dreaming devil
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「あいつとかさ…よくねー?」

「へえ…お前好み?」


つらつらと浮上する意識の中聞こえたのはそんな声。


それから微かな笑い…



ああ?

…れだ?…っせーな…


寝返りをうちながら目をあけると

そこは自分の部屋ではなく、


部室倉庫のマットの上だった。

!!?

やっベ…

慌てて見た腕の時計はとっくに夕食の時間を回っていて

部屋の中も窓の外もすっかり暗くなっていた。

何と言う不覚…


まだ重い頭を持ち上げながら

身を起こすとやっと辺りを伺う

自分の寝ているマットはちょうど部屋の角に置かれ

目の前には丁度古いボールの篭が二つ折り重なって、中には使わなくなった雑用品が詰め込まれていた。

話し声はその向こうから聞こえて来る。

顔も姿も見えなかったが

多分…同じ部の3年と思わせるような

それらしい単語や…

うっすらとは聞き覚えのある様な声…


電気くらい付けろっつーの…

思いながら、いかにも秘密めいたその薄暗さに

どう出て行こうか考えながら、再び腕枕で横になると

そうだと判るよりも先に上って来た睡魔に逆らえず、瞳を閉じたのだった。






「…まー確かにどうせもう引退だけど?…」

「しかも、確かに顔はいーけどよ…」マジで?

「マジで、…案外あーゆう方のが…すんだぜ?」

「あっはっは…お前、第一な〜…あいつの息子だぜ?」

「だからだっつーの…あのヤローにはさんざんお世話になってんだ…返すのは礼儀だぜ?」

「本気かよ?」

「ばらしたら?」

「当然…一緒にあの世に行ってもらうね…」

「あぶねーこいつ」

「そーと愛しちゃってんね」

「いーから、やんのかやんねーのか、…」




何時になったら帰るのか、夢うつつのなかにまで響いて来る邪魔な声に

幾度も眉を顰めながら

ここの所たまっていた疲れのせいで、どんなに意識を保っても

一度閉じてしまった目蓋はもう、開けなかった

ここ2ヶ月

そ知らぬ振りでやって来たけど

水野竜也の入学が自分にかけていた負担は、相当の物だったらしい…

珍しく、愚痴も言えずに騙し騙しやってきたストレスは、本人すら知らない内に限界に来ていた。









「おーちっと一年、この篭、あの倉庫に持ってといてくんねー?」

「はい…」

更衣室を出たと同時に声をかけて来たのは、知らない先輩…

「あの小屋だから、判るな?」

言われた倉庫は、部室棟から少し離れた所に一つだけ立って居る不要品置き場みたいな所で、

時々あそこでたむろする連中がいる事もでも有名だった。



勢い良く開けた扉の向こうは

見事に真っ暗だった。

砂と石灰のくすんだ匂い

この様子じゃ電気も付かないだろうと思いながら、同じような篭が並んで居る窓際を見つけ

奥へと踏み出した、一瞬


目の前を大きな壁に塞がれたのか…

突然視力でも無くなったのか


真っ暗に

なったのだった。

それから声も出さないうちに頭に受けた強い衝撃。









「…・・・っろ…」

「けんなっ…!…・・」




ああ…??

