バト3
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「おい、翼−。」「んーー?」
集落とは外れた山小屋風の民家の中、付かないTVのリモコン片手に椅子に仰け反る翼。
外から帰って来たマサキに面倒臭そうに振り返る。
「何かあった?」
「おー、あいつらも作戦乗るってよ。」
「何や?あいつらも?翼そない集めてどーすんや、船乗れんやろ。」
湯の当番をしながら横から口を挟んだナオキをマサキがちらっと見て、それから視線を翼に戻すが。
壊れたTVに向かって無造作にリモコンのボタンを押し続けながら、薄く笑っただけだった。
「俺に不可能はねーって言ってるだろ。」
「そやかて、何するかくらい教えてくれてもええやろ。」
「黙って見てろよ。その内判るって。」
ちょっと不満な顔をこちらに向けたナオキに、いつもの自身に溢れた顔でたしなめるのだった。
何食わぬ顔で冷蔵庫を開けたマサキが、ふいに見なれない物を見つけて手が止まる。
試験管に入った透明なゼリー。
「何これ。」
「あー、さわんなよっ。爆弾だから。」
「爆弾?」声を上げたのはナオキ。
「うっそ。」
ふ〜ん、ま、何でも良いけどとマサキが冷蔵庫から出したペットボトルの蓋の色を、ナオキがちらっと見て居た。
「ニトログリセリン。つって。まー爆弾の原材料ってとこかな。かなり原始的だけど。火薬なんか持ち歩いてドンパチやったら、持ってるだけで狙われんのが落ちだし。(別にそれでもいーけど)用はいかに楽してばれずに行くかだからね。」
「んなもん、どこにあったよ。」
「さっきの薬局の冷蔵庫。」
「あーあそこね……。」
そう言いながらマサキの首に腕をまわして引き寄せると、
「…んっ…」
舌を絡めて。
そのままガシャンと音を立てて床へ沈む2人を、ナオキが無言で見て居た。
試験管の奥へ目を下せば、アルミホイルに包まれた誰かの右腕。
「おい、三上はー?」「さあ、あれっきり」
とドラム缶の上で銃口をばらして居た谷口が、竜也が入っている部屋を顎で答える。
「マジで?そろそろ時間ねーからって、渋沢が」
「んな事言ったって、鍵かかってっし。」
「は?マジで?」
それ、おかしいんじゃねーの?と鳴海が顔で言うが
「そーか?けど、窓もねーのに逃げる心配はねーよ、しかも三上だろ…」
と言う谷口にぐっと眉間をしかめると、ライフルを構えゆっくりとその部屋の戸へ近付いた。
「おい、マジかよ。」口調とは裏腹に呑気な彼。
鳴海が張り付ついて、中の音を伺おうとした瞬間、ドアが開いた。「テメっ…てーな!」
ゴンと額に板を当てられた鳴海が、思わず三上の首に下から銃口を向けるが…
「んだよ、」
と何と無しに腕でそれを払い除けると、ドアを目一杯開く。そこには。
三上に支えられた竜也の姿。
「マジで生きてやがったのかよ…。」
谷口の微かな舌打ち。
「どうも。」
すぐ側に居た鳴海にあの生意気な顔で無言のメンチを切る。
しかし顔とは裏腹に、びっこを轢きながら三上に促されたソファーへと何とか辿り着こうとする竜也を、鳴海が薄く笑って居た。
仲間意識なんてみじんも無い同盟。互いが互いを探りあう、緩く歪んだ緊張感。戸口の横の壁に鳴海。その前のドラム缶に腰掛ける谷口。
そして真ん中のソファーに座る竜也の隣に三上。
「あいつは何でこんな奴生かしとくんだ?」口火を切ったのは谷口だった。嫌な顔で竜也をちらっと見ながら三上に聞く。
「俺が知っかよ。」
「殿がお気に召しちまったんじゃね〜の?」竜也の肩に腕を駆けながら、ソファーに沈む。
「おまえどーよ。」今度は鳴海に振る。「べーっつに〜〜。」
「俺はもうちっと色気が有った方が良かったけどね。…あのチビとか…」
それを聞いた鳴海がおもわずフンと鼻で笑う。
「おめーごときにあのじゃじゃ馬がてにおえっかよ。」
「そ−言うてめーはどーなんだよっ」
思わず銃を構えあった2人の間に亮の声が飛ぶ。
「つーか。どのチビ?」
「…椎名だよ。」
「あーあれね…。」
言いながら、横に座る竜也の頬に付く血痕を指でわざときつく拭う。眉を顰めた竜也がふいっと顔をそらすが、ぐいっと戻された。
逆らう事は許されない。
例え仲間になっても、お前はもう人間じゃ無いと。彼等の視線が竜也に告げて居た。
「ま、どっちみち、こんな壊れかけよりそろそろ新しいのがほし−わな。」
『何があってもテメーは絶対口利くんじゃねーぞ。』
部屋を出る時にそれは亮に徹底されたことだった。実際、どこまで三上を信じていいものか、竜也も決めかねていたが。
とにかく今は体力の回復が先だった。
谷口があきらかに嘲笑しながら竜也の顔を覗き込んで何か言っても、幸い音しか聞こえず、
貧血の頭じゃ何をまでは理解等出来ていなかった。
ちらっと横を見ると、さっき飲ませた睡眠効果のある眠り薬が利いて来たのか、こっくりと寝に入って居た竜也に三上がふっと笑う。
身体が弱っているせいで、薬の効きが早い。
「いんじゃねー?」鳴海が言った。
「ああ、」
三上がソファーの下から取り出したのは、数時間前上原を撃った手持ちのサイレントだった。
「ああ…ああ・・っあぁ・・つっ…」「あーーーあぁっあっー−ー!!!!」
壁のボロい家の外まで漏れて来る翼の声に、家の外で穴を掘って居たナオキが振り返り。
そしてまた視線を戻す。
ホコリの散る床に犬の様に這いつくばって、尻突き出すかっこでマサキに貫かれる翼の姿。「つ…あ、ああ……ん…あ」
声を惜しまないらしくなさは、生と死をさまよう気分の昂揚から来ている物かも知れなかった。
「あ・・ああっ・・あっ・・さき…ちょ・・・さき」
早くなる動と供に、自分自身を握りこんで居たマサキの手がいっそう力を込めてくる。
「っーーーーーーぅっ。」
!?
こんなにきつく握られては達する事も出来ないと、顔を歪めながら文句を言おうと振り返るが、
「ああーーー!ってめっ…っ・・」
それを見計らった様に、強く押し入られて再び背をのけぞらす。
どんなに万能でも、この時だけは翼に逆らうすべは殆ど無い。
圧倒的な力の差だけが物を言う。
俺は…っまずったのか?とっさに腹の底に浮ぶ疑問。
だが、まさか。マサキが…。
腹の中を切り裂いて来る熱く堅い刃物に耐えながら、散漫になりそうな意識を掻き集め、今自分に起ころうとしている事を何とか、察知する。「つばさ…。」
「お前には感謝して・・る。マジで…。」頭の上で、聞こえる声。
それはあり得ない。あり得ない。だが。
「…けど。」これ以上殺戮はさせられねえ・・・。
俺も、生きては帰らねーから。
全てを聞き終わらない内に、視界が真っ暗な中を落ちて行ていった。
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なんでこんな善人がでて来てしまったのか判りません。今回は失敗です。(ーー:)
死亡椎名翼
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