僕と一緒2
幼稚園パラレル…1
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「センセ〜またあきら君がだんごむし潰してるよ!」


後ろから刺す様に響いた声に、

ああ…またか…と苦笑して振り向いた保母の腕を、ぐっと掴んで連れて行こうとするのは

もも組の、みずのたつや君…

滑台の下の草むらで、こちらに背を向けながらしゃがみ込んでいる「あきら君」の

一つ下の年少さん。


おりこうと言えば

おこりこうさん以外の

何者でもないけれど…

正直言えば

砂場でコロコロ転がってる同じ組のやんちゃっ子よりも

クレヨンが紙からはみだして床に大作を描き上げてしまう竹巳くんよりも


ちょっと問題児。

正義感の塊だよねー…

と笑って済ませる隣のクラスの先生に

「そうなんだけどねー」と返す苦笑いさえ、頬が引きつる今日この頃…


なんせ彼と来たら

クラスどころか上級生にさえ、指さしでダメ出しして回るのが日課になっている程…

ほんの少しの「いけない」も許せない

まるで…正義官と言う名の…チクリ魔

全く…

それは当然、誉めるべき場所でもあったけど…

もう少しソフトに…

「もう少しお友達と仲良くして欲しい…」

と言うのがクラス担任の当面の本音だった。



「センセ−見て!」

そうこうしているウチに付いてしまった滑台の下には

今最も竜也君が睨みを利か…御執心にしているばら組の問題児、みかみあきら君。

問題児と言う程では無いけど…

担任の先生は時々そう呼んで居ると言う話。


誰とも争わない変わりに

誰ともあんまり仲良くはしない

かと言って、周りのとの折り合いも上手く付けてるけど

可愛い盛りの年頃の、他の子達に交ざって遊ぶようなタイプでは無く

気付くとコツコツ1人遊びを始めている…ちょっと冷めてる年中さん。

何となく周りから浮いてしまう所は

たつや君と似てるような…似て無いような…


「だんご虫殺しちゃいけないんだよっ!」

そうこうしているウチに、容赦なく直球で響いた竜也の声に内心「あわわ…」

一瞬ぴくりと止まった背中が

ちらりと後ろを振り返るが、慌てる事もわめく事も無く

すっくり立上がるとこちらを振り向いた。

足の下には確かに…

確かに、墓らしいこんもり砂の山。


「あきらくん、」

取りあえずすくっとしゃがんで目線の位置に座ると

すぐ隣で、眉間に皺を寄せるたつやの息遣いが聞こえて来る様だった。

「誰のお墓作ってたの?…」と切り出したや、いなや…



「殺して無いよ、死んでた。」

「嘘付けよ!、おれちゃんと見てたもんっ!!」

「ついてない」

「嘘付き」

「お前が付いてる」

「ーーーっ!!!」


事も有ろうに!と思わず涙目になったたつやが二言目を口にする前に、背中を撫でて押さえながら…

「でもあきら君がこの前、うさぎさんのお耳を輪ゴムで束ねて行ったの、先生しってるんだ…」

「・・・・。」

だんご虫も、うさぎさんも

もうダメだよ…

と無表情で見返して来るその顔を覗き込めば…

「・・・・。」

暫く何かを考えてから、ポケットを探り、そしてその手をすっとセンセイと呼ばれたその人に差し出したのだった。

何だ?