…っせーな…




「いーからすぐすむつってんだろ!」



…せーつってんだろーがよ



「うわっ…ここちょーすげーじゃん」

…・〜〜・っ…・・





ついさっきの秘そめ声とは打って変わった

遠慮のない

人と人のわめき声

それから、時折交ざる、聞き覚えのアル様な…

細い嬌声…



キンキンと頭の芯へ容赦なく響いて来る

誰かの泣き声に

微睡みの中、とういとう堪え切れずに耳を塞いでマットを転がった。

しかしそれは、ますます近くはっきりと聞こえるばかりで

治まる気配は全く、見せなかった。







「…・・っ…・・ぃ…」

「…つ…あぁっ・・だ……」


「…嫌だってよ?…」

「…失礼な奴だぜ…」続く猥雑な笑い声。

・ぃ…っだ……ぁ・ぁ…」

「…んだよ、しょーがねーな」

笑いまじりの嘲笑と共に中を掻き回していたそれが突然引き抜かれ

付いて行けなかった身体が思わず後を追って、何もないそこを締め付けていた。

「っ…・〜〜…」

声にならず思わずぶるりと背筋を走る震え、

尻の入り口にはまだ力を残したそれが宛てがわれていたが

けしてそれ以上は進んで来ない。


「それで何?どーして欲しいって?」

上半身ごと古い机へたりと沈んだ竜也の顔は

目隠しで殆ど見える物では無かったが

半開きになって微かな声を上げる唇が、もう虚ろだった


何時の間にか前に回された男の腕が

まだ

一度も触れられていなかった竜也自身にゆっくりと

絡み付いていき

「〜〜…!!!」

ギリリと腫れ上がりかけた筋が痛む程、その指で締め付けたのだった。


「こっちがいいって?」

たまらず逃れようと仰け反る背も、

あっと言う間に横に座る2人に押さえつけられ

再び机の上へと頬を打ち付けるだけだった。

「おい、顔は気をつけろつってんだろっ!」

ふいに怒気を含んだ1人の声に

竜也を捕らえていた男が小さく舌打ちをして、

髪を掴んだその手をのろのろと離したのだった。


もう随分立上がりかけてきた竜也の裏筋を指でなぞりながら

わざと嬲る様にゆっくりと高めて行く

「ぁ…ぁっ…・・ぁ・…」

「…・ぁっ…・ふ…・」

先端から漏れる液がそれを伝って内股を濡らして行くと

上下する手と擦れて酷い音を立てていた。


「これでいんじゃねーの?」

「感じてんじゃん」


「…〜〜っ…〜・…・」

が…
…う

言おうにも既に言葉にはならず

後ろに構えられた男の先端が股の間を掠って行く度に

さっきの名残を覚えた身体が、疼くのを止められなかった。


それを見抜いたかのようにククッと笑った男の声…


「…いわねーとやらねえぜ?」

耳もとで囁かれた声に顔をそむけながら

視界の中は闇のまま

目隠しは流れた分だけ涙を吸って

すでにぐっしょりと冷たく目蓋に張り付いていた。







そして次の瞬間

やっと、耳をつんざいた酷い悲鳴…


声と言うよりもはや絶叫に近かったそれに、閉じた瞳の口元だけが

静かに笑った、その時

同時に飛び込んで来たその声にぱちりと視界が開けたのだった。


「三上 !?」

「三上センパイっ!!」

飛び起きて

思わず口から飛び出しかけた心臓を飲込んだ。

突然の暗闇の中、まずここが何処だったかを思い出そうとしていた自分の横顔に

懐中電灯を思いきり当てたのは

あの、水野竜也だったのだ。


「テメーか…」

起き上がった俺を見て、最初に浮んだのは安緒の顔…

だがそれも、一瞬で消えて、向き合った時には既にいつもの堅い顔に戻っていた。


「こんな所で、何してるんですか?」

心無し語尾が震えていたのは…気のせいか?

「あ?…昼寝…」

ったくでかい声でわめきやがって

言いながら、寝ぼけた頭をトントンと手の平で叩きながら起き上がると

じりっと自分を睨む奴から視線を反らしながら立上がった。

「探したんですよ」

「探した?」

と、時計を見れば見事に12時を回っていた。

・・・・。

「そりゃどーも」

全く…と偉そうに隣で付く溜め息に

目覚めの悪さを思いながら、のろのろと戸口へ向かうとちょうど後ろから

奴の懐中電灯が足元を照らしていた。


ふと偶然、

その横にあった篭のボロ布切れに見覚えを感じて

手を伸ばすと

端にかかっていたは…


あの黒い目隠しだったのだ。


暫し、そこから動けず呆然としながら

後ろの奴を振り返るが

怪訝な顔で俺を見返して来るだけだった。


…が


握ったドアのノブは開かず

上にかかったチェーンにやっと気付いたその時

後ろから静かに、奴の手が伸びて、握ったその目隠しを引き抜いて行ったのだ。


ーーーー…


嫌な予感を感じながらも

振り向かずに入られなかった…


ゆっくり振り向いたそいつの顔は、いつもの奴。

だが、奪って行った布の変わりに懐中電灯を俺へと差し出していた

受け取って、

あたかもそうする事を知っていたかの様に、ゆっくりと部屋の中を照らしたそこには…



着乱れたウエアーのまま白く横たわるこいつの姿…

そしてその上に覆いかぶさる様にもう一つの…

死体が

あった…

それは紛れも無く夢で見た、あの男…



目の前の奴に目を見張る

だが彼は、何も言わず

ただ一言「早く…」と、唇が形どっただけだった。




その時何故そう思ったのか

こいつを殺したのは

夢を見た自分だと

知って…

幻で人殺し等、できるはずも無いのに

何故かその時、

目の前の身体を引き寄せずには居られず

強く引き寄せると、その身体は大人しく腕の中に納まっていた…










はっとして

意識が戻ったのは、

は…?

医務室のベットの上だった。

明るい日差しと、白いカーテンが

たった今まで見ていた腐蝕の世界を掻き消して

ぼんやりと横を向くと、目尻に溜まっていた水滴に気付いて慌て拭った。




「三上君?起きた?」

暫くして現れた保健医の横から現れたのは

…やっぱり、あいつだった。

「過労…だったみたいね、あと寝不足、」

「彼が倉庫で倒れてるの見付けて呼びに来てくれたのよ」

紹介されて、気まずそうに顔を出した水野竜也…

「どうも…」と

何の感慨も無く見上げる自分に

少々意外な顔をしながら「いえ…」と視線を反らしていた。

…今度こそは本物だと…言うのか…


その時、運良く入って来た患者に「ちょっと頼むね…」と席を外す保健医


すっかり2人きりになったまま

だというのに、一向に言葉も紡ぐ気配のない、お互い…

それでも、ただベットの横に立つ奴の顔が、何かを言いたそうに焦れているのが分かって、

切り出すも…

「何でいんの?」

「何となく…」

「あー?…」


恐ろしく続かない会話…

そんなに嫌なら起きる前にさっさと消えていれば良い物を…

思った矢先に、

すっと伸びた手が自分の額のタオルを裏返して

そのまま人の顔をじっと見ていた…


「さっき、俺の名前呼んでたから」

「は?」

「夢でもみたのかと思って…」


そう言って視線を反らしたその頬は

見る見る内に染まって、そのうちふいと不機嫌に顔ごと反らされる

夢…

「んな訳ね…」「さっき寝ぼけて人に抱き着いて来た癖に」

瞬間、ぞくりと背中を襲った鳥肌。


そう言って不機嫌なつり眉に睨まれても

何一つ言えなずに固まる三上だったが…


だがその日、すごすごと布団に潜った彼が、壁際を向いたままもう一度眠りに落ちるまで

竜也が隣の椅子を離れる事は無かった。







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終わし…(ーー;)


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