+日の当たる場所へ+
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ここへ連れて来て、どのくらい時間が経ったのか、

水野竜也は、殆ど抵抗を見せなくなった。


その代わり、その声を聞く事も無くなって数時間…。


体を揺すると、それでも掠れた吐息だけがもれる。

時折混ざる無意識な細い嗚咽。

両手を片方づつ…ベットの柱に縛られたまま、大きく開いた股を三上へと投げ出して。

もうずっとこうして繋がったまま。

何度目かの微睡みに身を委ねていた。

涙の後はとっくに渇き、今は虚ろな瞳を空に漂わせている。

奴の中はもう溶け切っていて、ほんの少しも自分を拒みはしなかったが、

時折、痛みを訴える以外、何の反応も返しはせず。

全身で俺を拒絶していた。


頬にかかる栗毛の奥から除く瞳は何所までも堅い無表情。

上気して赤く色付いた頬とのギャップが、返って空しさを物語っていた。

暫くその顔を眺めてから水の飲もうと身を起こせば、

繋がった内壁が擦れて、再び水野が仰け反った。

「何感じてんの?」フンと鼻にかけて嘲笑う自分の声も、

ひどく掠れていた。



手探りでカーテンの向こうのテーブルの上から、水の入ったペットボトルを手にする。

蓋を開けて、口に運ぶ俺の仕草に水野がゆっくりと視線を向けた。

「欲しいの?」

構わず、目の前で水を飲み下しながらその瞳を除けば、

奴は一瞬嫌そうに目を細めながら微かに頷いた。

「・・・・・。」

500Nを半分程飲み干してから口を離し、

軽く息を付いてから自分の前に寝そべる奴を見渡す。

ここへ来てほぼ丸一日、何も口にしていないのは二人とも同じで、唾液を飲み込む度に渇いた喉の粘膜が引っ付く様だった。

汗が殆ど出なくなっていたのはそのせいだったのか…。

水を片手に自分を見つめたまま動こうとしない三上に、竜也が微かに眉を顰める。

自分の気分一つで、いつだってここから抜けて、風呂にも水場にもいける三上と違って、

自由を奪われた竜也に取っては、目の前にいるこの暴君男の気分一つが頼みの綱に違い無かった。

それを知りながら、勿体ぶる三上を嫌な顔で睨んでからフイと横を向いた。

胸の上までたくしあげられたTシャツ意外一糸纏わぬ姿。

胸に薄く浮き出る肋骨を通って、竜也の呼吸に合わせて上下する腹を…ふっと思い付いた様に三上の指がなぞる。

へその線を通って降りて来た指に、竜也の視線が再びこちらに向けられた。

そして…淡く生え揃ったばかりの下の茂みの前で止まり、竜也自身の体液で汚れたそこを何故か凝視してると思ったら。

「っーー!」

突然上から降って来た冷たい水の感触に竜也の腹がヒクリと波打った。

そしてそれは、今さっき遂げて萎えたばかりの竜也自身の上へと降りて来る。

「ちょっ・…・っ…・・み…かみ!」

その声にクックと笑いながら、ようやく水を戻すと、底の方にわずかに残ったそれを全部口に含んでいた。

そしてシーツ共々びしょびしょに濡れた竜也の茂みの中に指を入れてから、再び下へと竜也自身をなぞって行く。

一部始終を見ていた竜也が、そこから諦めた様に視線をそらす。

「・・…・」

熱くなって行く自分に触れるヒヤリとした指の感触に、背筋に電気が走る。

指が離れるだびに後から触れられた場所が熱くなっていって…

濡れた指が自身を捕らえてなぞる度、もう殆ど感覚等無いと思っていた中が疼いて行く。

カラカラに渇いた喉とは対象に、ありったけの水分がそこに集まっていて、

再び堅くなって行く三上を感じていた。




疲労からか、眠りに落ちようとする水野の肩を無理矢理揺らすと、

かったるそうな顔がこちらを向いて薄く目蓋が開いた。

朦朧としながらも三上が右手に持っている物が何か分かったらしく、

自分から微かに口を開いたそこに…口付ける。

一滴の水も逃さない様に、自ら三上に吸い付いて来て、

喉を鳴らしながら飲み込んだのを確認してから、離れて…それからもう一度。

軽い音を立てて離れると、

食堂の軌道を少しずれた水に軽くむせながらも、今度こそ本当に意識を手放していた。







廊下に出ると、もう夕食の匂いがしていた。

すれ違う知り合いとかわすいつもの挨拶。

廊下にまで聞こえて来る食堂の騒ぎ声。

「よぉ〜」

と挨拶がてらに背中を叩いて行った近藤に中西。

ドア一枚隔てたこちらはあまりにも普通で、あの情事の面影などみじんも存在するはずも無く。

あいつがここにいると言う事実さえ薄れて行く気がした。


目が覚めたらあいつはどうするだろうか。

渋沢にでも助けを求める?

