spring fool
舞い落ちる桜の中、寮の裏手の木陰には大きな声が響いていた。
「何であいつにんな事相談すんだよ!!!!」
「別にいーだろ話したって」
「はあ?さけんな。大体てめーはよいっつもいっつも渋沢渋沢。一体誰と付き合ってんだ?おい?」
「−−−あ、あんただよ。」
だからって…
「友達なんだから、普通に話すのは当然じゃないかっ」
「じゃ、聞くけどー。俺の知らない事を何であいつが知ってて。その上あいつに俺が説教されなきゃ何んないんですか〜〜〜?」
お前が自分でいいにくりゃいいんじゃねーの?
何なの?
「なあ?聞いてんだけど」
「………。」
「おい。」
「あんたには・・・言いたく無い事だってあるんだよ。」
テメ−ざけてんじゃねーーぞっ!!!
ガシャンと三上に投げ捨てられたちり取りがコンクリに跳ね返り派手な音を立てて曲ると。それを合図に一気に空気が張り詰めて行く。
「うわ、またやってるっすよーあの2人。」
「藤代、あんまり見るなよ。」
んな事言ったってー、あんな派手にやられたら見ない方が不自然じゃ無いっすかー。
と愚痴りながらまた寮の裏手の大ゲンカを3階の窓から楽しそうに眺める藤代。
武蔵森学園高等部。この4月が明ければ藤代は新1年に三上や渋沢は2年に上がる。
今日は部屋移動の引っ越し日。本人達は(特に水野が)人前で付き合うのを嫌ってか、こんな所で2人こうして揃うのは珍しいのだが、
怒鳴りあう。手伝いに来たエプロン姿の水野とジャージの三上。
きっと渋々母に持たされて来たエプロンを。文句を言いながら、それでも素直に付けちゃってる水野の姿を想像して。
あいつカワイイな〜なんて呑気に1人ゴチしていた。
「藤代!」
「は〜い。」
後ろから飛んで来た声に後ろ髪を引かれながら戻りかけるが、
「でも何か。先輩の事言ってますよ−。」
呆れた顔でホウキを差し出していた渋沢が、「何?」と反を返し。隣へ来てひょいと覗き込む…。
「・・・。ああ、本当だ。」
と溜め息。
やってしまったかと…。と苦笑いを通り越して頭を抱えていた。
「だいたいお前が、いつも俺の話を真面目に聞かないからこっちだって仕方なく先輩に…」
「へ〜同校でも無い癖にセンパイかよ。そして俺はお前かよ。」
「真面目に聞けよっっ!!!」
「あっちゃ−−…今日は一段とハデっすね〜。」
気付けば他の階の窓からも面白がって覗く人影がちらほら見える。
こんなに騒いでると、流石に離れの校舎と言え教員にも気付かれそうだ。
「ちょっと行って来るか…」
「あーキャプ……先輩やめた方がいいっスよ。魔男がいったら逆効果……ぁ…」
「魔っ……藤代、面白がるな…こんな事。」
「あーいや。ただの夫婦喧嘩なんスから。」
にこやかにホウキを差し出されて弁解する藤代の後ろから2人。
「おお〜あいつらもとうとう終りかね。ま、三上にしちゃあ随分持った方じゃねーの?」
ひょいと出たのは「あっ中西先輩!」
「けど喧嘩するウチが花でしょ。」
「そーとも限らないぜ。なあ近藤。」
「笠井の時だって。けんかしちゃあラブって。喧嘩しちゃ…と思ってたある日。突然切れてたかんな−−。」
「別れたんじゃありません。弄ばれて捨てられたんです。」
−−−−−−−−!
いや、それはちょっと言い過ぎじゃないか笠井と渋沢の声が届くその前に。
「わ−−−−−−−−−!!!!!」
「笠井、消化器はやめろ!!」
「そうだぞ笠井。消化器は投げるより。使った方がいい。こっからじゃ届かな」
「中西っ!何言ってるんだ!!」
咲き狂う桜の下。
真下で痴話げんかを繰り広げるカップルと。
その男2人に消化器を投げだそうと3階の窓から身を乗り出している笠井の姿。それを煽る者取り押さえる者の押し問答。
それを交互に見守る野次馬達の姿と…
まさにカーニバルと化していた。
「あ−−−−−!!」
藤代の大声。
カランと黄色いタグが取れて。反射的に持ち手のレバーを思いっきり握った笠井を
間一髪。
渋沢が体事廊下へと引っ張りこんだ。
真っ白な石灰が辺り一面に降りつもる・・・・。
し〜〜ん。
となった一同の力がどっと抜ける。
職員用の階段と非常口にしかない突き当たりは誰もいないはずで。
ほっと渋沢が肩をなで下ろしたその時。
「・・・・・.あ、先生。」
中西の一言に一同が一斉に固まる。
白い粉かぶりのじじい2人と
お見合い状態の両者。
「校長先生……と?……桐原監督?〜!?」
桐原監督の目が、その見しったメンツに見開かれたその時。
パー−ーン
と派手な音が辺りに響き渡った。
反射的に皆が窓を覗き込むと
竜也の平手がちょうど三上にヒットした所だった。
その部外者の存在に気付いたのは校長では無く。
窓に張り付いたのは桐原監督。
振り降ろした手は空に浮いたまま、暫く噛み付きそうな勢いで三上を睨んでいたが。
それにおくびもせずに近付いた三上に引き寄せられると、黙って胸に顔を埋めていた。
大観衆が見守る中。
深く重なる唇。
「おいおいコレじゃ朝の連ドラ並みじゃないあか。いつから三上はこんな少女趣味になったんだか。」
「中西・・・・。」
どっと空気が和んでざわめいたが、ふいにこっちの窓に一斉の注目が集まった。
「た…竜也!!ここで何をしてるだ!!?部外者は立ち入り禁止だぞ!!」
はっとなって顔を上げた2人が見たものは
「な…親父?」
「カントク?」
遠くから見れば、その真っ白な人形は。マネキンか…幽霊か…。
笑いを堪える三上に。
ギャラリーの多さもにもともかく。青くなって。それから赤くなる竜也。
「三上っ−−ー!!お前には話がある」
その瞬間弾かれたように一拍もおかずに野次馬も4人も(渋沢を残して)
逃げ出した。
あっと気付いた桐原が廊下に気を取られ、もう一度窓の外に視線を戻した時には。
2人の姿も消えていた。
「待ちなさいっ三上!竜也!!ーーー!!」
身を乗り出せばむこうの方へ竜也の手を引きすたこらさっさと逃げて行く三上の姿。
まどから叫ぶ桐原監督の後ろで、ぽかんとあっけに取られていた校長が。
やっと口を開く。
「渋沢君。ホウキ。」
「あ、はい。」
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時間ないのでここで終り。読み返して無いので凄い事になってそうだけど。
あとで手直ししておきますので。ではでは。
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