪いけど…付き合ってる奴いるから」

聞こえた声に

肩ごしにはたと振り返れば

ちょっと照れて機嫌悪そうに、自分を見返す瞳

「男?女?…誰?」

「…男」


「ほな、問題無いやん…」

「まーな…」

それは…言いながら、赤くなった頬を振り切りながら自分の横を通り過ぎて行く

その姿を、

呆気にとられて見送りながら


『犯したろか!!』

と思わず拳を握りしめずにはいられない、彼だった。








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以前メンスものを…と言うリクを頂いて「経血パラフェリア」を書いた時にボツった方です
今回は…何となーく避難ゴーゴーを覚悟してだしました。気分の悪くなった方が居たら本当にごめんなさい(--;)
ちなみに今回のタツヤは必然的に両性具有(だった)と言う事になってしまいました…






Tさん
これでやっとメルの返事がだせます…
遅くなってすいませんでした(--;
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