二人
ジャンプ34号の続き…。
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「たーーつーぼん。」

「なーって…。」

ったくばてばての癖に何んでそんなん速う歩くんや。

「付いて来んなよっ!!」

がばっと振り返った泥まみれの顔に金パがにっと笑う。

「そやかて、俺もこっちなんや。」

「…〜〜〜…そーかよ。」

とわざと入り組んだ小道を曲って、曲って、暫く。

肩ごしにじろっと振り向けば。

ニコニコと手を振る佐藤の姿。

「〜〜…〜〜〜!!」

「なあタツボン風呂かしてくれへん?」

「やだっ!!?」

「何でや〜けっちなあ〜」と言いながらすたすたと竜也の隣に追い付くと、がばっと肩を組まれる。

「ちょっ!」

ずしっとかかった重みに、怖い顔で竜也が睨んでも全然ぜんへっちゃらの顔。

「自分家帰れよ。」

「俺、居候なんや。こんなん汚して帰ったら叱られてまうわ〜」

ふざけたブリっこ口調に眉を顰めながらも、その単語には素直に反応していた竜也だったが。

「居候?」

「そ、俺捨て子なんやv」

傾きかけていた竜也が嘘だと感じ取ったらしく再びそっぽを向かれる。

「不良だからだろ」

「なっ、違うわっ」

「放せっ、この不良!」

「不良不良言うなや!!」

あれだけ息も絶え絶えになりながら、まだ競り合う元気な二人。

道の真ん中で、本気で抵抗し始めた竜也に押し問答になっていると…


「たっちゃん。」


後ろから声がする。

「ど−したの?その格好?」

と目を丸くした真里子が買い物カゴを下げて立っていた。

「お友達?」とポカンとしているシゲに笑いかける。

「母さん…。」

「こら驚いたわ。何?あんたんとこのおかん?偉い美人やな〜〜」

と感嘆と真里子を眺めるシゲの耳を引っ張った。

竜也の拳がわなわなする。

「あてて、」

「まあ、」とそれを見ながら笑う真里子。

「それにしても二人とも真っ黒ね…。うち、すぐそこなんです。よかったら寄って行かない?」

「ー−!!」

「ホンマ!?ほなお言葉に甘えてv」

唖然とする竜也をよそにすっかり盛り上がる母と…佐藤成樹。

「ちょっ!母さん!!!」


この前は喝上げ、今日は部活に乱入。…その上。なんてずーずーしい奴なんだ!!!