それとも家に帰って直訴?

それとも…

どちらにしろ、


もう二度と会う事はねーだろな。

手を縛ったネクタイはベットを出る時に外して来ていた。


スプーンを持ち上げる手が重かった。







部屋に帰ると、

爆睡しているあいつの横に…渋沢。


終った。

何よりも凍り付いた一瞬。


たとえ電気椅子に座る事になっても、こいつにだけは何も言われたく無い。

その時沸いて来た苛立ちが一体何なのか、

本当はもうずっと前から分かっていた。


所が、ドアの閉まる音に驚いて振り向いた渋沢は、

俺の顔を見るなり「三上…」と気まずそうに笑ったのだ。

「ああ…悪いな。その、カーテン開いていたから…」

「別に。」

どうやら、そこに寝ている奴と俺の関係が同位の上だと勝手に決め込んでいるらしい渋沢に、

助かったハズが…

こんなみじめは無かった。

鼻で笑ってしまう。何より滑稽な自分が可笑しかった。


つーかさ、だってそいつが会いに来たのはおめーだし。

そんな寂しそうな顔で笑われてもよ…。


心配しなくたってお前の欲しいもんはすぐ手に入っから。



しかし俺は、それを告げる事無く。「あんだよ、そのツラは」と軽く奴にかまいながら再びベットに入り込んだ。

カーテンを閉めて、寝てる水野の隣に入り込む。

自分の物ではない。自分の物にしたかったおもちゃ。

幾度も繋がってる内に、微弱な反応を返して来る様になった身体。

もう少しだった?

もう少し時間をかけて仲直りでもしておけば、もっと上手く行ったのか…

それはねーな。

思いながら、もうどうにもならない事態が、ただ時に流されて行ってくれるのを何処かで祈っていた。




いっ…

痛て

痛ってぇ…

ああ!?


朝。

頬に走る強烈な痛みに目を覚ませば、目の前に、眉を釣り上げた凄い水野竜也の顔。

一瞬ぎょっとて、文句を忘れた俺を、激しく睨みつけていた。

と思ったら突然みぞおちに入った奴の膝に身を竦める。

「っ…テメっ!」

「…。覚えておけよ」

むせる三上を冷ややかに見下げると。

凄まじい捨て台詞を残して、眉を寄せたまま黙って下着を布団の中から発掘しにかかっていた。

・・・・。

暫くその背中を見ながら、

再び枕に沈むと俺は黙って後ろを向いた。

そう、そうやってさっさと消えろ。

何かで精算出来るならそれで十分。

眠って忘れようと思った。感情的になるのはもうこりごりで。

またこいつを引き布団に叩き付けて今度は首を閉めない内に。

そう思いながら瞳を閉じた。


眠りに落ちる寸前、目蓋の上に落ちた温もりだけを、微かに覚えていた。




着替え終って、ふと横を見れば、

!!…何と、呑気に寝息を立てている三上。

「・・・・・。」

呆れた奴。

思いながら寝顔を覗き込む。


傷つけられたのは自分の方なのに、

どうしてあんなに辛そうな顔で俺を抱いたのか…

酷い事をしたのはまるで自分の方だと言われてるようで・・・

眉を寄せている寝顔をそっと指でなぞると、何故か笑いが込み上げる。

『本当は誰に会いに来たかも知らない癖に…』

本当は少し担いでやろうと思っただけだったのに、こんな寝顔を見せられたら、後悔するじゃないか。

もう少し居たいと思うものの、時計の針がそれを許さなかった。

濡れたような睫毛の上に一つ口付けてから、カーテンを開ける。


冬の青い夜明けの光が静まり返った床を照らしていた。





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前に似たような話が出ているんですが、その時ボツった物です。
どうも日本語が変なんだけど、直しきれなかった・・・。

























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