+b2+
エセバトシリーズです。あらかじめご了承下さい(−−;)
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ポタポタと顎を伝う冷たい感触に目を開ける…

ここは…。

俺は…。

ぼやけた頭が記憶を辿るが中々定かにならない。

ただどうしようもない喉の乾きに与えられる水を飲み込んだ。

水…。

視線を巡らすと、頭上には…ミカミ?

隣に座って自分へとペットボトルを傾けているのは三上だった。

竜也が瞳を開けたのを確認すると、水を除けて頬を流れた水気を拭い。

代わりに三上の指が竜也の口元に押し当てられた。

何かを持っている。

香料とも付かない独特な草の匂い。


「息吸って。」

ぼんやりとした瞳が覚醒する前にあぶった麻の葉を吸わせる。

果たしてこれが本当に麻かどうか…そうであったとしてもこんな処方が効くのかどうか三上にも判らなかったが。

簡単な麻酔になるかも…。と

この廃虚の庭で見つけた麻らしき植物を焙ってみたのだ。

相変わらずトロンとした目で三上の指示に従う竜也。

・・・・・。

「どっか痛まねー?」

「…どこ・・も。」

------!!どうやら効いた。と三上がふとその顔に明るい色を浮かべた瞬間、後ろから声がかかる。

「おい、終わったのか?」

「……。」ちっと小さな舌打ち。

「いーから黙ってまってろよ。」

「渋沢帰って来るぞ。」

「っかってんだよ。いーから行けつってんだろ。」

とドアの外の声を追い払う。

ふと視線を戻すと、竜也は再び眠りに入って行た。

黙ってその寝顔を見下ろす。




水野竜也がこのコミニティ−に加わってから(正確には監禁されてから)実は12時間が立っていた。

エリアの拡大に伴っての移動が一回。


竜也の部屋から戻って来た三上に、隣に腰掛けた上原が小声で聞く。

「お前、何であいつにとどめ刺さなかったんだ?」

「は?役にたってんじゃん。」

ここ便所ねーし。とさらっと言った三上に一瞬詰まるが。

「けどあんたは一度も使ってねーじゃん。」

「そーだっけ?そ−言うあんたもやってねーじゃん。」

「俺は別に…」

「あ、受けだっけ?」言われてムッとする上原をよそに、

かっぽっと音を立てながら非常食用の缶詰めを開ける三上。

「…コレからどうすんだよ。」

「何が?」

「あいつ(水野)だよ。」

「さぁー。ま、てきとーじゃねー。」

「・・・・・。」

上原の中で膨らんで来た疑念。

節度を越えて行く仲間を前に、彼は自身への危機を感じ始めていた。

水野を連れて来た時から、いやもっと前からだったか…


皆んな変わっちまった。

こんな事する意味って有るのか?

生き残る為にする事と何の関係があんだ?