と身を乗り出した竜也が見守る中

担任の手の平の中に落とされたのは

「ああーーー!!」

確かにもも組で飼っていた、カブト虫のちぎれた残骸だったのだ。

「それあげる。」

だが、

そう言って走り出した、彼の薄ら笑った含み笑いをその時たつやは見逃さず

「待てよ!」と一時遅れて止めようとした担任の手をかいくぐると、あとを駆けて行ったのだ…


「たつやくん、ケンカは…」

叫んだ声も虚しく、遠ざかって行く2つのスモッグ、

殆ど互角の足の速さだったが、伸ばした竜也の指が亮のスモッグに触れそうになった瞬間


「あきらっ…」

横から響いた声に2人して、立ちどまったのだった。

突然止まった背中に、どんっとぶつかりながらも、意識は既に花壇の前のその子へ…


「何だよ…」

「かつろうくん!」


ややうっとおしそうに歪められた亮の眉とは対照的に

一瞬にして顔を輝かせたのは竜也の方、

右手に竜也と同じクラスの誠二をくっつけながら

特に、亮の態度を気にするでも無く、こちらへと駆けて来ていた。


しぶさわかつろう君は

あきらと同じクラスの年中さんで

だれにでも優しくて、親切な

年少さんにはちょっとアイドル的な存在。

当初かなり頑な人見知りだった竜也が

始めて口をきいた上級生でもあった。


「せいじがサッカーやりたいんだ、一緒にやろう?」


「…いーけど?…」「僕も入れてー!?」

別に…ともったいぶるあきらを押し退けて

後ろに居た竜也が駆けて行こうとした瞬間

ぐっと背中のスモックを引っ張られ、なぜか亮の横へと引きもどされる。


「じゃあ、お前チームと俺チームな」

「ああ、分かった。」


え?

克朗君をすぐ目の前にしながら、ずるずると遠ざかって行く彼の景色。

一声さえ返される前に、人集めにと散って行く後ろ姿に

隣の亮を思わず見上げるが…


「じゃあ、お前自分のクラスの集めて来て、」

と、淡々と告げられただけだった。


かっちゃんのチームが良かったのに…


思わない様にしながら

内心ガンガンに思いながら

渋々校庭の隅でたむろうクラスメートへと駆けて行った。






ああ…せっかく、皆んが幼虫から育てたカブト虫だったのに…

男の子って、平気なのかしら?

と、1人泣き泣きさっき亮が作った墓の横に、もう一つの砂山を作りながら

ついさっきの事等もう忘れてしまった様に、亮の横を駆けて行く竜也を見ながら思う

新任の桜井みゆきだった。










がらりと開けた教室の扉は、殆どの人気もまばらに閑散として居た。

良く晴れた校庭から入って来た部屋の中は薄暗く

思わず目を細める

たしか…といつも「たっくん」が居る、アスレチックの辺りを探すが

そこに彼の姿は無く、

後ろを向いて水槽を覗き込む、見覚のない後ろ姿に、やや眉を顰めながら近付こうと…

した時、つんと、横から引っ張られた手に振り向くと

探して居たクラスメートの「かさいたくみ」が立って居た。


「誰?」

何よりも先に、前に居る彼を指差すが

無言で首を振ったままだった。

顔を見合わせたまま、そっと後ろへ近付くと

その制服は、どう見ても自分達の物とは違って居た…

水槽を泳ぐ魚をガラス越しに指で追いながら

何やら楽しそうに話しかけてる…

変な…奴。

「君だれ?」

怪訝な顔をする竜也の横で、そう声に出した竹巳の声に、

はじかれた様にこちらを振り向いたのは

黒髪の…男の子…

気の強そうな、瞳がじっと2人を見ていたが

すぐににこりと笑うと

「俺、佐藤成樹言うん、」と手を差し伸べた。

無言でその手をとった竹巳に…

黙って出し惜しんで居た竜也の手を強引に引っ張ると

「よろしゅうな、」

と、耳なれない言葉で喋るのだった。

その時、

「あ、成樹くん、ごめん教室一個隣なんだ!!」

と慌てて駆け込んで来たゆり組の先生に連れられながら…

「なあ、にいちゃん名前なんていうん?」

「君らこのクラス?また遊ぼうな!」

と、手を引く先生にもすかさず愛想を振りまきながら

握った竜也の手が距離に引かれて指の中からすり抜けて行くまで

放さなかった。


「ーーーー。」

変なやつだな…

見送りながら声に出していたら重なっていた2人の声。



「誰あいつ?」

「あ、あきら!」

何時の間にか来ていたのか、後ろから聞こえた声に嬉しそうに振り向いたのは、竹巳…

「転校生…」答えながら亮の片腕に周ると

「転入生だろ」と訂正した竜也をもう、気に止めてる様子も無かった。


「ふ〜ん…」


連れて行かれた先で

今度は担任を口説いているその陽気な声を聞きながら

どうでもいいやと言う顔をしながら

ぼっとしながらあのけったいな成樹君に耳を済ませて居た竜也の様子を

ふと伺うと、

その手を、握ったのだった。


「行こーぜ」

「…うん」

それを見て「あっ」となった竹巳を左に付けたまま

戸惑いながらも、握り返して来たその手を強く握り返すと

再び日溜まりの園庭へと駆け出して行った。






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じゃあだすな、と言われそうですが、実はこのシリーズを書いてると、頭がおかしくなりそうざんす…(泣)
じゃあ出すな(怒)



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