ベリーベリーブラック ベリーべリ−ブラック  暗闇の中   ただ幾重もの恋に  落ちて行く   

・・

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「水野君っ。」

半開きになったドアの向こう。

そう言いかけてドアノブに手を伸ばした将は思わず声を飲んだ。

視界に飛び込んで来たのは水野の後ろ姿と。

重なるシルエット。

え?

目を疑った。そこに居たのはまぎれも無く。

『・・三上先輩・・・?。』

とっさに身を返しドア横の壁を背に張り付いたが。もう一度確かめる勇気は無かった。

ええっ!?

どうして?

一瞬の事だし。見間違えかもしれない・・よね。

だがそれは無い。と言うかのように頬が照って来るのが自分でも分かった。鼓動が早い。

やっぱり見てはいけないものを見てしまったんだと理解すると同時に、浮かぶ一抹の不安。これって・・・


「何してるんだ?」

あ・・「不破君。」

思わず出てしまった大声にハッとする。

「どうかしたのか?」

「ううん。ああごめんね。」

忘れ物が有る。と言って部屋に戻ったきり帰って来ない水野を呼びに行ったはいいが、今度は将まで帰って来ない。

とうとう不破が痺れを切らして様子を見に来てみれば・・。

どーみても真剣な顔で立ち聞きに入ってる風祭の姿。

「何だ?」

「あー・・、何でも無いよ。ホント。」

「いた、いたた。だから何でも無いってばっ!!」

ダメか。と呟いて将のホっぺから手をすと、水野の居るであろう部屋をちょっと見て。

「あいつか・・」とボソりと言った。

見すかされたようで思わずドキッと心臓が跳ねる。嫌な感じ。

何でもいいなにか言わなきゃ。そう思って顔を上げたが彼は無表情ながらにちょっとこむずかし顔で、

既に何かを考察中と言う感じだった。

ただ言ってみたと言う訳でも無さそうで、何かを思い返しているようにも見えた。


フッと風が動く。


ドアの向こうから顔を出した水野はさっき別れた時と全く同じ。

「ああ風祭。不破も・・・・。何してるんだ?」

「あっ、水野君っ。」

「悪い、待たせたな、行こう。」

「う、うん。」

ぱっと手の離れたホホを摩りながら彼の後を追う。

水野の顔を見た瞬間、タダでさえ赤くなっていた頬がますます熱くなって、

照った顔を両手で覆う。

腫れていて良かった。そう思った。



ちらっとドアの方を振り返ったが三上の姿は見えず。何も無かった。





・・

夕焼けの桜上水。

「かざはええとして、たつボンの方はだいぶイラついてるようやな。」

ちらっと耳に入ったシゲの言葉に、将はつい水野を振り返えった。

「今の、追いつけただろう!」

いつも練習には厳しかったけど、普段の水野らしく無い荒い怒調の声が飛ぶ。

やっぱり、何かあったのかな……。

だが。

水野の苛つく理由がそんな事では無い事は、風祭も身を持って判っていた。

(皆の動きが遅く見える……か。)

…だよね、何でもすぐ一色多にくくるのは良く無い。

帰って来る時は水野君、何ともなかったんだから。

あれから三日、気になっていたのは、

水野の事より。

シゲの事だった。

良く判らないけど…多分付き合ってるらしい二人が(それは過去2回風祭がそう言う場面を目撃したから)

どことなく前と違う事に、実を言えば飛葉戦の後から気付いていて。

はっきり聞いた事も無いからはっきり聞く訳にも行かず。まあ、それ以前に、

自分の事で精一杯だったと言うのが一番の理由だったが。

最近やけにそっけないシゲの態度はやっぱり、

『水野君の浮気を知って………』

なんて浮んで、あわてて頭を振った。なし。今のなし。

ああ、何考えてんだろう俺。

これじゃただの…妄想ヤローに間違い無かったが…。

『ホント、ただのおせっかいで終わればいんだけど。』

あの日見てしまった事が、変なプレッシャーになって将にのしかかっていた。

もしかしたら、とっくに別れてたりするのかも。

いや、付き合ってるかどうかも定かじゃないって言うのに。

別れるもなにも。

それともシゲさんの片思いとか。

どのみち水野君が二股なんて…考え難いよ。

いや、またこうやって触れちゃいけない人事に首つっこんで問題を。

罪悪感から逃れたいのは僕の勝手な都合じゃ無いか。

などと、1人でごちゃごちゃ考えてると、後ろから声がかかる。

「じゃーなー!張り切んのも良いけど無理すんなよー。」

はっと振り向くと、とっくに着替えを終えた高井達が向こうで手を振っていた。

「うん。おつかれー!また明日ー!!」

って・・・・・・。

じ、自主錬してると思われてたんだ。

が−ーん。

壁に向かって、黙々とボールを蹴っていた自分の姿に始めて気づく。

そう言えばさっき解散したのをすっかり忘れていた。

…かなり恥ずかしいかも。

そして、時計を見て二度ショックを受ける。

やばいもうこんな時間だったんだ!!

ちょっと赤いホっぺをいつもみたいに両手で軽く叩くと部室ヘとかけて行った。

勢い良く戸を開けた瞬間風祭は。今度2度目のキスシーンを目撃して再び固った。

上半身を台の上に寝そべらせた水野と、その上から覆いかぶさったシゲの姿。

開けっ広げられた戸に固まる水野と風祭だったが。

「なんやポチ、いいとこやったのに。」水野から顔を上げたシゲにどやされて、はっと我に帰る。

「ご、ゴメンなさい!!!」

ぴしゃっと閉めたとの向こうで、シゲの笑い声と竜也の小言が聞こえて来る。

うわ、うわ〜。

ドキドキと…まさにドキドキ波打ってるのが、心臓なのか脳の血管なのかわからない位体の中で音が響いていた。

その時突然カラカラと開いた背中のドアにびくっとする。

「ああ〜すまんすまん。お前の荷物残っとるの気づかんかったわ。」

ひょいと顔出したのはシゲで、ホレと着替えと荷物を渡される。

「ど、どうも。」

しばらくあははと顔をあわせていたが、そのうちシゲがぷっと吹き出した。

「耳まであこうなっとるで。まったくお約束なやっちゃ……」

が、その声は最後まで聞こえなかった。「シゲ!!」

と奥から鋭い声が飛んで来て、シゲの肩がビクッと跳ねた「ほなな」と将に肩を竦めてみせると

頭一個分の隙間をぴしゃりと閉めて行った。

・・・残された風祭は両手に荷物で部室の扉をぽかんと見つめていた。

シゲさん…俺に外で着替えろってか・・・。

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