そう繰り返しながら、

------もう嫌だ。

例えば、ここにいたってこのままあいつらがすんなり終わらせるとは、

もう思えなかった…。

もう俺が知ってる仲間はここには居ないのだと…。


きっと今に殺しあうぜ、こいつら…。


柱の隅で膝を撃たれて寝転ぶ桜庭をちらっと見て。決心する。

昨日、些細な言い争いの間に鳴海に撃たれた傷だった。

何の躊躇もなく引かれた引き金。まるで足を踏む様に。

あいつにとってはおふざけに過ぎなかったのだ。

「三上、お前はさ…どうする?」

何が?と言う顔で見返した彼に、しばし言い淀んでから…言った。


「こっから…抜けねぇ?」

「誰裏切る事になるか、分かって言ってんの?」

「・・・。そ−言う事になるかもしんねーけど。あいつも限界っぽいし、ここのやり方は俺達には向いてねー見たいだし。悪いけど…」

と桜庭を見ながら言う。

「…そりゃ俺はかまわねーけど。」

と言った三上の視線の先を見れば、何時の間にか柱の影から現れた谷口が桜庭の隣へ立っていて。

「な、…にしてんだよ…?」

顔を上げた桜庭の顔が見る見る蒼白になって行く。振り返る事等出来なかった。

顳かみに冷たい鉄器の感触を感じて、はっとした上原が三上を振り返った瞬間、

音も無く二人の身体が床へと崩れ落ちた。



「へーあんたもサイレンサー付き?」

「まーね。」

「自分の?」

「いや、借りもん。」

「にしてもヒマだよなーー。あいつまだ寝てんの?」

「…その前に、片さねーとまた親父顔がうっせーから」








目がさめると。そこは見なれない廃居の中だった。

目隠しは外されている。

手首を縛っている物も無くなっていた。

上半身を起すと絶食のお陰で目眩はしたが、

…俺はまだ生きている様だな…と苦い、自嘲がもれる。

「おっと動くなよ。」

声のかかった方に顔を向けるとドアの前には三上の姿。

こちらを見張りながら薄く開けたドアの向こうに軽く合図していた。

「ああ、気付いたか水野。」

身体が強張る。一気に緊張が走った。

「渋沢…」

「身体は大丈夫か?」

まるで今までのが全て夢だったかの様に話し掛けて来る、いつもの口調で。

だが、間違えたりしない。

こいつは…。

「椎名が脱出の方法を見つけて今準備に入ってる所なんだ、お前さえ良かったら一緒にこないか…。」

自分を怖い顔で見据えて来る竜也を気にも止めずに極普通に歩み寄る。

「いいえ。」と言いかけた竜也を亮が遮った。

「メンバーが減ったからポストが空いたんだよ。格上げだって。」

『オメデト』

ふんと嘲るような態度でそう言って、竜也に誰かのディバックを投げてよこす。

その時、断れば死ぬぞと視線でつげられて居た。

新しい水と小型のマグナム。

手にとって確認していた竜也に声が飛ぶ。

「玉は頃合いを見て俺が渡す。」
「俺はこいつ見てーにテメーを信用して無いんでね。」

「三上…。」となだめる様に渋沢の注意が入る、

「水野、皆で生きて帰ろう…」

「・・・・・。」

返事は無かった。

ただ自分の目線に座った渋沢の顔を困った様に見ていた。

そんな竜也にちょっと微笑んでから、すっと立って離れて行く。

「三上、落ち着いたら食事を取らせてやってくれ。」

「へーへー」

そう言い残してドアの向こうに消えて行った。


ゲームは続いているのだ。俺が生きている限り。


竜也はやっと思いだす。起きたばかりで寝ぼけていようが、そんなもの良い命取りになるだけだ。

無抵抗で人に生かされてた数時間前から急いで頭を切り替える。

生きるのか、死ぬのか。今ここで自分で決めなくてはならない。

視線をあげると、部屋には2人きり。

落ち着いて来ると思考が回りだす。


「・・・・・。」


三上には今だけで2度救われている。

確かに救おうと思っていたのかは定かじゃ無いが。

だが…。

銃口に堅くつめられた石を側に落ちていた木の枝でつつきながら。

思う。

何故?と

「んなもんじゃとれねーよ、」

はっと顔をあげると何時の間にか隣に来ていた三上が腰を降ろしていた。

タツヤから銃を取り上げると壊れたドリルの先で音を立てて中の小石を割っていた。

その三上の横顔を黙ってみる。

玉が入っていたら、間違い無く暴発していた。

たとえ今、竜也が三上や渋沢に向かって引き金を引かなくても。いずれ自分が死ぬ事になっていたかもしれない。

それとも本当に試されただけなのか…。

連中アレだけの事をしたんだ、そんな甘い事は考えて居ないだろう。

早かれ遅かれ竜也を処分する気でいるのだ。


「あんた立てんの?」

「え?」

突然かかる声。言われて気が付いた。

「腸に穴あいて生きてる奴初めて見っから。」

忘れ様としているのに、嫌な事を言う。

そう言えば、夕べ激痛の中で誰かがずっと額の汗を拭ってくれてたのを思い出す。

まさかな…。

夢うつつだったから。

シゲの名前とか…呼んだかもしれない…。

こんな時に、しかもこいつだと決まったわけでも無いのに。1人気まずくなって水に手をつけるとすかさず三上に取り上げられる。

無言で蓋をあけると側にあった食用のどじょうの洗面器に注ぎ、ひっくり返らないのを確認してから竜也に返す。

「・・・・どうも。」

「てめーやる気あんのかよ。」

と睨まれる。


固まる竜也。


「あんだよ、」気付いた三上がこちらを見る。


こいつは俺の…味方?なのか?

…だとしたても、どうして?


「お前、俺の事嫌ってんじゃないのかよ?」

その一言に、一瞬は?と言う顔をしてから、ふふんとデビルスマイルを覗かせた三上。

!?

「タダでって分けじゃ無いぜ。」

距離は保ったまま、押し殺した低い声で囁かれる。


「こっから抜けてーなら、俺に協力しろ。」

「!!--------・・。」


返事より先に肩にかかる三上の腕、あっと言う間に押し倒されて重なる唇。

驚いた顔で見返すと胸の上で自嘲気味に笑う三上の顔があった。

「・・・分かった。」

「裏ぎるんじゃねーぞ」

首筋に埋まる吐息と共に呟かれた。






TOP



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登場者

三上

水野

渋沢

上原

桜庭

谷口

死亡

上原

桜庭

あんまり書く意味無いけど一応書いてみたり・・・。




































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