「へーじゃあ、シゲ君は京都出身なの?いいいわねーーv」

「せや、」

ひとりテーブルの端でブスッとしながら箸を持つ手を怒りに震わす竜也。

…何でこーなるんだよっ!……。

「なあタツボン。」

「タツボンって言うなっ!」

突然振られた話題にくわっと返す。

「まあ、たっちゃん。」口を抑えてそれを吹き出す真里子に…竜也のメーターが一気に跳ね上がった。

なっ…な、な、

「何でや?えーやないかタツボンで。」

「言い訳ないだろっ!!」

ばんっと箸を置いて「ごちそう様」と席を立ってしまった竜也に、シゲと真里子が顔を見合わせる。

「何怒っとるんや?タツボン。」

「たっちゃん?」



全く。あいつもあいつなら母さんも母さんだ…。

あんな不良と…。

ベットに顔をしずめながら、苛立った気持ちも一緒にしずめて行く。

のけものにされた気分ですっかり拗ねてしまった竜也。

その時パタンと開いたドアから入って来たシゲに竜也が止まる。

『・・・まさか。』

「よ、…何時までそないな顔しとるんや。」

竜也は何も答えずそっぽを向く、その仕草にシゲがフと笑った気配がした。

肩にかけたタオルで髪を拭きながらつかつかとやって来て、竜也の寝転ぶ横へとシゲが座った。

ベットが軋んで傾く。風呂上がりの石鹸の匂いがふわりと香って竜也がちらりと顔を向ける。

「美人な顔が歪んでまうで、」

「…俺は男だぞ。」

「んな事わかっとるわ。」と言ってから竜也を見て苦笑する。

まさか。「・・泊まってく気じゃ無いだろーな…。」

「ん?あー…いや。真理子さんはそう言ってくれはったけど、今日は帰るわ。これ以上タツボンに嫌われたらかなわんしな。」

「俺は別に…」

その言葉に完全に竜也が顔を上げる。

「・・・・・・。」

それを見たシゲがちょっと止まった。

湯上がりのせいかちょっと赤い頬に、昼間のきつい眼差しが幾分柔らかくなっていた。

良く見れば、まだあどけない顔。

「…?なんだよ。」

「いや、ほな今日は御馳走さん。」

何が御馳走さんだと言ってやりたい小言を飲み込んで…

「…じゃあな。…又明日」

「ホンマ!?ほな明日(部活で)な〜よろしゅうvv」

「うわっちょっ…・!」

てっきり帰るんだと思っていたシゲがそう言いながら、竜也のタオルケットをめくり上げベットの中へと…

「お前帰るつったじゃないかっ」

「ん?おー帰るでー。終わったらな。」

「な、何がだよ。」

「いや〜、俺タツボンの事めっちゃタイプなんや。」

冗談とも本気とも付かない挑発的な笑みを浮かべて、あせる竜也の身体に手足で巻き付いて来る。

「うわっ。ばっ!さわんなっ、ちょっ!!」

「出てけーーー!!!!」

もがく竜也の肘に気をとられていたシゲの腹に、強烈なケリが入って、気付いた時にはベットから転がり落ちていた。

「った〜〜、なにすんや!このガキっ。」

「ガキじゃないっ」

「ガキや無いか、このボン。」

竜也もすっかりベットの上に立上がって臨戦体制の二人、

…しばらくの間を置いてから、フンとシゲが引いた。

「軽い冗談や。何ムキになりおって、」

竜也から視線をそらすと、苦笑しながら不機嫌そうに荷物を持つ、「ほな悪かったな、」と竜也の方は振り向かないまま戸口へと向かった。

一瞬だけ、ノブを引いた時躊躇した気がしたけど・・・・。

「おやすみさん。」と言うとパタンとドアを閉めて行った。


タンタン、タンと階段を降りる音。


あっけ、に取られながら残された竜也は何故か妙な気分になる。


なんなんだよ…あいつ。ホントムカツク…。
けど、最後に見せたあの拗ねたような、傷付いた様な顏は一体…。

ベットの皺を軽く伸ばすと再びぼすっと横になる。


「あら、佐藤君帰っちゃうの?」

「すんまへん急用思い出したんで。」

真理子の声。シゲの声。

「いーえ、また遊びに来てね。あんな楽しそうな竜也久しぶりだったのよ。」


なっ、母さんの目は節穴か!?

思わずがばっと飛び起きて「・・・・・。」

それから、玄関の閉まる音と共に部屋を飛び出した。

「あら、たっちゃん佐藤君今…たっちゃん?」

階段を駆け降りると今止まったばかりの乾燥機から、くしゃくしゃになったシゲの服を取り出す。

「たっちゃんそれ、アイロンしないと…」

びっくりする母を差し置いて、寝巻き着のまま外へと飛び出した。


「おいっ。」

数十メートルへと歩いていたシゲがぎょっとして振り返る。

「何やあ〜!?」

凄い形相で裸足のまま布キレを胸に抱える竜也の姿が闇に浮んでいた。

あいつ何しとんのや?と小声でつぶやきながら、てってと竜也の方へと歩みを戻すと。竜也も駆け寄って来た。

今までより随分近くでぴたりと止まると、真正面からシゲを見据える。

「忘れもんだぞ。」

顔はしっかりとシゲを見ながら、その胸へぼすっと服を叩き付けた。

「おおきに…」

と言って洗濯物では無く、伸ばされた竜也の腕を掴んだシゲ。

だがお互いもうふざけては居なかった。

何故か真面目な顔で見合う二人。

沈黙に何か言おうとしたのか、ふっと竜也が視線を下げた瞬間に、くいっと腕が引っ張られて、

頬に柔らかいものが触れて離れた…感触。

くっと正面を見た竜也の頭の上にぽんっと手の平が落ちて来て、

「ほな、またな〜」

とカラッと笑った笑顔のシゲが片手を振っていた。

あ……。

とっさに、何か言いかけようとした竜也だたが、止めて…口を閉じる。

さっきみたいな怒りは湧いて来なかった。

…そうだよ。子供じゃないんだから。あんな不良に騒いだって仕方ない。

と、溜め息を付いて平気なフリ。


誰も居ないのに、俯いた頬が何故か熱かった。



ホント…嫌なやつ…。








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裏はこれから書きます…。










































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